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65話 守る為の嘘
しおりを挟む5日後、シュンと面会が出来ると連絡が来てスミは岸田秘書に連れて行ってもらった。
スミの順番が回って来るまで岸田秘書は隣にいてくれた。
「スミさん緊張してるでしょ」
「…はい」
「大丈夫ですよ」
「1日1回しか面接出来ないのに…私からでいいんですか?」
「もちろんです。社長もそれを望んでるはずです。僕は明日面会しますので」
「ありがとうございます」
しばらくして番号が呼ばれ、スミは警官に面会室へ連れて行かれた。
部屋に入り座って待っているとシュンが入って来た。
スミはシュンの顔を見た瞬間、涙が溢れてきた。
スミ…
シュンはケガした手を隠しながらゆっくりと歩いて来てイスに座った。
アクリル版越しに2人は対面したがシュンは下を向いていた。
「…シュン」
スミはいざシュンの顔を見ると何て言っていいかわからなかった。
「スミ…こんな事になってごめんね」
「ううん…」
「、、、、」
「本当に…シュンが自らやったの…?」
「…うん」
「どうして私なんかの為に…」
「…ごめん」
「あの人から、よっぽどのこと言われたのね…」
「俺が勝手にした事だから。あいつにはもう絶対に会うなよ」
「、、、、」
「スミ?」
「…わかった」
「今日は岸田秘書か専務が連れて来てくれたの?」
「岸田さんに連れて来てもらった」
「近いうち岸田秘書に来るように言ってもらえないかな?」
「明日来るって言ってた」
「そっか。わかった」
「シュン…私、待ってるからね」
「、、、、」
「ねっ」
「…うん」
「ちゃんと食べてよ。すごいやつれてるから」
「…うん」
そしてあっという間に面会時間が終わった。
「スミもちゃんと食事しろよ」
「…うん。また来る」
「…じゃ…もう行くよ」
「…うん」
シュンは行ってしまった。
スミは待っていた岸田秘書の車に乗った。
「このままホテルに送っていいですか?」
「…はい。ありがとうございます…」
「スミさん?大丈夫ですか?」
「、、、、」
「スミさん?」
「初めて見ました…シュンのあんな顔」
「え?」
「刑務所に入ってかなり辛いんだと思います。私のせいで…」
「スミさん、自分を責めるのはやめましょう。社長も岡田に対して限界だったと思います。それだけスミさんのことを社長は大切にしてるって事ですよ」
「…でも」
シュンには迷惑ばっかりかけてる…
それに助けてもらってばっかりで…
私はシュンに何も出来てない…
そんな自分が情けなく思った。
翌日、岸田秘書は面会に行った。
「社長っ」
「岸田秘書…すまない」
「驚きました…」
「ごめん」
「まさか社長が…」
「岸田秘書…」
「はい」
「俺はやってない」
「え…」
「俺は自らあいつを刺してないんだ」
「そっ…それ、どういう事ですか⁈」
「あいつが自分で刺して俺が刺したように仕向けた」
「そっ…そんなっ」
「俺は嵌められたんだよ」
「えっ、じゃあどうしてそれを…」
「言っても信じてもらえない」
「そんな…じゃあどうするんですか⁈やってもないのに社長がどうしてこんな所に‼︎」
「とりあえず弁護士を立ててくれ」
「あっ、そうですよね‼︎川村弁護士でいいですか?」
「いいや、本田弁護士に頼んでくれ」
「…わかりました。それにしても岡田の奴…許せないです‼︎」
「ああ…」
「この事…スミさんには話してないでしょ?」
「うん」
「どうして本当のこと言わないんですか?」
「スミが知ったら、あいつの所に行くはず。俺がここに入ってる間はスミを守る事が出来ないから…スミには言わないでくれ」
「社長…そこまで考えてたんですね…わかりました…」
「会社も…大変だよね?」
「正直…大変です。進めていたプロジェクトも中断してる状態です」
「ごめん。早くここを出て立て直すから。本当に迷惑かけて申し訳ないけどみんなのことよろしく頼む」
「わかりました」
「スミの会社の事だけど…」
「専務がちゃんと見てますよ。うちの会社と柳本グループを行ったり来たりで…専務が1番忙しいかも知れません」
「…申し訳ないな…」
「専務も近いうち社長に会いに来ると思います」
「…うん」
「もうそろそろ時間ですね」
「そうだね…」
「また来ます。社長が早く出られるように証拠見つけますので」
「あいつの指示に従ってスミを襲った男…そいつを探してくれないか?」
「そうですね!でもどうやって探せば…」
すると警官がシュンを呼んだ。
「時間だ。行くぞ」
「…はい」
「社長っ…また来ますね」
シュンとの面会は終わった。
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