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80話 全て失った裕二
しおりを挟む1週間後、会社に居るシュンの携帯に着信が入った。
本田弁護士からだった。
「地曽田社長、今大丈夫ですか?」
「はい。どうしました?」
「実は…岡田裕二のことなんですが…」
「…はい」
シュンは悪い予感がした。
「今、岡田裕二は刑務所ではなく…」
「もしかして釈放されたんですかっ⁈」
「…精神病院に居ます」
「えっ⁈精神病院…?」
「はい。牢の中で暴れっぱなしで『俺はSS社の社長だ!』って繰り返しずっと叫んでたみたいです。全て失ったショックで精神やられたみたいです」
「そ…う…ですか…病院はどこですか?」
仕事が終わったシュンは裕二が居る病院に向かった。
受付で裕二の病室を教えてもらい行ってみると、狭い個室にベッドだけがありドアは開けられないように外から鍵がかかっていた。
シュンがドアの小窓から中を覗くと裕二は叫びながら暴れていた。
するとシュンの姿に気づきドアに近づいて来た。
小窓に顔を近づけた裕二はシュンに向かって首を傾げた。
「どちら様ですか」
「…え」
「どちら様ですか?」
こいつ…俺のことわかってないのか…?
「どなたかわかりませんが、ここから出してもらえませんか?僕はSS社の社長なんです。会社に行かないと…」
「お前とはもう本当に終わったようだな。元気でな」
シュンは怒りをぶつけたかったが一気に気持ちが冷め、その場から立ち去った。
「出してくれーっ‼︎出せって言ってるだろー‼︎」
裕二は再び暴れ出した。
この日22時過ぎにシュンがホテルに帰るとスミが来ていた。
「おかえりっ」
「来てたんだ⁈連絡してくれたらよかったのに」
「驚かせようと思って」
「お母さんには何て言って出て来たの?」
「バイトって言って来た。その方が今度から出て来やすくなるから」
「そんな嘘つかせて…ごめん」
「ううん。シュンに会いたいだけだから。それより食事はした?」
「うん。スミは?」
「さすがにこの時間だからね。済ませたよ」
「スミに話しておかないといけない事があるんだけど」
「えっ…何?」
「岡田裕二だけど…今、病院に入ってる」
「えっ⁈どうして?」
「精神病院…」
「…それって…」
「今日俺、病院に行って来たんだ。俺のことわかってなかった」
「えっ…」
「結構、重症だよ」
「じゃ…刑務所には戻らずにずっと病院って事?」
「治らない限り…そうだろうな」
「そっ…そっか…あの人が…」
「スミはどうする?行くなら連れて行くけど」
「…ううん。やめとく」
「…そうだね」
「そういえばシュンの会社、株が上がってきてるね」
「うん。今回の事件で離れた業者も戻って来てくれたし、今SS社が信用失くしてるからSS社の取引先がうちに来てる状態だよ」
「えっ、そうなの⁈」
「何か俺…同情されてる…?思ったより早く落ち着きそうだから、うちがSS社を抜いたら柳本グループを買い取るよ。取り戻すから待ってて」
「シュン…ありがとう」
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