60 / 110
60話 自分の手を汚さない男
しおりを挟むその後、たまに会うつもりだったシュンとスミは毎日会っていた。
1週間後。
この日、裕二は斉藤という若い男と会っていた。
「明日、ここに行って社長の面接を受けてくれ」
裕二が渡したメモには柳本グループの住所が書かれていた。
「わかりました」
「受付には誰も居ないはずだから、直接8階の社長室に行け」
「分かりました」
「約束してない面接だから突然行ったらあいつは驚くだろうが、今は人材が必要だから受け入れてくれるはず。これが明日使うお前の履歴書だ」
適当に記入した履歴書を斉藤に渡した。
「社長室に入ったら気付かれないように鍵をかけろ。ゆっくり回せば音もしないしバレないから」
「はい」
「あいつが履歴書を見てる最中に襲え。そして顔を殴るんだ。アザが出来るくらいに。」
「わかりました」
「で、言ってやれ。岡田裕二の命令でやったと。いいな?」
「わかりました」
「終わったらこれ持って姿をくらませろ」
裕二は斉藤に300万渡した。
「はい。ありがとうございます」
地曽田は俺の命令だと知ったら怒り狂って俺の元に駆けつけて来るはず…
その日でお前は終わりだ…
「あと、近いうちに俺からお前の携帯に着信があったら警察に連絡して、俺の部屋にすぐに行くように言ってくれ」
「えっ…警察にですか?何と言えば?」
「事件があったとでも言え。とにかく急いで行くように言うんだぞ」
「…わかりました」
ちょうど明日はスミの誕生日だ…
俺が最高のプレゼントをくれてやるよ…
19時過ぎ、スミが会社を出るとシュンから電話がかかってきた。
「もしもし…シュン」
「もう終わった?」
「うん。シュンは?」
「まだ遅くなる」
「そっか。じゃあ今日は真っ直ぐ帰ろうかな」
「そうして。その代わり明日早く切り上げるから明日会おう」
「明日ね」
「スミ、明日誕生日でしょ」
「…あっ、そうだった」
「19時半にレストラン予約するからお祝いさせて」
「ありがとう。レストランってどこの?」
「うちのホテルのレストランだよ」
「わかった」
「スミさえよければ…明日はずっと一緒に居たい」
「…うん。わかった」
「じゃ、明日」
「うん。明日ね」
家に帰ったスミは着替えをバックに詰め、母親が居るリビングに行った。
「お母さん、明日友達の家に泊まるから」
「明日?スミの誕生日でしょ?」
「うん。友達がお祝いしてくれるんだって」
「そうなの…じゃあ、お母さんは明後日祝ってあげるわね」
「本当?ありがとう」
「ところで友達って?」
「あっ…最近仲良くなった女の子だよ」
「そうなの。わかったわ。楽しんで来なさい」
スミは明日が待ち遠しかった。
シュンとずっと一緒に居られる…
今夜はパックしなきゃ…
翌日、18時に仕事を切り上げたシュンは花屋に向かった。
たくさんの花が並ぶ中、ある花が目についた。
この花…スミにぴったりだ…
「彼女さんに…ですか?」
「はい。この花は?」
「これはマリーゴールドです」
「マリーゴールド…この花の花言葉って何ですか?」
「マリーゴールドは 変わらぬ愛 ですよ」
「変わらぬ愛…」
「はい」
「これ下さい」
「はい。何本にしますか?」
「全部下さい」
「えっ…あっ…はい。わかりました」
その頃、スミは社長室に居た。
18時半か…
19時に出れば十分間に合うな…
早く会いたい…
すると社長室のドアを誰かがノックした。
え…今頃…誰だろ…?
「どうぞ」
「失礼します」
斉藤は裕二に言われた通り社長室に入ると同時にそっと鍵を閉めた。
「どちら様ですか?」
「あっ、突然すみません。ここで働かせて頂きたくて面接に来ました」
「えっ?どうしてですか?」
「以前こちらで働いていた社員の知り合いです。今、人が足りないって聞きました」
「うちにいた社員から?」
「はい。僕…営業でも何でも自信ありますので面接だけでもお願いします」
「でも…」
「生活に困ってるんです。働かなくちゃいけないし。お願いします!」
「…わかりました。お座り下さい」
「はい」
斉藤はスミに履歴書を渡した。
スミが履歴書に目を通していると斉藤は突然立ち上がった。
「どうされました?」
「ここからの外の眺め…いいですね」
斉藤はそう言うとスミの背後に回った。
スミが振り返ると斉藤はスミを床に押し倒し顔を殴り付けた。
「何するのっ⁈」
「うるせー!黙ってろ!」
スミは必死で抵抗するが斉藤の力には敵わず、ブラウスを引きちぎられ何度も顔を殴られた。
「やめてっ…」
「岡田裕二の指示だから少し我慢しろ」
えっ…裕二の指示…?
裕二の命令通りに動いた斉藤は出て行った。
殴られて顔が腫れあがりボロボロになったスミは、床に倒れたまま気力をなくして泣いていた。
5
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。


思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
わかりあえない、わかれたい・2
茜琉ぴーたん
恋愛
好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。
人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。
振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。
2・塩対応を責められて、放り投げてしまった女性の話。
(5話+後日談4話)
*シリーズ全話、独立した話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる