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27話 応援

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翌日、タクシーで出勤しようと思ったスミは早めに家を出たが、すでに秘書が待っていた。


迎えに来なくていいって言ったのに…


「社長っ、おはようございますっ」

「おはよ」


秘書は車のドアを開けスミを乗せた。


「発車しま~すっ」

「今日は迎え来なくていいって言ったのに」

「そんなこと言ってましたっけ~?あっ…それより昨日の事…」

「…聞かなかった事にするから」

「どうしてですかっ。本気で言ったのに…返事は待ちますから」

「何言ってるの」

「社長に相応しい男になりますから」

「もうやめてっ。仕事に集中しなさい」

「はいはいっ」


ハンドルを握っている秘書の腕にはシュンからプレゼントされた時計が着けられていた。


シュン…誤解してるだろうな…
どんな気分だったんだろ…
中田秘書と仲良いなら…さすがに私の秘書だってこと知ってるよね…


「ねぇ…地曽田社長とは会うの?」

「えっ…そうですね。時計のお礼も言いたいし今日か明日にでも会おうと思ってます」

「そ…そう…」

「どうしてですか?」

「いや別に…聞いてみただけ」


会社に着くと秘書は専務の所へ行った。


「どうした?」

「専務に謝らなければいけない事がありまして…」

「何だよ」

「それが…地曽田社長と会ったこと社長に言ってしまいましたっ」

「えっ、どうして言うんだよ‼︎言うなって約束しただろ」

「実は昨日…僕の家に社長が居まして、僕が留守にしてる間に地曽田社長が来られて社長と会ってしまったんです」

「お前と社長…もうそこまで…それにどうして地曽田社長がお前の家に⁈どういう事だ⁈」

「昨日、僕の誕生日だったんです。それで無理言って社長に料理作りに来てもらってて。地曽田社長は誕生日プレゼントを届けに来てくれたみたいです」

「地曽田社長がお前にプレゼントって…どうして?あの日食事しただけなのに。それにお前の家を何で知ってるんだ?」

「地曽田社長とは2回ほど2人で会ったんです…」

「そうだったのか…」

「…はい」

「えっ、でも…地曽田社長と社長が会ってどんな感じだったんだ?」

「わかりません。ただ社長は驚いたでしょうね。地曽田社長が僕の家に来たから。だから僕と地曽田社長との成り行きを話すしかなかったんです」

「それは…まぁ言うしかないな…地曽田社長には連絡したか?」

「プレゼントのお礼にメールを送ったんですが返事は来てません。今日か明日会おうと思ってます」

「そっか…ショックだったろうな…」

「僕は社長と地曽田社長が恋人だったってこと知らないフリしてた方がいいんですかね…?前に社長が酔ってた時チラッと聞いたけど…それ以上聞いちゃいけない感じだったし」

「社長が?よくわからないけど…地曽田社長には本人が話してこない限り知らないフリしててくれ」

「そうですよねっ。じゃないと専務が告げ口したって思われますよね」

「…だな」


そして専務と別れた後、秘書はシュンに連絡して夜シュンの家で会う約束をした。
住所はメールで教えてもらった。


20時過ぎ、秘書はシュンの家に行った。


「お邪魔しまーすっ」

「どうぞ」

「広い部屋ですねっ」

「この前泊まったでしょ」

「あっ…酔っ払った時ですねっ。朝もバタバタ出たので覚えてませんでしたっ」

「そうだったね。何飲む?コーヒーかお茶か」

「じゃあ、お茶で」

「はい。俺はビール飲ませてもらうよ」

「はい。あの…」

「ん?」

「時計ありがとうございました。直接お礼言いたくて」

「あっ…うん。着けてくれてるんだ?似合うじゃん」

「はいっ。気に入りました!兄貴が届けに来てくれた時、僕ジムに行ってたので…」

「…そっか」

「…はい」

「あのさ…」

「はい」

「テルの家に居た女性…」

「はい。社長です。兄貴知ってますか?柳本グループの社長」

「あ…うん」

「ですよね。同じ業者ですから」

「…付き合ってるの?」

「いいえ…」

「じゃ何で家に…?」

「僕が誕生日だったから無理言って来てもらったんです」

「そうだったんだ…」

「僕、社長のことが好きで…昨日告白したんです…」

「……え」

「兄貴っ、僕もビール頂いていいですか?」

「えっ…いいけど。車は?」

「代行呼びます」

「わかった」


シュンがビールを渡すとテルはグイグイ飲んだ。


「僕、本気で告白したのに…相手にされませんでした…秘書だからとか10歳も年下だからとか…」

「、、、、」

「そんなの関係ないですよね?兄貴っ…そう思いません?」

「…そうだね」

「僕は諦めませんよっ。男として見てもらえるように頑張りますっ」

「うん…」

「兄貴っ、僕に何が足りないと思います?」

「足りないとこって…」

「見た目も中身も足りないとこ言って下さい」

「好きになってもらう為?」

「はいっ」

「足りないとこなんてないよ。そのままの自分を好きになってもらわないと」

「兄貴…」

「もっと自信持てよ。1番大事なのは気持ちだから」

「そ…そうですねっ…気持ちか…」

「うん」

「わかりましたっ。じゃあ兄貴、僕を応援してくれますか?」

「え…」

「兄貴から応援してもらったら心強いです」

「…応援するよ」

「ありがとうございますっ‼︎」


シュンは自分がスミの元彼だった事はとても言える状況じゃなかった。


「兄貴っ、今週の日曜は休みですか?」

「今週は休むつもりだけど?」

「土曜は予定入ってます?」

「土曜?ちょっと待って」


シュンは手帳を開いた。


「仕事終わった後は特に予定はないけど」

「僕、給料入ったので是非ご馳走させて下さいっ」

「食事に行くのはいいけど、ご馳走してくれなくていいよ」

「いいでしょっ。兄貴に1回くらい奢りたいんですっ。お願いしますっ」

「わかったよ。ありがとう」

「じゃ、土曜日ですよっ。焼肉なんてどうですか?」

「いいねー」

「焼肉で決まりですねっ!次の日休みだしお酒進むだろうな~」

「テル…飲んでもいいけどこの前みたいな酔い方はやめてくれよ」

「わかってますって」


それからしばらく経ち、テルは代行を呼んで帰って行った。


シュンはテルのことを応援するとは言っだけど、正直複雑な心境だった。
でも口先だけではなく心から応援しようと決断した。







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