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69話 計画通り

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そして月曜日、岸田秘書は先に店に入り個室で裕二が来るのを待っていた。
約束の20時を過ぎても来る気配はない。


岡田の奴…時間も守れないのか…
連絡もよこさないで…


40分後、岸田秘書がイライラしながら待っているとようやく裕二が来た。


「来てたんですね」

「はい。20時でしたよね?」

「あ~渋滞に巻き込まれて」

「…そうですか」

「腹減った~注文しましょう」

「そ…そうですね」


こいつ…
遅れて来たくせに謝りもしない…


「料理はもう頼んでますので…飲み物は何にします?」

「まずはビールで」

「わかりました」


料理が運ばれ2人は飲み始めた。


「傷は…大丈夫ですか?」

「あいつが刺したとこ?」

「…はい」

「まぁね。本当に殺されるかと思ったよ~」


岸田秘書は拳を力いっぱい握りしめて気持ちを抑えた。


「そういや俺、あいつに会いに行ったよ。囚人服が似合ってたな~」

「えっ…」

「今度会いに行った時はちゃんと謝ってもらわないとな」

「あの…ちょっとお手洗いに行って来ます」


苛立ちを抑え切れなくなった岸田秘書は洗面台で何度も顔を洗った。


我慢するんだ…社長の為に…
証拠を見つけるまでは堪えないと…


岸田秘書は気を取り直し個室に戻った。


「遅かったですね。もう酔ったとか?」

「まさか~僕は結構お酒強いんですよ。岡田社長も強そうですね」

「まぁ…強い方かな」

「さすがです。もちろん何でも飲めるんでしょ?」

「あっ…ああ…」

「じゃあ後で日本酒飲みましょう。和食には日本酒ですもんね」

「そ…そうだな。とりあえずウイスキー頼んで」

「はいっ」

「ところで君はあいつの面会には行ったの?」

「行ってないです。行きませんよ。人を刺すような社長なんか会いたくありません」

「そうかー。そうだよな」

「早くSS社で岡田社長の秘書をしたいです」

「嬉しいな~こんな人が秘書になってくれるなんて」

「僕はも嬉しいです。実はSS社で働くの夢だったんです。ありがとうございます」

「君は信用出来そうだな」


裕二はご機嫌だった。


その後も岸田秘書は裕二を褒めちぎり2時間が経った。


「まだウイスキー飲むんですか?次は日本酒頼みましょう」

「そ…そうだな…」


数分後、日本酒の2合瓶が5本とお猪口が2つ運ばれて来た。


「こんなに⁈」

「はい。日本酒はすぐなくなるので1度にまとめて頼まないと。さぁ~飲みましょう」


岸田秘書は日本酒ならいくら飲んでも平気だったのだ。


「そう言えば…柳本グループを買収したんですね。さすがです」

「まぁな。そのうち地曽田グループも買収してやるよ」

「え」

「どうせあいつはいつ出て来られるかわからないし、もう信用もない地曽田グループは落ちていくだけだろ。俺が買ってやる」

「そっ…そうですね…」

「しかし日本酒って飲みやすいな~」

「でしょ。普段はあんまり飲まないんですか?」

「飲む…よ」


嘘つけ!


岸田秘書は裕二のお猪口に次々と日本酒を注いだ。


「岡田社長の携帯…最新ですか?」

「そうだよ」

「へー、それ画像が綺麗なやつでしょ?」


岸田秘書は裕二の横に座り携帯を覗いた。


「めちゃ綺麗だよ」


裕二は携帯を開く為、暗証番号を押し始めた。
岸田秘書はその番号を見逃さなかった。


「ほらっ綺麗だろ」

「本当ですねー」


それから1時間後、頼んだ日本酒が全て空になり更に追加して飲んでいると裕二は酔い潰れて寝てしまった。


岸田秘書はその隙に裕二の携帯を開きデータを移した。


移し終わるとしばらく爆睡している裕二を見ながら残りのお酒を飲んでいた。


のうのうと生きやがって!
お前なんかに会社を奪われてたまるもんか!
絶対に証拠を掴んでやる!
お前の人生めちゃくちゃにしてやるよ!


そのまま岸田秘書は裕二を店に置いて出て行った。





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