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88話 2人だけ
しおりを挟む「何だか…かえって気を遣わせたみたいだね」
「うん…」
「時間、大丈夫なの?」
「大丈夫」
「じゃ…飲み直す?」
「うんっ」
2人はリビングに行きワインを開けた。
「今日は楽しかったね」
「そうだね。それにしてもあの2人…初対面でよくあそこまで言い合えるよな」
「確かに。見てて面白かったけど」
「テルも元気そうだったな。本当にテルが来た時は驚いた。スミも知ってたの?」
「うん。シュンはみんなに愛されてるね」
「…スミも?」
「え?もっ…もちろんよ‼︎」
「俺たちの関係って…」
「え…」
「いや…何でもない」
しばらく2人は黙ったままワインを飲んだ。
「シュン、1人で寂しくない?」
「寂しくないと言えば嘘になるかなっ」
「そうよね。こんな広い家に1人なんて」
「家政婦でも雇おうかな」
「えっ…家政婦?」
「ホテル住まいの時は何もしなくてよかったけど…今は全部しないといけないからな」
「でもっ…家政婦って女性だよね。今は若い家政婦もいるし…」
「そうなの?」
もし若い家政婦だったら…
きっとシュンのこと好きになる…
女性とシュンが2人きりだなんて…
「スミ?どうした」
「家政婦雇うくらいなら、私が家政婦になるっ」
「えっ⁈」
「そうよっ。だって私、掃除とか嫌いじゃないし…料理もまぁそこそこ出来るし。私がすればいいのよっ」
「スミは仕事があるだろ」
「終わってから出来るもんっ。それに給料もいらないし、雇うより私がした方がいいでしょ?」
「毎日遅く帰ったらお母さんが心配するだろ」
「それはっ…」
「もういいよっ。家政婦雇わずに自分でするから」
「、、、、」
「次は何飲もっかな~」
するとスミは呆れた感じで笑った。
「何で笑ってるの?」
「私も結局…岸田さんと中田くんと変わらないなぁと思って」
「どう言う事?」
「家政婦とシュンが家に2人で居るとこ想像したら嫌になったの。嫉妬よ、嫉妬」
「本当…想像力が豊かだな」
「すみませんね」
「でも…嬉しい」
「あー…自分でこんなこと言うなんて恥ずかしい…」
スミはグラスに入ったワインを飲み干して再び注いだ。
「タクシー…まだ呼んでおかなくていい?」
「…うん」
「じゃ…俺シャワー浴びてくるね」
「うん」
シュンが浴室に行っている間、スミは仏壇の前に座った。
お父様…
私、シュンのことがたまらなく好きです…
お互い好きだからこのままの関係でも十分幸せです…
でも…欲を言えばやっぱり一緒になりたい…
私がシュンを支えたいんです…
お父様は認めてくれますか…
スミは秘めた思いを伝え、しばらくシュンの父の写真を見ていた。
シュンが浴室を出てリビングに行くと、スミはテーブルに顔を伏せ寝ていた。
「スミ?寝ちゃった?」
テーブルの上には空になったワインの瓶があった。
全部飲んだのか…
「スミ、起きてっ」
シュンはスミを起こした。
「んっ…私いつの間に…」
「酔ってる?」
「ちょっと…」
「もう1時だしタクシー呼ぶよ」
「ねぇ…シュン」
「何?」
「泊まっていい?」
「え?いいけど…帰らなくていいの?」
「…うん」
「じゃあ、寝よっか」
するとスミはシュンの背中に飛び乗った。
「おんぶして行けって?」
「お願いしまーす」
「はいはい…お嬢様。わかりましたよ」
シュンはスミをおぶって寝室へ行き、2人は少し離れてベッドに入った。
「明日、お母さんにバレないように家の近くまで送るよ」
「…うん」
「おやすみ」
スミはシュンに抱きついてきた。
「えっ」
「久しぶりだね。一緒に寝るの」
「…うん」
スミは自分からシュンにキスをした。
「スミ…」
「シュン」
「ダメだ…抑えられない…」
そして2人は朝まで愛し合った。
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