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71話 触れたくても触れられないもどかしさ

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スミは気持ちが収まってないまま面会室に入りシュンを待っていた。


シュンが来て椅子に座った。
シュンは前回と違って穏やかな顔をしていた。


「スミ…元気にしてた?」


スミは黙ってシュンを見ていた。


スミ…どうしたんだ…
どうして何も言わない…


「顔…ずいぶん治ったね」

「、、、、」

「スミ?どうした?」

「聞いた…」

「何を?」

「シュン、本当はやってないんでしょっ」

「え…」

「あの人がシュンを嵌めたんだよね⁈」


岸田秘書…話したな…


「いくら私のことが心配だからって…本当のこと言って欲しかった」

「ごめん。スミ、あいつの所に行くなよ‼︎」

「今すぐ行って殺したいくらいだけど…これ以上シュンに心配かけたくないから行かない…」

「スミ…ありがとう」

「シュンは何もしてないのにこんなとこ入ってるなんて納得いかない‼︎早く出ないとっ」

「…うん」

「どうしてあいつじゃなくてシュンがここに居なくちゃいけないのよっ」

「でも…俺がやってないって証拠がないと無理だよ」

「わかってるけど。シュン…私何したらいい?」

「スミはホテルで大人しくしていて欲しい」

「そんな」

「証拠は岸田秘書たちが探してくれてるけど時間はかかると思う。それに…」

「それに…何?」

「今ここ出たら俺、本当にあいつを殺しそうだから…もうちょっとここに居た方がいい」

「シュン…そんなこと言わないで。シュンがあの日裕二に会いに行かなければ…」

「そうだけど我慢出来なかったんだ。スミの殴られた顔見てじっとしてられなかった」

「…私と関わったばかりに…ごめんね」


スミは涙目でシュンを見ていた。


「何言ってるんだよっ」


お互い触れたかったが2人の目の前のアクリル板が邪魔していた。


「もうそろそろ時間だ…」

「、、、、」


スミはずっと下を向いていた。
シュンが立ち上がってもスミは顔をあげようとしない。


「スミ?」


スミは顔を上げてシュンの顔を見た。


「えっ」


シュンはスミを笑わせようと変顔をした。


「なっ…なぁにっ…もうっ」


久しぶりにスミが笑った顔を見てシュンはホッとした。


「じゃ行くね」

「うん、また来る」

「スミ、念の為に確認するけど」

「大丈夫。あの人のとこへは行かないしホテルで大人しくしてます」

「それ聞いて安心したっ」

「うん。体に気をつけてね」

「スミも」


面会室を出てスミは岸田秘書が待つ車に乗った。


「お待たせしました」

「社長…元気でしたか?」

「はい…」

「あの…隠してて本当にすみませんでした」

「いえ。私も感情的になってすみませんでした」

「そんなっ。社長には話したんですか?」

「はい。やっぱりこの事知って私があの人のとこに行くのを心配してました。シュンが岸田さんに口止めしたのもよくわかりました」

「スミさん…」

「シュン、辛いはずなのに私を笑わせようとしてくれたんです」

「そうなんですかっ」

「これからは私がシュンを守りたいです」

「え…」

「早く証拠掴まないと。シュンをいつまでもあんな所に居させる訳にはいきません」

「そうですね」

「私も手伝わせて下さい」

「えっ…でも」

「お願いしますっ‼︎」

「スミさんを危険な目には合わせられないので出来る範囲でなら…」

「はいっ。ありがとうございます」


そしてこの日から証拠探しにスミも加わった。







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