上 下
47 / 110

47話 葛藤した結果

しおりを挟む

「社長?どうしたんですかっ?顔色が悪いですよっ」 

「あっ…ごめん。ちょっと外の空気吸って来る…」

「あ…兄貴っ」


シュンは携帯を手にして外に出ると、すぐに専務に電話をかけた。


「お疲れ様です」

「今…大丈夫?」

「はい。どうされました?」

「ちょっと調べて欲しい事があるんだけど」

「はい。何ですか?」

「あいつが…釈放されてるか調べて欲しい」

「あいつ…とは柳本のことですか?」

「うん。もし釈放されてるなら、その理由も調べてくれないか?」

「えっ、ちょっと待って下さい。15年の刑ですよ。釈放されてるはずないですよ。社長…どうしたんですか?」

「スミの会社にあいつが来たらしいんだ」

「えっ…ほ…本当ですかっ⁈」

「うん。テル…あ、中田秘書が会ってる」

「そんなっ、信じられない。それで…柳本社長は大丈夫なんですか?」

「わからない。だから急いで調べてくれ」

「わっ…わかりました」


シュンが部屋に戻ると、疲れていたテルはお酒も入り眠っていた。


まさかあいつがスミの会社に来たなんて…
脱獄したなら堂々としてないはず…
本当に釈放されたとしたらどうしてだ…
だとすると…またスミに何かしでかすに違いない…
一体どうしたらいいんだ…


この日、シュンはスミのことが心配で一睡も出来なかった。


翌朝、テルが目を覚ますとシュンはテーブルに顔を伏せていた。


「兄貴、おはようございますっ」

「おはよ」

「すみません。昨日はいつの間にか寝ちゃってました」

「俺の方こそごめん。外に出て行って」

「いいえ。兄貴…何かあったんですか?」

「ううん。顔洗って行こうか」

「はいっ」


2人は事務所へ行き、スタッフにテルを紹介した。


紹介が終わるとシュンはスタッフにテルを任せ、スーツに着替えると児童施設の講習会に出かけた。


15時過ぎに講習が終わり施設へ戻る途中、専務から着信があり車を停めた。


「もしもし、社長」

「うん。何かわかった?」

「はい。柳本は釈放されてました。保釈金を払って出たようです」

「えっ…保釈金って…そんな簡単に釈放されたのか⁈」

「それが…驚かないで下さい。保釈金を払ったのは社長の元奥様です」

「え⁈由希が…⁈どっ…どうして」

「どうして払ったのかまではわかりませんが今、柳本は元奥様の会社で副社長をしてるみたいです」

「あいつが⁈」

「保釈金で釈放されたのも元奥様の力だと思います」

「、、、、」


シュンは裕二が由希の会社で副社長をしている事などどうでもよかった。
それよりスミに危害を与えないかが1番の心配だった。


「社長、柳本社長のことが心配なんですね?私が柳本社長のボディガードでも出来たらいいんですが、地曽田グループを守らないと…」

「うん。専務、調べてくれてありがとう」

「社長…心配なのはわかりますが、社長と柳本社長はもう別れてるんですからね…変な気起こさないで下さい」

「わかってる…」


電話を切った後、シュンは車を停めたまましばらく考え込んだ。


スミとは別れているし、もう関係ないのはわかってる…
わかってるけど…



施設に戻ったシュンはテルの部屋に行った。


「兄貴っ」

「ちょっと入っていい?」

「どうぞどうぞ。何もないですけど」

「お邪魔します」


シュンは部屋の中を見渡した。


「ベッドはあるから、新しい布団とテレビを頼んでおくよ。他に何か必要な物ある?」

「えっ、いいですよ。今度の休みの時にでも買いに行って来ますので」

「いいよ。ここから買いに行くのも大変だし」

「じゃあ…兄貴が連れて行って下さい」

「ごめん。連れて行けないから」

「え?どうしてですか?」

「テル、俺…明日東京に戻るよ」

「明日?急にどうしてですか⁈」

「ちょっとね…しばらくは戻れそうにない…」

「そんな…」

「せっかくテルが来てくれたのに…ごめん」

「、、、、」

「大丈夫…だよね?テル…」

「、、、、」

「テル?」

「ここのスタッフの人たちもみんないい人だし…兄貴がいなくても…大丈夫です」

「テル…」

「頑張りますから…安心して東京に帰って下さい」

「…ありがとう。連絡するよ」


シュンはテルの部屋を出ると、東京から連れて来た女の子ミリの部屋に行った。


「お兄ちゃん」

「ちょっといいかな?」

「どうしたの?」

「うん、ちょっとミリにお話しがあって」

「なぁに?」

「ミリはここに来てよかった?楽しい?」

「うんっ、楽しい。ご飯も食べられるしお風呂にも入れるし」

「そっか」

「それにお友達もたくさんできたし。今日ね、かくれんぼしたんだよー!ミリはすぐに見つかっちゃった」


シュンはミリを抱きしめた。


「お兄ちゃん?」

「ミリ…お兄ちゃんは明日からいないんだ」

「どうして?」

「東京に帰るから」

「え…」

「でも安心した。ミリはお友達もたくさん出来たみたいだし」

「イヤだっ!お兄ちゃんも一緒にいて」

「どうしても行かなきゃいけないんだ」

「、、、、」

「ごめんね。ミリは強い子でしょ」


お兄ちゃんは優しいから…
ミリの時みたいにまた誰か助けるのかな…


シュンの人間性をよく知っているミリはそう思った。


「うん…わかった」

「ミリ…ありがとうね。ミリはいい子だね」


シュンは自分の部屋に戻ると地曽田グループが経営しているホテルの部屋を取り、荷物をまとめた。


そして翌朝、シュンは朝一の便で東京に戻った。


戻るつもりはなかったがシュンは悩んだ末に結局はスミを守る為、東京に戻ったのだ。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

処理中です...