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25話 距離が縮まっていく2人
しおりを挟む何とか時間に間に合った秘書は、スミを会社に送り届けた後シュンに電話をかけた。
「もしもし」
「テルですが」
「うん。間に合った?」
「はい。本当にすみませんでした」
「今後は飲む量を考えた方がいいよ」
「はい…ところで今日の昼間って時間ありますか?」
「昼?うん少しなら」
「昨日のお詫びにランチ行きませんか?奢らせて下さい」
「…いいけど」
「やった!兄貴の会社ってどの辺りですか?近くまで行きますので」
「俺がそっちまで行くよ。どうせ午後から柳本グループの近くでお客さんと会うから」
「そうなんですねっ。わかりました」
「近くのFホテルの1階にあるレストランに入ってて」
「Fホテルのレストラン…ですか?」
「うん。じゃ今から会議だから、後で」
電話を切るとテルは自分の財布の中を見てため息をついた。
お昼近くになり、テルはスミに呼び出された。
「今日は専務と3人でランチ行かない?」
「えっ…すみませんっ。ちょっと約束があるので」
「約束?そうなの…わかった」
「すみません。13時には戻ります」
「わかった了解!」
テルはFホテルのレストランに着きシュンを待っている間メニューを確認した。
うわっ…高っ…
Aランチで6000円…
1番安いCランチでも3000円…
5分後、シュンが到着した。
「お待たせっ」
「あっ…お疲れ様です」
「あまり時間がないから早く決めよう」
シュンはメニューを見て店員を呼んだ。
「Aランチ2つ」
「えっ…あのっ…僕はCランチでいいです」
「AランチとCランチでいいですか?」
「はいっ」
「いや…Aランチ2つお願いします」
「えっ…」
「かしこまりました」
「兄貴…僕Cでよかったのに…」
「何で?俺の奢りだから」
「えっ、でも僕が奢るつもりだったんですが」
「奢らせるつもりないから」
「でも…」
「こういう時は素直に受け入れるんだよ」
「兄貴…」
「それより…二日酔いじゃない?」
「朝はちょっとキツかったけど今は大丈夫ですっ」
「それならよかった」
「昨日は途中から記憶がないんですが…」
「だろうね。店の中で爆睡してたからね」
「すみませんっ。しかも兄貴の家に泊まらせてもらって…」
「テルの家がわからなかったから。でももうわかったから、もしまた酔い潰れたら家に連れて帰るよ」
「もう酔い潰れないようにしますから大丈夫ですっ」
注文した料理が次々に運ばれて来た。
「食べよう」
「はいっ。いただきます」
「テルは社長の送迎してるんだね」
「あっ…はい。会長の指示です」
「そ…っか」
「さすが高いだけありますね。美味しいですっ」
シュンは美味しそうに食べるテルを見ながらふとテルの手首に目がいった。
「時計は着けてないの?」
「はい」
「時間確認する時は?」
「携帯ですっ。時計持ってないし…携帯で充分なんです」
「…そう」
「わっ…これキャビアですねっ。初めて食べましたっ」
「…親は?会ったりしないの?」
「居ません」
「え…」
「父は僕が小さい時にガンで亡くなりました。母は先月…膵臓ガンで…」
「先月⁈そうだったのか…ごめんっ」
「だから僕には…誰も居ません」
「テル…」
「1人には慣れてますからっ」
「俺を頼っていいから」
「え…」
「俺を兄貴みたいだって言ったでしょ?」
「…はい」
「兄貴だと思っていつでも頼っていいよ」
「兄貴…僕すごく好きです。兄貴のこと。兄貴みたいになりたいです」
「ありがとう…」
「だから、そういう事を言ってもらえてすごく嬉しいですっ」
店員が食後のデザートを持ってきた。
「俺の分も食べていいよ」
「えっ…いいんですかっ?やったー」
「テルは思った事はっきり言うし素直で前向きで本当にいい子だよ。だから俺もテルのこと好きだよ」
「兄貴…ありがとうございますっ」
テルはデザートを2人分完食した。
「あー。美味しかったなー」
「よく食べたね」
「はい。お腹いっぱいです」
「テルは誕生日いつ?」
「誕生日ですか?あっ来週ですっ」
「来週⁈もうすぐじゃん。何日?」
「30日ですっ」
「月曜か…」
「兄貴…本当に支払い…いいんですか?」
「うん。そろそろ出よっか」
「はいっ。ごちそうさまでした」
食事を終え2人はホテルを出た。
「じゃあ俺はお客さんのとこ行くから」
「はいっ。ごちそうさまでした」
テルも会社に戻って行った。
シュンは車に乗るとお客さんとの約束の時間まで少し余裕があるのを確認し、そのまま時計屋に行った。
誕生日プレゼントとしてシュンはテルに似合いそうな腕時計を購入した。
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