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81話 新社長
しおりを挟む1ヶ月後、急激に伸びて来た地曽田グループはSS社を抜いてトップになった。
裕二のおかげで信用がなくなったSS社は一気に落ちていった。
そしてこの日、地曽田グループは柳本グループを買収した。
シュンはその報告をする為にスミの母親を会社に呼んだ。
「突然お呼び立てしてすみません」
「どうしたの?」
「先ほどSS社から柳本グループを買収いたしました」
「えっ⁈ほっ…本当⁈」
「はい。ですので、うちから新たに買い取る形にして下さい」
シュンは契約書を渡した。
「記入をお願いします。請求はしませんので」
「、、、、」
「会長?」
「取り返してくれて本当にありがとう。感謝してるわ。でも…」
「どうしました?」
「やって行けるかしら…」
「何言ってるんですか」
「人材も一から集めないといけないし…私にはもうそんな気力が…」
「スミさんがいるじゃないですか」
「…スミじゃ不安なのよ」
「え?」
「だからと言って会社は失くしたくない。せっかく取り戻してくれたんだから」
「じ…じゃあどうするんですか」
「あなたに任せたい…」
「ぼっ…僕にですか⁈」
「ええ…」
「会長…もし遠慮してるのならやめて下さい。請求されない事が気の毒とかなら会社が軌道に乗ってからでも払って下されば」
「そういう事じゃないの。地曽田さんに任せたら安心だから」
「でも自分は今の会社があるし…」
「取締役はあなたが決めていいから」
「…少し考えさせて下さい」
「もちろんよ」
「もし断ったら…どうされるんですか?」
「その時は、こっちで誰か探すしかないわ」
「…わかりました」
会社を取り戻して喜んでくれると思っていたシュンは予想もしなかった事を言われ、母親が帰ったあと社長室にこもり悩んでいた。
シュンは仕事が終わるとスミを呼び出した。
「ごめんね。来てもらって」
「いいけど…どうしたの?」
「たまには外を歩かない?」
「うん…そうだね」
「スミは会社の取締役してた時どうだった?」
「えっ…どうだったって…」
「突然任されて大変だったと思うけど…またやりたい?」
「うーん…もういいかな…でももし会社を取り戻してくれたら私がやらなきゃいけないんだろうな…」
「やりたいんじゃなくて、やらなきゃいけないって事?」
「…うん」
「結局私は、トップとして任されるより事務仕事とかの方が合ってるみたい」
「経理とか出来るの?」
「多少はね…でもどうしてそんなこと聞くの?」
「実は…今日、柳本グループを買収したんだ」
「えっ?本当っ⁈地曽田グループが?」
「うん」
「シュン…ありがとう」
「スミの本音聞いて、決めたっ」
「何を?」
「社長にはならなくていい。スミは経理して」
「え…?どうしてシュンが決めるの?」
「今日、スミのお母さんと会って話したんだけど…俺に任せたいって言われたんだ」
「え…」
「引き受ける事にしたよ」
「いいの⁈シュンは地曽田グループを任されてるのに」
「取締役は別の人に任せる。柳本グループの社名はそのままにして兄弟会社にするから」
「別の人って…」
「1人候補がいる。引き受けてくれたら明日その人を会社に行かせるよ」
「シュン…そこまでしてくれて…本当に…」
「お礼は明日でいいよ。まだ社長を引き受けてくれるかどうかわからないし。でも多分OKだろうけどねっ」
翌日、スミは久しぶりに柳本グループに行った。
そのままの状態だ…
裕二…買収しておいて…
何もせずただ放置してたのね…
その時、社長室のドアが開いた。
入って来たのは黒川専務だった。
「専務っ」
「スミさん…今日からお世話になります」
「専務だったんですね。引き受けて下さりありがとうございます」
「こちらこそ。喜んでお引き受けさせてもらいました」
取締役を引き受けてくれたのが専務だったのでスミは安心した。
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