69 / 110
69話 計画通り
しおりを挟むそして月曜日、岸田秘書は先に店に入り個室で裕二が来るのを待っていた。
約束の20時を過ぎても来る気配はない。
岡田の奴…時間も守れないのか…
連絡もよこさないで…
40分後、岸田秘書がイライラしながら待っているとようやく裕二が来た。
「来てたんですね」
「はい。20時でしたよね?」
「あ~渋滞に巻き込まれて」
「…そうですか」
「腹減った~注文しましょう」
「そ…そうですね」
こいつ…
遅れて来たくせに謝りもしない…
「料理はもう頼んでますので…飲み物は何にします?」
「まずはビールで」
「わかりました」
料理が運ばれ2人は飲み始めた。
「傷は…大丈夫ですか?」
「あいつが刺したとこ?」
「…はい」
「まぁね。本当に殺されるかと思ったよ~」
岸田秘書は拳を力いっぱい握りしめて気持ちを抑えた。
「そういや俺、あいつに会いに行ったよ。囚人服が似合ってたな~」
「えっ…」
「今度会いに行った時はちゃんと謝ってもらわないとな」
「あの…ちょっとお手洗いに行って来ます」
苛立ちを抑え切れなくなった岸田秘書は洗面台で何度も顔を洗った。
我慢するんだ…社長の為に…
証拠を見つけるまでは堪えないと…
岸田秘書は気を取り直し個室に戻った。
「遅かったですね。もう酔ったとか?」
「まさか~僕は結構お酒強いんですよ。岡田社長も強そうですね」
「まぁ…強い方かな」
「さすがです。もちろん何でも飲めるんでしょ?」
「あっ…ああ…」
「じゃあ後で日本酒飲みましょう。和食には日本酒ですもんね」
「そ…そうだな。とりあえずウイスキー頼んで」
「はいっ」
「ところで君はあいつの面会には行ったの?」
「行ってないです。行きませんよ。人を刺すような社長なんか会いたくありません」
「そうかー。そうだよな」
「早くSS社で岡田社長の秘書をしたいです」
「嬉しいな~こんな人が秘書になってくれるなんて」
「僕はも嬉しいです。実はSS社で働くの夢だったんです。ありがとうございます」
「君は信用出来そうだな」
裕二はご機嫌だった。
その後も岸田秘書は裕二を褒めちぎり2時間が経った。
「まだウイスキー飲むんですか?次は日本酒頼みましょう」
「そ…そうだな…」
数分後、日本酒の2合瓶が5本とお猪口が2つ運ばれて来た。
「こんなに⁈」
「はい。日本酒はすぐなくなるので1度にまとめて頼まないと。さぁ~飲みましょう」
岸田秘書は日本酒ならいくら飲んでも平気だったのだ。
「そう言えば…柳本グループを買収したんですね。さすがです」
「まぁな。そのうち地曽田グループも買収してやるよ」
「え」
「どうせあいつはいつ出て来られるかわからないし、もう信用もない地曽田グループは落ちていくだけだろ。俺が買ってやる」
「そっ…そうですね…」
「しかし日本酒って飲みやすいな~」
「でしょ。普段はあんまり飲まないんですか?」
「飲む…よ」
嘘つけ!
岸田秘書は裕二のお猪口に次々と日本酒を注いだ。
「岡田社長の携帯…最新ですか?」
「そうだよ」
「へー、それ画像が綺麗なやつでしょ?」
岸田秘書は裕二の横に座り携帯を覗いた。
「めちゃ綺麗だよ」
裕二は携帯を開く為、暗証番号を押し始めた。
岸田秘書はその番号を見逃さなかった。
「ほらっ綺麗だろ」
「本当ですねー」
それから1時間後、頼んだ日本酒が全て空になり更に追加して飲んでいると裕二は酔い潰れて寝てしまった。
岸田秘書はその隙に裕二の携帯を開きデータを移した。
移し終わるとしばらく爆睡している裕二を見ながら残りのお酒を飲んでいた。
のうのうと生きやがって!
お前なんかに会社を奪われてたまるもんか!
絶対に証拠を掴んでやる!
お前の人生めちゃくちゃにしてやるよ!
そのまま岸田秘書は裕二を店に置いて出て行った。
6
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
想い出は珈琲の薫りとともに
玻璃美月
恋愛
第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。
――珈琲が織りなす、家族の物語
バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。
ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。
亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。
旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる