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23話 2人との約束

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翌日、専務は秘書をランチに誘い一緒に昼食をとった。


「昨日はすみませんでした。僕が名刺を渡そうとしなければ…」

「いや…私の責任だ。嘘なんかつかなければよかった…」

「地曽田社長、怒ってますかね?」

「もう1度私から謝っておくよ。地曽田社長からは信用失われたくないから」

「地曽田社長っていい人ですね。男から見てもカッコいいと思います」

「そうだろ‼︎それより…地曽田社長と会った事はくれぐれも社長に言うなよ」

「社長の元彼だからですか?」

「お前っ、知ってたのか?」

「はい…元夫かと思いましたが違いました」

「元夫とは比べ物にならないよ。あんな男と地曽田社長を一緒にしないでくれ」

「元夫はよっぽど酷かったんですね…」

「あまり私の口からベラベラ話す事じゃないけど…ところで中田秘書の好きな人って…」

「社長です」

「うん…気付いてたよ」

「えっ、気付かれてたんですかっ」

「社長と一緒にいるとこ見たら誰だってそう思うよ。社長も中田秘書のこと…」

「僕の片思いです。僕に良くしてくれるけど男として見てくれてないと思います」

「そうなのか?」

「それに…まだ元彼のこと忘れてないと思います」

「地曽田社長のこと?それはないよ。社長の方が冷めて別れたんだから」

「そうなんですか⁈社長が地曽田社長を振ったんですか?」

「まぁ…そんな感じ。だからどちらかというと地曽田社長の方が社長のこと引きずってる」

「地曽田社長が…」

「俺てっきり中田秘書と社長がいい感じだと思ってたから地曽田社長にその事を言ったんだ。早く忘れるように。だから昨日も秘書じゃなく社員として連れて行ったのに…」

「だから僕が秘書だってわかった時、地曽田社長の顔色が変わったんですね」

「うん…多分。だから昨日の事は私のせいだ。もうお前は気にするな」

「…はい」

「それともう1度言うけど社長には…」

「わかってます。昨日の事は言いません」


食事を終えて2人は会社に戻った。
秘書が社長室に入るとスミが昼食をとっているところだった。


「ランチ行ってたの?」

「あっ…はい。専務と」

「最近、専務と仲良いわね」

「あ…そっ…そうですね」

「それと。欲しい物考えた?」

「…まだ考え中です」

「何でもいいから遠慮しないでね。この前私、酔って迷惑かけちゃったし」

「何でもいいんですね」

「ええ」

「わかりましたっ」

「食べたい物ある?」

「それも…何でもいいんですか?」

「いいよ」

「じゃあ…社長の手料理がいいですっ」

「え?真面目に答えてよ。予約しないといけないから」

「真面目に言ってるんですけど。何でもいいんでしょ?」

「でも手料理って…」

「僕の誕生日祝いでしょ」

「そうだけど。手料理は…」

「それで、この前の事はチャラにしますので。お願いしますっ」

「わかったわ。じゃ母にも言っておく」

「社長の家じゃなくて僕の家で作って下さい」

「中田秘書の家で⁈」

「はいっ」

「それはちょっと…」

「何でですか?何か変なこと考えてるでしょ?何もある訳ないじゃないですかっ。上司と部下ですよっ」

「わかったわ‼︎」

「やった~!僕嫌いな食べ物ないから社長にお任せしますっ」

「はいはい」


結局、秘書に負けてしまうスミだった。


この日、家に帰った秘書はシュンの名刺をじっと眺めていた。


社長…何で地曽田社長に冷めたんだろ…
悪いとこなさそうなのに…
地曽田社長…どことなく兄貴に似てたな…
兄貴…会いたいよ…


秘書には年の離れた兄がいたが、1年前に交通事故で亡くなっていたのだ。


秘書は名刺を見てシュンに電話をかけた。


「もしもし?」

「遅くにすみません。中田ですが」

「中田君?どうした?」

「あの…社長、近いうち空いてる日はありますか?」

「どうして?」

「会って話したいんです」

「、、、、」

「ダメですか?」

「明日21時以降ならいいよ」

「21時以降ですね。大丈夫です。ではどこかお店探して明日メールします」


秘書は特に何か話がある訳でもなく、シュンと似ている兄が恋しくなっていた。





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