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28話 何も知らずに
しおりを挟む翌日、柳本グループでは朝から会議があった。
昼過ぎに終わると秘書と専務は社長室でスミと一緒に昼食をとっていた。
「明後日の土曜日、仕事が終わったら社員たちと食事会するんですけど…専務の予定はどうですか?」
「土曜は母が来るのでちょっと…」
「そうなんですね。大丈夫ですよ。強制じゃないので。中田秘書は?」
「すごく行きたいんですが…その日は僕も用事があって。すみません」
「了解。声かけてみただけだから気にしないで」
「じゃあ土曜日は社長のこと送らなくてもいいんですね?」
「うん。そのままお店に行くから大丈夫」
「ちなみにどこで食事会するんですか?」
「渋谷だけど…」
「そうですかっ」
秘書は渋谷の焼肉店を予約してシュンに詳細をメールで送った。
土曜の20時、シュンとテルは焼肉店に入った。
「何でも遠慮せず頼んで下さいね」
「うん。ここって行きつけ?」
「いいえ。初めてです」
「そっか。渋谷で食事なんて久しぶりだな」
「飲み放題にしましたから、どんどん頼んで下さいねっ」
「飲み放題?うっ…うん」
シュンは肉を焼き始めた。
「何か最近…よく俺たち一緒にいるな…」
「嫌ですか?」
「嫌じゃないよ。おかげで若いパワーもらってるよ」
「本当ですか?でも…僕たまに思うんです。兄貴に対して図々しかったかなとか…」
「そんな事ないよ。テルはいい子だよ。ほらっ食べな」
「はいっ。兄貴も食べて下さいね」
「これはもうちょっと焼いてからね」
「兄貴って何でそんなに優しいんですか?僕が女なら惚れますよ」
「おー!テルは本当にいい子だね~。さっ、どんどん食べて」
2人は食べて飲みまくった。
「ちょっと休憩しよう」
「そうですね。肉はもう少し様子みてまた頼みましょう。飲み物は…ワイン…」
「ワイン?」
「すみませーん、赤ワイン下さーい」
「テル…ワイン飲んで大丈夫?」
「大丈夫ですっ。ゆっくり飲みますので」
シュンはまたテルが酔い潰れるのではないかと心配だった。
「ちょっとトイレ行って来ます」
テルは携帯を持って席を離れるとスミに電話をかけた。
「もしもし」
「あっ、社長?」
「どうしたの?」
「まだ食事中ですか?」
「今、会計中よ」
「じゃあ、もう帰るんですか?」
「うん」
「結構食べられたんですか?」
「社員たちの話を聞いてばかりだったからあまり…」
「焼肉食べません?僕、近くの焼肉屋に居るんです」
「え?そうなの?1人で?」
「とりあえず待ってます。場所はメールします」
秘書は断らせない為に一方的に話して電話を切った。
なっ…何よ…
でも飲み足りないしな…
明日も休みだし…行ってみようかな…
そう思ったスミは秘書からのメールを確認し、焼肉店へ向かった。
テルがトイレから戻るとシュンは待ちくたびれた様子だった。
「遅かったね」
「すみませんっ」
「酔ったんでしょ。もう帰る?」
「いえ、肉注文しましょっ」
「まだ食べるの?」
「もう1人来るのでっ」
「え?誰か呼んだの?専務か?」
「いえ、柳本社長です」
「え…」
「この近くで社員たちと食事会してたので呼びましたっ」
「じゃ…俺、帰ろうかな…」
「どうしてですかっ?」
「それは…お邪魔でしょ…」
「そんなっ。まだ付き合ってもないし…それに僕を応援してくれるって…」
「…そうだけど…でも」
「柳本社長と会うのが気まずいとか…あるんですか?」
「…そんな事ないよ」
「じゃあ、3人で飲みましょっ」
テルはスミの分のビールと肉を追加した。
「柳本社長はテルが1人で居ると思ってるんじゃない?」
「それは…」
するとスミがお店に入って来た。
スミ…
「社長っ、ここですっ‼︎」
秘書に気付いたスミは席に行こうとしたがシュンも一緒に居ることに気付き立ち止まった。
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