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53話 安心と罪悪感
しおりを挟む「シュン、毎日私の帰り…後を付けてたでしょ」
「バレてた?」
「もうやめて」
「うん。明日からはもうやめる」
「、、、、」
「スミ…あいつはもう何もして来ないよ。出来る立場じゃない」
「えっ…どうして?会ったの?」
「うん。由希にもね」
「由希さんにも?」
「うん。あの2人は婚約してるんだって」
「えっ…嘘…」
「びっくりだよな。でもこれで納得した。SS社は大手もいいとこだからさすがに間違った事は出来ないから」
「…そ…そうね」
「あれからあいつ、スミの前に現れてないよね?」
「うっ…うん」
「思い出したら腹立たしいけど、もうあいつのことは忘れよう」
「…うん」
そんな事も知らずに会社のお金にまで手を出して裕二に大金を振り込んでしまったスミは自分が情けなくなり涙が出てきた。
「スミ?」
「えっ」
「泣いてるの?」
「あっ…目にゴミが入ったみたい…もう大丈夫」
「そっか…ところでスミ…痩せたでしょ?ちゃんと食べてる?」
「…うん」
「本当に?ちゃんと食べてよく寝てストレス溜めないようにしないと。会社は順調なの?」
「う…ん。順調だよ…」
本当は全然、順調じゃなかった。
「それならよかった。俺はもう居る必要ないし今月中には福岡に行くよ」
「…そっか」
「お互い頑張ろうな」
「…うん」
スミを家まで送り届けるとシュンは帰って行った。
家に入るとスミはリビングに居る母親の所へ行った。
「おかえり」
「お母さん…ただいま」
「雨降ってるけど車で帰って来たの?」
「あっ…ううん。タクシー」
「そう…」
「お母さん、もうボディガードみたいな人は必要ないから探さなくていいよ」
「えっ、どうして?」
「とにかく…もう大丈夫だから」
「そうなの?わかったわ。それより今月は決算月ってわかってるわよね?」
「えっ…あっ…うん」
「何か最近パッとしないけど大丈夫よね?取引先も減ってるみたいじゃない」
「うん…大丈夫だから…」
「わかった。食事の準備するわね」
「ごめん…私いらない」
「えっ…どうして?」
「何か食欲なくて。部屋に行くね」
そう言うとスミは自分の部屋に入って行った。
今月中にお金戻さなきゃ…
4500万なんて…どうすればいいの…
悩んだ末、スミは手当たり次第知り合いに電話をした。
スミの信用もあって2000万は準備出来た。
翌日、スミが会社に行くと営業部長の本田が社長室に入って来た。
「社長っ、大変ですっ」
「どうしたの?」
「株が急激に下落しています。これ見て下さい」
「えっ?こんなに⁈」
「それに、取引先との契約も全てなくなりました」
「全て…?」
「これから営業部で手分けして取引先に行って確認して来ます」
営業部長が出て行くとスミは自分を責めた。
私がしっかり会社をまとめきれてなかったからいけないんだ…
会社のお金に手を出した事の罪悪感と社長としての未熟さを痛感し、スミは自分を追い込んだ。
裕二の仕業だとは知らずに…
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