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31話 決心

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翌朝、スミが家を出るとテルが車の前に立っていた。


「おはようございますっ」

「おはよう」


車に乗り会社へ向かった。


「一昨日はすみませんでした。酔い潰れてしまいました」

「帰る時も起きなかったの?」

「はい…えっ、社長ももしかして…」

「私も酔い潰れた…」

「じゃ…兄貴大変だっただろうな…2人も介抱して。社長は家に帰らなかったんでしょ?」

「え?どうしてそれを?」

「昨日の朝会長から電話がありました。社長が帰って来てないって」

「そ…そうだったの?」

「兄貴と一緒だったんですか?」

「違うわよ。朝起きたらホテルだった。地曽田グループのホテルに泊めてくれたみたい」

「そ…そうです…か」


この日の夜、モヤモヤしていたテルはシュンの家に行った。


「テル?どうした⁈」

「突然すみませんっ…ちょっといいですか?」

「入って」

「お邪魔しますっ」

「何か飲む?」

「いえ、いいです」

「そう…」

「兄貴…僕に気を遣ったでしょ」

「何が?」

「一昨日、社長を家じゃなくてホテルに泊まらせたんですよね?」

「、、、、」

「僕てっきり2人とも送ったって聞いたから…社長のことも家に送ったんだと思ってました」

「ごめんっ…変に誤解されると思って。言っておくけど俺はすぐに帰ったからな」

「わかってます。ただ…兄貴…」

「何?」

「僕、社長のこと兄貴に応援してもらっていいんですかね」

「どういう事?」

「それは…兄貴、社長に気があるのかなぁって思って」


テルは専務の立場を考えると、2人が元恋人だったという事を知っているとは言えなかった。


「な…何でだよ。そ…そんな事ないし」

「いやっ…焼肉店で社長が来た時の兄貴見てたら何となく…それに話し方がぎこちなかったし…」

「気のせいだよ…」

「じゃあ、本当に社長のこと何とも思ってないんですね?」

「…うん」

「よかった。僕、兄貴のこと好きだから…もし兄貴も社長のこと好きなら僕が諦めた方がいいのかなぁって…」


その言葉を聞いたシュンは心が痛かった。


「何も聞いてないの?柳本社長や専務から…」

「えっ…何をですか?」

「…それは」


テルを騙しているようで心苦しくなったシュンは正直に話そうと決めた。


「兄貴?」

「テル…ごめん。実は」


兄貴…もしかして…


「俺と柳本社長、以前付き合ってたんだ」

「え…」

「隠すつもりはなかったんだけど何か言いづらくなって。でも今は何でもないから」

「、、、、」


正直に話してくれてテルは嬉しかった。


「テル?驚いたよね。本当にごめん」

「いいえ。話してくれてありがとうございます」

「…驚かないの?」

「驚きましたけど…一昨日のお2人見たら納得しました」

「そ…っか」

「結婚とか考えなかったんですか?」

「それは…」

「すみませんっ、あんまり聞かない方がいいですね」

「もう終わった事だから。もう3人で会う事はないからね。今度から一昨日みたいに急に呼んだりしたら俺、帰るからな」

「はい…わかりました」

「テル…本当に今頃話してごめんな」

「話しづらかった兄貴の気持ち、わかりますから」

「テル、ありがとう」

「兄貴も話してくれてありがとうございます」

「頑張れよ」

「はいっ。頑張りますっ」


テルが帰った後、シュンは歩いて公園に行った。


スミと別れた後もシュンは公園に行ってスミのことを思い出していたのだ。


もうここに来るのは今日で最後にしよう…
スミとも…もう会うこともない…
今までスミのこと別れたフリして自分に言い聞かせてきたけど…
スミ…
もうスミのことは忘れるよ…


そしてシュンは消せなかったスミの連絡先を削除した。






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