85 / 110
85話 気まずい2人
しおりを挟むしばらく待っているとスミの母親が玄関のドアを開けた。
「地曽田さんっ…えっ?スミ⁈」
「すみません。酔ってしまって」
「あらやだっ、スミ!起きなさいスミ‼︎」
「起きないと思います。ベッドまで運びますが…いいですか?」
「えっ…えぇ」
シュンは母親にスミの部屋を案内してもらい、ベッドに寝かせた。
「では…失礼します」
「あっ…お茶でも…飲んで行かない?」
「え」
「いいから座りなさい」
「はい…」
「聞いたわ…お父様のこと…」
「あっ…はい」
「大変だったわね…葬儀には行かなくてごめんなさい」
「そんな…いいですよ」
「今度、手を合わせに伺わせてもらうわ」
「ありがとうございます」
「あの人は…」
「え?」
「あっ…何でもないわ」
スミの母親は継母のことを聞こうとしたが聞くのをやめた。
「あの…それから…うちの会社の事、ありがとう。専務を社長にしてくれて」
「そうするのが1番ベストだと思って」
「そうね。本当はもっと早くお礼を言うべきだったけど…お父様のこと聞いたから、遅くなったけど本当にありがとう」
「いいえ。何かあればいつでも言って下さい。サポートしますので」
「えぇ。だけど私はもうあまり口出ししないわ。あなたの会社がついてるから安心だし。黒川社長に全て任せるわ」
「わかりました」
「ところで…今日はスミと一緒に居たのね」
「あっ…はい。すみません」
「スミは友達と遊びに行くって言って出かけて行ったから…」
「えっ…そ…そうですか」
どことなくお互いに気まずかった。
「じっ…じゃあ…そろそろ失礼します」
「えぇ…」
「お茶、ごちそうさまでした」
「スミを送ってくれてありがとう」
「はい。それでは」
シュンはスミの家を後にした。
シュンは途中でタクシーを降りて、行きつけのバーに寄った。
「地曽田さん…お1人ですか?」
「うん。マスター、ウイスキーちょうだい」
「はい」
シュンはウイスキーを一気に飲み干した。
「ボトル…置いておきますね」
「うん。それと…父の葬儀に来てくれてありがとう」
「いいえ」
「マスターはたまには実家に帰ってる?」
「あんまり帰ってないですね」
「俺が言うのも何だけど、たまには帰って親孝行した方がいいよ」
「…そうですね」
「じゃないと…俺みたいに後悔するから」
「…地曽田さん」
「もう俺には家族は居ない…1人になっちゃったよ…」
マスターは何て言葉をかけていいかわからず黙って聞いていた。
シュンはその後1時間ほど飲み続けて家に帰った。
家に帰り着くと仏壇の前で眠った。
5
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。


【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
わかりあえない、わかれたい・2
茜琉ぴーたん
恋愛
好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。
人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。
振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。
2・塩対応を責められて、放り投げてしまった女性の話。
(5話+後日談4話)
*シリーズ全話、独立した話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる