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46話 テルの新しい居場所
しおりを挟むそれから1週間経ち、あれ以来裕二はスミの前に姿を見せなかった。
シュンの施設は子供もかなり増えて、スタッフが足りないくらいになっていた。
シュンは新たに施設を増やそうと、物件を見に行っていた。
15時過ぎ、シュンが施設に戻るとスタッフが駆けつけて来た。
「社長、お帰りなさい。お客様が来られてますよ」
「お客さん?」
「あちらです」
食堂の方に目をやるとテルが座っていた。
「テル‼︎」
「兄貴っ!来ちゃいましたっ」
「えっ、どうしてここがわかった?」
「探し回りましたよ。糸島って事だけしか聞いてなかったから」
「電話くれればよかったのに」
「サプライズですよっ」
「ったく…元気だったか?」
「はい。兄貴も元気そうですね」
「まぁ…ね」
「僕、仕事辞めたんです」
「そっ…そうなの?」
「驚かないんですね。誰かから聞いたんですか?」
「えっ、誰からも聞いてないよっ。へぇ~辞めたのかぁ…」
兄貴…相変わらず…嘘ヘタ…
「今日は兄貴の家に泊まっていいですか?」
「いいけど…家って言ってもここだけどいい?狭いよ」
「この施設に住んでるんですか?」
「うん。とりあえずね」
「そうなんですね。全然狭くて構いません」
「じゃあ、ここを真っ直ぐ行った所にスーパーがあるから何か適当に好きな物買って来て。俺はもうちょっと仕事があるから」
「わかりましたっ」
テルはシュンからお金を受け取り買い物に行った。
夜になり、シュンとテルは惣菜をつまみながらお酒を飲んでいた。
「兄貴がこんな狭い部屋に住んでるなんて思いもしませんでした」
「どうせ寝るだけだしね」
「何かすごいな。兄貴って」
「そんな事ないよ。それよりテルはこれからどうするの?仕事探してるの?」
「兄貴…」
「ん?」
「僕…兄貴を待ってる間、子供たちと遊んだりしてたんです」
「そうだったの?」
「ここのスタッフさんの仕事ぶりもずっと見てて思ったんです」
「何を?」
「僕を雇ってもらえませんか?」
「えっ?」
「こういう自然が多い所で親のいない子供のお世話をしたいです。僕にはもう親も兄弟もいないし…ここに居ると心強くなれそうです」
「テル…」
「それに兄貴と一緒にいれるし…ダメですか?」
「これから色んな子が施設に入居して来るから大変だよ。仕事内容も結構キツいし」
「頑張ります‼︎体力にも自信ありますっ!」
「これから施設を増やそうと思ってるからスタッフも募集しようと思ってたんだ」
「えっ、じゃあ…」
「テルが一緒に働いてくれたら助かるよ」
「いいんですか?働かせてもらっていいんですね?」
「うん。ありがとう」
「部屋は…最近までうちの秘書が使ってた部屋があるから。そこ使うといいよ」
「本当ですかっ?じゃあこのままずっと居ます」
「えっ…東京のアパートは?」
「引き払いましたっ」
「引き払った?どうして」
「どっちにしろ兄貴がいる福岡で寮付きの会社を探そうと思ってたので」
「そっ…そうなんだ。テルって本当に行動派だね…」
「はいっ!」
「とりあえず明日みんなに紹介するから。初めは見学するといいよ」
「わかりました。じゃあ乾杯しましょ」
「これからもよろしく」
「はいっ。よろしくお願いしますっ」
「頼りにしてるよ」
「任せて下さいっ!あっ、そうそう」
「どうした?」
「僕が会社辞める日にですね。来られてましたよ」
「誰が?」
「社長の元旦那さん」
え…
お酒を飲もうとするシュンの手が止まった。
「何だか感じの悪そうな人でした」
「ほ…本当に元旦那って言ってたか⁈」
「えっ…はっ…はい」
「そんなはずないっ…」
「はっきり言ってましたよ。社長は驚いてる様子でしたし。そりゃ突然元旦那さんが来たら驚きますよね」
「そんな…で、何しに来たんだ⁈」
「知りません。僕は追い出されましたから」
嘘だろ…どうしてあいつが…
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