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75話 絶対絶命
しおりを挟むそれから日は過ぎて行き裁判の2日前となった。
未だに証拠は掴めていない状況だった。
この日、専務と岸田秘書は本田弁護士と会っていた。
「一体どうしたらいいんだ」
「本田弁護士、何とかならないんですか⁈」
「相手の弁護士とも会って話したのですが地曽田社長がやってないと嘘をついてるって一点張りで…」
「クソーッ!嘘ついてるのは岡田の方なのに」
「保釈金払って釈放ってのも無理ですよね…」
「殺人未遂ですからね…無理です」
「裁判は明後日だ。ギリギリまで諦めずに頑張ろう」
「そうですね…」
「それと…地曽田社長から彼女さんに伝言を頼まれたんですが伝えてもらっていいですか?」
「はい。何ですか?」
「もし無罪にならなかったら待たないで欲しい。何年も刑務所に入ってる男のことなんか忘れて他にいい人見つけて幸せになって欲しい…と」
「え」
「、、、、」
「伝えておいて下さいね。では私もギリギリまで何とか頑張ります」
そう言うと本田弁護士は帰って行った。
「…社長らしいな」
「どうする?スミさんに伝えるか?」
「…伝えません」
「そうだな」
そしてギリギリまで頑張ったが結局証拠は見つけられず裁判当日となった。
早朝、岸田秘書の携帯が鳴った。
スミからだった。
「おはようございます」
「朝早くすみません」
「…いいえ」
岸田秘書は悔しさと疲労で暗い声をしていた。
「あの…私ちょっと用事が出来たので迎えに来なくて大丈夫です。自分で行きますので」
「…わかりました。用事って?」
「ちょっと…では後ほど」
「わかりました」
30分前に裁判所に着いた岸田秘書は専務の隣に座った。
少し離れた所には由希が座っていた。
「スミさんは?」
「用事があるから自分で来るそうです」
「そっか」
岸田秘書が被告人側の席を見ると本田弁護士が座っており、目が合って軽く頭を下げた。
「もう本田弁護士に任せるしかない」
「…もし最悪の結果になったら会社はどうなるんですかね…」
「今は…考えたくない…」
「…はい。祈るしかありませんね」
10分前になり裕二が入って来て原告側に座った。
「あいつ…涼しい顔しやがって」
裕二は岸田秘書に気付いてニヤリと笑った。
「あいつー!」
立ち上がる岸田秘書を専務が止めた。
「やめとけ!場所を考えろ」
岸田秘書は渋々座った。
「それにしてもスミさん遅いな」
「、、、、」
するとスミが思い詰めた顔をして入って来た。
「スミさんっ」
「スミさん?大丈夫ですか?」
「…はい」
スミは暗い表情で岸田秘書の隣に座った。
そして時間が近づき、手錠をかけられたシュンが警官に連れられて入って来た。
「…シュン」
スミは久しぶりに見るシュンの姿を目で追っていた。
一瞬目が合ったがシュンは表情を変えず、被告人席に座った。
「社長…」
シュンのやつれた姿を見て岸田秘書と専務は何とも言えない気持ちだった。
10時になり裁判が始まった。
原告側の言い分が終わり、被告人側の言い分となった。
「被告人は今回の罪を認めますか?」
「いいえ」
周りはざわついた。
「弁護人、冒頭陳述を」
「はい。そもそもナイフ自体、被告人の物ではありません。言い合いになって揉めた後、岡田氏は自ら自分の体をナイフで刺し被告人にナイフを持たせていたんです」
「意義あり‼︎」
「許可します」
「被告人は罪を逃れる為に嘘をついているんです。自分で自分を刺すなんて有り得ません」
「意義あり‼︎ではどうして事前にナイフがあったんですか⁈」
「岡田氏、答えて下さい」
「ナイフは…たまたま置いてあったんです。ダンボールを開ける時に使ったので。それに自分で刺すなんてっ。そんな勇気ありません」
「岡田氏の言う通り自分で刺すはずありません。岡田氏は大手企業の次期社長です。婚約者もいて結婚も控えてるのに、そんな事するはずありません」
「被告人、原告側はこう言っていますが」
「全て嘘です」
「嘘ついてるのはそっちです」
「意義あり‼︎被告人は今までのしがらみがあって岡田氏を憎んでいます。殺したいという動機は充分あります」
「意義あり‼︎被告人はいくら憎んでいても間違った事は絶対しません。それに岡田氏も被告人を憎んでます。岡田氏は被告人を嵌めたんです。自作自演です‼︎」
「被告人、どうなんですか」
「…確かに殺したいくらい憎いです」
「どうしてそんなに憎いんですか?」
「大切な人を苦しめるからです。このまま刑務所に入ってるなら殺せばよかったです…」
「なぜですか」
「愛する人を守れないから…」
スミは胸が痛かった。
シュン…
私は今まで充分シュンに守ってもらった…
次は私が守らなくちゃ…
シュンに辛い思いはさせたくない…
「被告人側はやってないという証拠はありますか?」
「それは…ありません」
周りから被告側に野次が飛び始め、裁判官は一旦10分間の休憩にした。
「何か…もう見てられません」
「俺もだ…」
岸田秘書がスミを見るとスミは大きく息を吸っていた。
「スミさん…」
するとスミは何か吹っ切れたように立ち上がり、本田弁護士の元へ行くと一緒に外へ出て行った。
「スミさん、どうしたんだ⁈本田弁護士と出て行ったぞ」
「、、、、」
岸田秘書はスミが来た時から様子がおかしい事に気づいていた。
しばらくしてスミと本田弁護士が戻って来た。
そして10分経ち、再開された。
検察官の言い分が終わった後、シュンの立場が弱くなりいよいよ判決の言い渡しとなった。
もうダメだ…
岸田秘書と専務は心の中で思った。
「原告人は自分を刺す理由がない。被告人は無罪を主張するが証拠がない。よって…」
「待って下さい‼︎」
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