プラグマ2 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
28 / 110

28話 何も知らずに

しおりを挟む

翌日、柳本グループでは朝から会議があった。
昼過ぎに終わると秘書と専務は社長室でスミと一緒に昼食をとっていた。


「明後日の土曜日、仕事が終わったら社員たちと食事会するんですけど…専務の予定はどうですか?」

「土曜は母が来るのでちょっと…」

「そうなんですね。大丈夫ですよ。強制じゃないので。中田秘書は?」

「すごく行きたいんですが…その日は僕も用事があって。すみません」

「了解。声かけてみただけだから気にしないで」

「じゃあ土曜日は社長のこと送らなくてもいいんですね?」

「うん。そのままお店に行くから大丈夫」

「ちなみにどこで食事会するんですか?」

「渋谷だけど…」

「そうですかっ」


秘書は渋谷の焼肉店を予約してシュンに詳細をメールで送った。


土曜の20時、シュンとテルは焼肉店に入った。


「何でも遠慮せず頼んで下さいね」

「うん。ここって行きつけ?」

「いいえ。初めてです」

「そっか。渋谷で食事なんて久しぶりだな」

「飲み放題にしましたから、どんどん頼んで下さいねっ」

「飲み放題?うっ…うん」


シュンは肉を焼き始めた。


「何か最近…よく俺たち一緒にいるな…」

「嫌ですか?」

「嫌じゃないよ。おかげで若いパワーもらってるよ」

「本当ですか?でも…僕たまに思うんです。兄貴に対して図々しかったかなとか…」

「そんな事ないよ。テルはいい子だよ。ほらっ食べな」

「はいっ。兄貴も食べて下さいね」

「これはもうちょっと焼いてからね」

「兄貴って何でそんなに優しいんですか?僕が女なら惚れますよ」

「おー!テルは本当にいい子だね~。さっ、どんどん食べて」


2人は食べて飲みまくった。


「ちょっと休憩しよう」

「そうですね。肉はもう少し様子みてまた頼みましょう。飲み物は…ワイン…」

「ワイン?」

「すみませーん、赤ワイン下さーい」

「テル…ワイン飲んで大丈夫?」

「大丈夫ですっ。ゆっくり飲みますので」


シュンはまたテルが酔い潰れるのではないかと心配だった。


「ちょっとトイレ行って来ます」


テルは携帯を持って席を離れるとスミに電話をかけた。


「もしもし」

「あっ、社長?」

「どうしたの?」

「まだ食事中ですか?」

「今、会計中よ」

「じゃあ、もう帰るんですか?」

「うん」

「結構食べられたんですか?」

「社員たちの話を聞いてばかりだったからあまり…」 

「焼肉食べません?僕、近くの焼肉屋に居るんです」

「え?そうなの?1人で?」

「とりあえず待ってます。場所はメールします」


秘書は断らせない為に一方的に話して電話を切った。


なっ…何よ…
でも飲み足りないしな…
明日も休みだし…行ってみようかな…


そう思ったスミは秘書からのメールを確認し、焼肉店へ向かった。


テルがトイレから戻るとシュンは待ちくたびれた様子だった。


「遅かったね」

「すみませんっ」

「酔ったんでしょ。もう帰る?」

「いえ、肉注文しましょっ」

「まだ食べるの?」

「もう1人来るのでっ」

「え?誰か呼んだの?専務か?」

「いえ、柳本社長です」

「え…」

「この近くで社員たちと食事会してたので呼びましたっ」

「じゃ…俺、帰ろうかな…」

「どうしてですかっ?」

「それは…お邪魔でしょ…」

「そんなっ。まだ付き合ってもないし…それに僕を応援してくれるって…」

「…そうだけど…でも」

「柳本社長と会うのが気まずいとか…あるんですか?」

「…そんな事ないよ」

「じゃあ、3人で飲みましょっ」


テルはスミの分のビールと肉を追加した。


「柳本社長はテルが1人で居ると思ってるんじゃない?」

「それは…」


するとスミがお店に入って来た。


スミ…


「社長っ、ここですっ‼︎」


秘書に気付いたスミは席に行こうとしたがシュンも一緒に居ることに気付き立ち止まった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

わかりあえない、わかれたい・2

茜琉ぴーたん
恋愛
 好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。  人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。  振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。  2・塩対応を責められて、放り投げてしまった女性の話。 (5話+後日談4話) *シリーズ全話、独立した話です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...