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54話 倒産危機

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1週間後、スミは色んな人からお金を借り4500万は何とかなった。
だが会社自体は倒産寸前になっていた。
痺れを切らせたスミの母親は会社に出向いた。


「お母…会長…」

「どうなってるの?黙って見てたけど何?この株の下がり方は‼︎」

「…すみません」

「今から役員全員集めなさい。緊急会議するわよ」

「はい…」

「あなた…何その顔。もっとしっかりしなさい‼︎」


スミはこの1週間お金を集める事と、業者を駆け回る事で精神をやられていた。


その頃、地曽田グループでは株を見ていた秘書がタブレットを持って慌てて社長室に入って来た。


「社長っ、こ…これ…見て下さい」

「何?」

「柳本グループの株が…」

「えっ…そ…そんな…」

「このままじゃスミさんの会社倒産しますよ」

「ちょっと出て来るっ」


あの時会社のこと聞いたらスミは順調だと言ってた…
本当は違ったのか…?
こんな急に株が下落するなんて…
あいつに違いない…
安心した俺がバカだった…


シュンは真っ先にSS社に行った。


社長室に着くとシュンはノックもせずにドアを開けた。


地曽田…
早速来やがったな…


「どうしたんですか?怖い顔して。せめてアポくらい取って来て下さいよー」

「お前!柳本グループに何をした?」

「え?柳本グループに?別に何もしてませんけど」

「嘘つけ‼︎スミの会社を潰す気だろ‼︎」

「ちょっと待って下さいよー。何言ってるんですか。潰すだなんて」

「前にもあっただろ⁈俺の会社潰そうとして!今度は何したんだ⁈」

「そんな時もありましたね~」

「答えろよっ‼︎」

「私は色んな業者に挨拶に回っただけですよ。そしたら勝手に向こうがうちと契約したいって」

「お前…また取引先を奪ったのか…」

「奪ったりなんかしませんよ~たまたまですよ~」

「そんな訳ないだろっ!」

「本当ですって~柳本グループよりも大手のうちと取引きした方が断然よかったんでしょう」

「お前っ!」

「それより、あなたたち2人は嘘つきですね。別れたなんて嘘ついて」

「は?別れてるし」

「じゃあ何でスミはお前の為に金渡してくれたんだろうな~」

「金?どういう事だ⁈」

「知らないならいい。俺は別に強制的には言ってないし」

「もしかして…お金を要求したのか⁈」

「要求はしてない。お前に何もするなってあいつが…」

「…俺の為にスミが…お前に金を渡したって事か⁈」

「まぁ…そういう事だ」

「…スミは…お前にいくら渡した⁈」

「 5    だけど」

「500…か…何やってんだスミは」

「5000万ですけど~」

「え…」

「そろそろ会議だから」


そう言って裕二は出て行った。


金額を知ったシュンはその場に呆然と突っ立っていた。


しばらくしてSS社を出たシュンは、銀行に寄り会社に戻った。


19時前になりシュンはスミの会社の近くで待機していた。
スミが会社を出て来るのを待っていたがなかなか出て来ない。
30分後シュンは会社の中へ入って行った。


社長室のドアをノックするが反応はなく、ドアを開けるとスミが机に伏せていた。


「スミ!」

「えっ」

「何してるんだよ」

「シ…シュン…どうして」

「外で待ってたけど出て来ないから」

「もう…来ないんじゃなかったの…?」

「そうだけど話があって」

「…ごめん…誰とも話したくない」

「追い詰められてるから?」

「え…」

「会社…上手くいってないんでしょ」

「…それで心配になって来たのね。そうよ全然ダメ。倒産寸前よ。全て責任者である私のせい。やっぱり私に社長なんて無理だった…」

「諦めるのかよ」

「もう自信がない…」

「お父さんが遺した会社だろ」

「、、、、」


