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59話 密かな約束

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部屋に入ると2人はソファーに腰を下ろした。


「はい、お水飲んで」

「ありがとう」

「シュンがこんなに酔った姿…初めて見たよ」

「…ごめん」

「きっと寝不足と疲れのせいだよ」


すると突然シュンがスミの膝の上に横になった。


「スミの膝枕…久しぶりだな」


シュン…


スミは今日、シュンの何気ない行動の1つ1つにドキドキさせられていた。


「気持ちいいからこのまま寝ちゃおうかな」

「え…そしたら私帰れないじゃない」

「だからだよ」

「えっ」


シュンはスミを自分に引き寄せてキスをしようとしたがスミは顔を逸らした。


「イヤ?」

「シュン…酔ってるからでしょ」


するとシュンは起き上がった。


「そうだよ。じゃないとこんな事したくても出来ないから」

「そんな…」

「ダメだってわかってるけど…今でもスミのことが好きでたまらない」

「私だって…私だってそうよ。だけど…」


シュンはスミが言いかけた言葉を遮るようにキスをした。


えっ…


久しぶりのキスだった。


スミは一気に思いが込み上げ涙が出てきた。
スミの涙に気づいたシュンは慌てて顔を離した。


「ごめん…」

「シュン…どうしたらいいの…」

「えっ」


スミは自分からシュンにキスをした。


シュン…私やっぱり…


「こんなの辛すぎるよ」

「スミ…」

「私たち結婚しなかったらシュンの継母とも合わなくていいし…せめて付き合う事だけでも許してもらいたい」

「えっ?」

「私、お母さんを説得する」

「スミ…でもそれは…」

「お互いこんなに好きなのに気持ちを抑えるのなんて無理だよ」

「スミ…まずはスミの会社が落ち着いてからじゃないと。必ず会社を立て直してみせるから。そしたら…2人でお母さんに話そう」

「…そうだね。まずは会社だよね…」

「俺に考えがあるから、会社の事はもうしばらく耐えてて」

「考えって…?」

「今はまだ言えないけど、あいつみたいな汚いやり方だけはしないからね」

「それはわかってるけど…」

「会社のみんなもその為に今、必死で頑張ってるから」

「えっ…」

「スミの会社も安定させるから…ちょっと待っててね」

「シュン…シュンには本当に頭が上がらないよ」

「スミのおかげで仕事も頑張れる。俺はもう気持ちも押し殺さないよ」

「私も。ねぇ…シュン?」

「何?」

「それまでたまにはこうして会っていいよね?私たち…」

「うん。そうしよう」

「何か安心した。私そろそろ帰るね」

「入り口にタクシーいるから下まで一緒に行こう」


そしてスミは帰って行った。


お母さん…
裏切ってごめんなさい…
私にはシュンしか居ないの…




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