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21話 秘密のキス
しおりを挟む仕事が終わり、スミと秘書は会社の近くにある居酒屋に入った。
料理とお酒が運ばれるとスミは勢いよく飲み始めた。
「社長っ、ちょっとペース早くないですか?」
「そぉ?あっ、中田秘書は酔わない程度に飲んでね」
「わかってますっ。このビール飲んだら僕はコーラに変えますっ」
「それでよしっ。その分たくさん食べてね。今日は私の奢りだから遠慮しないで」
「はいっ…いただきますっ」
2時間後、スミはいい感じに酔っていた。
「社長っ、飲み過ぎじゃないですか?」
「全然っ」
「だって…ワインこれで4本目ですよっ」
「だからぁ~、平気だってぇ~」
「社長…何かあったんでしょ?」
「何かって?」
「パーティーの日…社長、誰かに絡まれたんでしょ?突然帰るって言うし…」
「絡まれたって誰から聞いたの?」
「専務です」
「何で専務が知ってんの?あっ…あの人から聞いたのか…」
「あの人って…もしかして地曽田社長のことですか?」
「え?どうしてそれを…」
「どういう関係なんですか?社長と地曽田社長って…」
「それは…」
「元旦那さんじゃなさそうだし、元彼ですか?」
「、、、、」
「返事がないって事は図星なんですね」
「だから何?」
「やっぱりそうなんですね…まだ忘れられないんですか?」
「もう、そんな事どうだっていいでしょ」
「知りたいんです。社長のこと…もっと知りたい」
「他の事なら教えるわよ。誕生日?血液型?好きな食べ物?スリーサイズ?何が知りたい?」
「社長…」
「ねぇ何が知りたいの?」
「じゃあ…好きな場所は?」
「んー、公園かな…好きな場所でもあるし嫌いな場所でもあるけど」
「何ですか、それー」
スミはシュンとの思い出の場所である公園がふと頭に浮かんだ。
スミにとっては唯一の癒しの場所だったはずだが、シュンに別れを告げた悲しくて切ない思い出の場所になってしまっていた。
「他には~?」
「そうですね~」
それから1時間程、2人でたわいもない会話をしていると、スミは酔ってその場に寝てしまった。
秘書はスミを連れて店を出ると外のベンチに座らせた。
「社長っ、大丈夫ですか?」
「…うっ…うん」
「待ってて下さいっ。コンビニ行って冷たい水買って来ますっ」
「いらない…」
「こんなに酔っ払うとはなぁ~」
「んん…」
「社長っ?」
スミは秘書の肩に寄りかかり気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「また寝ちゃったんですね…」
秘書は眠っているスミに見惚れていた。
綺麗な顔立ちしてる…
目も鼻も…口も…
社長…
好きです…
秘書はスミの唇にそっとキスをした。
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