するとシュンはスミの机の上に紙袋を置いた。


「何…?」

「5000万入ってる」

「えっ」

「何で俺の為に、あいつにそんな大金渡すんだよ‼︎さすがに呆れた」

「ど…どうして…あの人に会ったの⁈」

「ああ。あいつは柳本グループを潰そうとしてる。全部あいつの仕業だよ」

「えっ…そんな…」

「だからスミのせいじゃない。だから諦めるな」

「あの人は…一体何をしたの⁈」

「俺の会社にしたような事だよ」

「酷い…何て人なの⁈」

「スミが強くならないと相手の思うツボだよ」

「、、、、」

「スミ、帰らないの?俺ちょっと行く所があるからもう行くよ」

「えっ…あっ…これ」


スミはお金が入った紙袋をシュンに返そうとした。


「これを渡したくて来たんだけど」

「な…何言ってるの?こんな大金」

「いいから。もうこういう事するなよ」

「…シュン」


スミの目から涙が溢れた。


「スミ?」

「私…私…手を付けちゃいけないお金に手を出してしまったの…」

「え…まさか…」

「…会社のお金…」

「スミ、何やってるんだ⁈」

「だって。早くあの人と縁切りたかったしシュンにも迷惑かけたくなかった」

「スミ…」

「会社のお金に手を出した事で怖くなって…早くお金を戻す為に色んな人にお金借りた…」

「借りたって…それで会社には全額戻せたの?」

「…うん。私…バカだよね…」


スミ…そこまでして…


「何人から借りたの?」

「…14人」

「みんな都内?」

「…うん」


するとシュンは紙袋を持ってスミの手を掴んだ。


「今から返しに行こう」

「えっ…シュンは行くとこがあるんじゃ…」

「それよりこっちの方が先だ」


シュンはスミを車に乗せ走り回った。

14件回り、全て返し終えたのが22時過ぎていた。


「お疲れ様。疲れたでしょ」


スミはシュンに申し訳ない気持ちでずっと下を向いていた。


「スミ…大丈夫?」

「…ありがとう。本当に…感謝してる。必ず返すから」

「いいよ」

「ダメよ。あんな大金」

「返したいなら分割でもいいし、いつでもいいからね」

「…ごめんなさい」

「家まで送るね」

「…ありがとう」

「今、社員は何人くらいいるの?」

「今は…8人」

「8人?かなり減ったんじゃない?」

「…うん。このままうちにいても不安なんだと思うから」

「会社に頼れる人は?」

「…今…正直言うといない…」

「そっか…お母さんは?会社には来てるの?」

「痺れを切らせたみたいで今日来た」

「お母さんも気が気じゃないんだろうね…」

「シュン…私…あの人が憎くてたまらない」

「…うん」

「どこまで苦しめたら気が済むの…」

「スミ…あいつには会うなよ。会っても何も変わらない。今はとにかく耐えるんだ」

「わかってる…でもこんな状態でじっとしてられないし…だからって何をしたらいいのか正直わからない」


そうだよな…
スミは社長に就任してそこまで経ってないし…
それなのに今まで誰にも頼らず…偉いよ…


「スミ、とりあえず今は動かないで…今やるべき事をやるんだ」

「えっ…」

「今、8人の社員がいるんでしょ。じゃあその8人を大事にして決して不安にさせない事。何故だかわかるよね?」

「…うん」

「トップが前向きでいつも元気でいないと…社員たちは見てるからね」

「わかった。シュン…ありがとう」


スミの家の前に着いた。


「シュン、本当にありがとう」

「…うん」

「じゃ…行くね」

「あっ…スミ!スミの会社の取引先のリスト、悪いけど明日うちの会社にFAXしてくれないかな」

「えっ…でも今は取引先はないよ」

「過去の取引先でもいいから」

「…わかった」

「これ、一応渡しとく。FAX番号も書いてあるから」

「あっ…うん」


シュンはスミに名刺を渡し帰って行った。


名刺にはシュンの携帯番号が手書きで書かれていた。








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