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38話 思いは届かず
しおりを挟む2日後の朝、シュンはスーツケースを持って会社へ行き専務と最終の打ち合わせをしていた。
スミとテルは昨日まではぎこちない雰囲気だったが、開き直って接するテルのおかげで今日は普段通りに戻っていた。
2人は社長室で昼食をとっていた。
「午後からの予定は?」
「13時半に取引先の社長が来られます」
「13時半ね、了解」
「ちなみに関係ないかも知れませんが…今日兄貴が福岡に出発するの知ってます?」
「えっ…今日?」
「そうですよね。知らなかったですよね…16時の便で発つみたいです」
「…そう」
「何か…もう戻って来ないような気がします…」
「どうして…?」
「何かとなく…それに継母と何かあったみたいで」
「え…何かって?」
「知りません。だけど親子の縁をに切りたいとまで言ってたから…よっぽどの事があったはずなので、余計に戻って来ないような気がして…」
親子の縁を切りたいって…
「専務も居ないし兄貴も居ないし…寂しくなるなー」
それって…シュン…
知ってしまったんじゃ…
「社長っ?どうしたんですか?」
「えっ…あっ…ううん」
「でも縁を切りたいなんて、あの兄貴が言うんですよ。どんな継母だろ…何か酷い事されたのかな…」
きっとそう…
継母と父のこと知ったんだ…
それが原因で私たちが別れたって事も…
時刻は打ち合わせの時間となり、スミは取引先の社長と今後の事で話していた。
よく喋る社長だったのでスミは時間ばかりを気にしていた。
「青山の物件はどうしましょうか…近いうちに一緒に見に行きましょう…」
シュンが戻って来ないつもりなら…
もう2度と会えない…
16時の便…
何気なく時計を見ると14時を過ぎていた。
「柳本社長?」
「あっ…すみません。話の続きは明日にでも。こちらから伺いますので‼︎」
「えっ、明日ですか?」
「すみませんっ、失礼しますっ」
スミは急いで会社を飛び出し、タクシーを拾って空港へ向かった。
「運転手さんっ、急いで下さいっ」
「はい、わかりました」
シュン…
もう会えないかも知れない…
それなら…最後にもう一度だけ…
シュンに会いたい…
16時45分に空港に着くと、スミは搭乗口を目指して走った。
だが、もう既に福岡行きは全員搭乗を終えていた。
間に合わなかった…
スミは一気に力が抜け、その場に座り込んだ。
そして福岡に飛び立つ飛行機を見えなくなるまで見送っていた。
17時過ぎにスミが会社に戻ると秘書が駆け寄って来た。
「社長っ、どこに行ってたんですかっ⁈連絡もつかないし心配したんですよっ」
「…ごめんなさい」
「社長っ?どうしたんですか⁈顔色悪いですよっ」
「、、、、」
「急いで出て行ったみたいですけど…一体どこに?…まさか…空港に…?」
「…ちょっと1人にさせてくれる…?」
「社長…」
「…お願い」
秘書は仕方なく出て行った。
社長…空港に行ったんだ…
でもどうして…
もしかして…兄貴のこと…
この日の夜、秘書はシュンに電話をかけた。
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