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47話 葛藤した結果
しおりを挟む「社長?どうしたんですかっ?顔色が悪いですよっ」
「あっ…ごめん。ちょっと外の空気吸って来る…」
「あ…兄貴っ」
シュンは携帯を手にして外に出ると、すぐに専務に電話をかけた。
「お疲れ様です」
「今…大丈夫?」
「はい。どうされました?」
「ちょっと調べて欲しい事があるんだけど」
「はい。何ですか?」
「あいつが…釈放されてるか調べて欲しい」
「あいつ…とは柳本のことですか?」
「うん。もし釈放されてるなら、その理由も調べてくれないか?」
「えっ、ちょっと待って下さい。15年の刑ですよ。釈放されてるはずないですよ。社長…どうしたんですか?」
「スミの会社にあいつが来たらしいんだ」
「えっ…ほ…本当ですかっ⁈」
「うん。テル…あ、中田秘書が会ってる」
「そんなっ、信じられない。それで…柳本社長は大丈夫なんですか?」
「わからない。だから急いで調べてくれ」
「わっ…わかりました」
シュンが部屋に戻ると、疲れていたテルはお酒も入り眠っていた。
まさかあいつがスミの会社に来たなんて…
脱獄したなら堂々としてないはず…
本当に釈放されたとしたらどうしてだ…
だとすると…またスミに何かしでかすに違いない…
一体どうしたらいいんだ…
この日、シュンはスミのことが心配で一睡も出来なかった。
翌朝、テルが目を覚ますとシュンはテーブルに顔を伏せていた。
「兄貴、おはようございますっ」
「おはよ」
「すみません。昨日はいつの間にか寝ちゃってました」
「俺の方こそごめん。外に出て行って」
「いいえ。兄貴…何かあったんですか?」
「ううん。顔洗って行こうか」
「はいっ」
2人は事務所へ行き、スタッフにテルを紹介した。
紹介が終わるとシュンはスタッフにテルを任せ、スーツに着替えると児童施設の講習会に出かけた。
15時過ぎに講習が終わり施設へ戻る途中、専務から着信があり車を停めた。
「もしもし、社長」
「うん。何かわかった?」
「はい。柳本は釈放されてました。保釈金を払って出たようです」
「えっ…保釈金って…そんな簡単に釈放されたのか⁈」
「それが…驚かないで下さい。保釈金を払ったのは社長の元奥様です」
「え⁈由希が…⁈どっ…どうして」
「どうして払ったのかまではわかりませんが今、柳本は元奥様の会社で副社長をしてるみたいです」
「あいつが⁈」
「保釈金で釈放されたのも元奥様の力だと思います」
「、、、、」
シュンは裕二が由希の会社で副社長をしている事などどうでもよかった。
それよりスミに危害を与えないかが1番の心配だった。
「社長、柳本社長のことが心配なんですね?私が柳本社長のボディガードでも出来たらいいんですが、地曽田グループを守らないと…」
「うん。専務、調べてくれてありがとう」
「社長…心配なのはわかりますが、社長と柳本社長はもう別れてるんですからね…変な気起こさないで下さい」
「わかってる…」
電話を切った後、シュンは車を停めたまましばらく考え込んだ。
スミとは別れているし、もう関係ないのはわかってる…
わかってるけど…
施設に戻ったシュンはテルの部屋に行った。
「兄貴っ」
「ちょっと入っていい?」
「どうぞどうぞ。何もないですけど」
「お邪魔します」
シュンは部屋の中を見渡した。
「ベッドはあるから、新しい布団とテレビを頼んでおくよ。他に何か必要な物ある?」
「えっ、いいですよ。今度の休みの時にでも買いに行って来ますので」
「いいよ。ここから買いに行くのも大変だし」
「じゃあ…兄貴が連れて行って下さい」
「ごめん。連れて行けないから」
「え?どうしてですか?」
「テル、俺…明日東京に戻るよ」
「明日?急にどうしてですか⁈」
「ちょっとね…しばらくは戻れそうにない…」
「そんな…」
「せっかくテルが来てくれたのに…ごめん」
「、、、、」
「大丈夫…だよね?テル…」
「、、、、」
「テル?」
「ここのスタッフの人たちもみんないい人だし…兄貴がいなくても…大丈夫です」
「テル…」
「頑張りますから…安心して東京に帰って下さい」
「…ありがとう。連絡するよ」
シュンはテルの部屋を出ると、東京から連れて来た女の子ミリの部屋に行った。
「お兄ちゃん」
「ちょっといいかな?」
「どうしたの?」
「うん、ちょっとミリにお話しがあって」
「なぁに?」
「ミリはここに来てよかった?楽しい?」
「うんっ、楽しい。ご飯も食べられるしお風呂にも入れるし」
「そっか」
「それにお友達もたくさんできたし。今日ね、かくれんぼしたんだよー!ミリはすぐに見つかっちゃった」
シュンはミリを抱きしめた。
「お兄ちゃん?」
「ミリ…お兄ちゃんは明日からいないんだ」
「どうして?」
「東京に帰るから」
「え…」
「でも安心した。ミリはお友達もたくさん出来たみたいだし」
「イヤだっ!お兄ちゃんも一緒にいて」
「どうしても行かなきゃいけないんだ」
「、、、、」
「ごめんね。ミリは強い子でしょ」
お兄ちゃんは優しいから…
ミリの時みたいにまた誰か助けるのかな…
シュンの人間性をよく知っているミリはそう思った。
「うん…わかった」
「ミリ…ありがとうね。ミリはいい子だね」
シュンは自分の部屋に戻ると地曽田グループが経営しているホテルの部屋を取り、荷物をまとめた。
そして翌朝、シュンは朝一の便で東京に戻った。
戻るつもりはなかったがシュンは悩んだ末に結局はスミを守る為、東京に戻ったのだ。
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