上 下
53 / 110

53話 安心と罪悪感

しおりを挟む

「シュン、毎日私の帰り…後を付けてたでしょ」

「バレてた?」

「もうやめて」

「うん。明日からはもうやめる」

「、、、、」

「スミ…あいつはもう何もして来ないよ。出来る立場じゃない」

「えっ…どうして?会ったの?」

「うん。由希にもね」

「由希さんにも?」

「うん。あの2人は婚約してるんだって」 

「えっ…嘘…」

「びっくりだよな。でもこれで納得した。SS社は大手もいいとこだからさすがに間違った事は出来ないから」

「…そ…そうね」

「あれからあいつ、スミの前に現れてないよね?」

「うっ…うん」

「思い出したら腹立たしいけど、もうあいつのことは忘れよう」

「…うん」


そんな事も知らずに会社のお金にまで手を出して裕二に大金を振り込んでしまったスミは自分が情けなくなり涙が出てきた。


「スミ?」

「えっ」

「泣いてるの?」

「あっ…目にゴミが入ったみたい…もう大丈夫」

「そっか…ところでスミ…痩せたでしょ?ちゃんと食べてる?」

「…うん」

「本当に?ちゃんと食べてよく寝てストレス溜めないようにしないと。会社は順調なの?」

「う…ん。順調だよ…」


本当は全然、順調じゃなかった。


「それならよかった。俺はもう居る必要ないし今月中には福岡に行くよ」

「…そっか」

「お互い頑張ろうな」

「…うん」


スミを家まで送り届けるとシュンは帰って行った。


家に入るとスミはリビングに居る母親の所へ行った。


「おかえり」

「お母さん…ただいま」

「雨降ってるけど車で帰って来たの?」

「あっ…ううん。タクシー」

「そう…」

「お母さん、もうボディガードみたいな人は必要ないから探さなくていいよ」

「えっ、どうして?」

「とにかく…もう大丈夫だから」

「そうなの?わかったわ。それより今月は決算月ってわかってるわよね?」

「えっ…あっ…うん」

「何か最近パッとしないけど大丈夫よね?取引先も減ってるみたいじゃない」

「うん…大丈夫だから…」

「わかった。食事の準備するわね」

「ごめん…私いらない」

「えっ…どうして?」

「何か食欲なくて。部屋に行くね」


そう言うとスミは自分の部屋に入って行った。


今月中にお金戻さなきゃ…
4500万なんて…どうすればいいの…


悩んだ末、スミは手当たり次第知り合いに電話をした。
スミの信用もあって2000万は準備出来た。


翌日、スミが会社に行くと営業部長の本田が社長室に入って来た。


「社長っ、大変ですっ」

「どうしたの?」

「株が急激に下落しています。これ見て下さい」

「えっ?こんなに⁈」

「それに、取引先との契約も全てなくなりました」

「全て…?」

「これから営業部で手分けして取引先に行って確認して来ます」


営業部長が出て行くとスミは自分を責めた。


私がしっかり会社をまとめきれてなかったからいけないんだ…


会社のお金に手を出した事の罪悪感と社長としての未熟さを痛感し、スミは自分を追い込んだ。


裕二の仕業だとは知らずに…





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

あなたへの想いを終わりにします

四折 柊
恋愛
 シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

処理中です...