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44話 まさかの人物

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午後、シュンは空港までスミを送った。


「ありがとう」

「うん…」

「シュン…私、お父様に何て伝えたらいい?戻って来ないんでしょ?」

「父さんには自分から話すよ。スミはもう父さんに会わなくていいよ」

「…うん」 

「それと、俺たちも…」

「、、、、」


スミはシュンが言おうとしている言葉を察していた。


「もう会わない方がいい。お互いに余計辛くなるだけだから…」

「うん…」

「スミ…幸せになれよ」

「…シュンもね」

「じゃ…気をつけて」

「うん。ありがとう」


2人は動こうとしなかった。


「行かないの?」

「シュンから行って」

「…わかった。じゃ…」


スミはシュンの後ろ姿をいつまでも見ていた。


東京に戻り、家に着いたスミが玄関のドアを開けると男性物の靴があった。


誰か来てるのかな…


「ただいま…」


リビングに入ると中田秘書が居た。


「中田秘書っ」

「お邪魔してます」

「スミ、おかえり」

「どうしたの?」

「中田さん、今月いっぱいで辞めるんだってね。それで挨拶に来てくれたのよ」

「あっ…ごめんお母さん。話してなかったね」

「そうよ。引き留めたけど無理だったわ」

「すみません」

「どうするの?新しい秘書を探さないと」

「秘書は付けないから探さなくていいよ」

「え…でも」

「あのっ…そろそろ僕、失礼しますね」

「あっ…そう?じゃ最後まで宜しくお願いしますね。何かあればいつでも遠慮せずに言ってね」

「ありがとうございます。それでは社長また明日…」

「うん。また明日」


中田秘書は帰って行った。


「スミ…どうだった?地曽田さんに会えたの?」

「…うん。こっちにはもう戻って来ないみたい」

「…そう」

「もう会う事はないから安心して」


シュンとずっと一緒に居たこと…
とてもお母さんには話せない…



それから1週間が過ぎ、中田秘書が働く最後の日となった。
スミと中田秘書は昼食をとった後、コーヒーを飲みながら社長室でくつろいでいた。


「明日からどうするの?」

「とりあえず何日かゆっくりして、自分のしたい事を考えようと思ってます」

「そっか。もし仕事に困ったらうちの営業でもやっていいからね」

「ありがとうございます。でもこの業界は自分には向いてないと思うんで」

「そうなのね…」

「社長、今までありがとうございました」

「こちらこそありがとう。それと…ごめんね…」

「謝らないで下さい。久しぶりに恋して楽しかったです」

「中田秘書…」

「社長と兄貴…何で別れたかわかりませんが、お互いまだ好き合ってるのはよくわかります。だからいつか…」

「え…」

「また一緒になれると思いますよ」

「、、、、」


その時ノックが鳴った。


「はい、どうぞ」


えっ…うっ…嘘でしょ⁈
どうしてこの人が…⁈







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