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20話 謝罪
しおりを挟む翌日、スミが社長室で仕事をしていると内線が鳴り来客を通された。
岡山さん?誰だろ…
コンコン…
「どうぞ」
ドアが開き入って来た人は昨日のパーティーで酔って絡んで来た男性だった。
「え…」
すると岡山社長は深く頭を下げてきた。
「ちょっと…何ですか?」
「昨日はすみませんでした」
「あっ…いえ」
「地曽田社長が止めてくれなかったら招待客の前で赤っ恥をかくところでした」
「…まぁ、座って下さい」
「あ…はい」
その頃、秘書は社長室に向かおうとしていた。
社長室の前で専務が誰かと電話で話していたので、見えない所で秘書は立ち止まっていた。
『今、岡山さんが来てますよ』
『うん』
『知ってたんですか?どうして…』
『昨日スミに岡山さんが絡んでたから謝りに行かせた…』
『昨日のパーティー、地曽田社長も行かれたんですか?』
『うん、ちょっと呼ばれたから』
『そ…そうですか…それで社長と会ったんですか?』
『話してはないけど…』
『…もしかして社長が絡まれてる時に地曽田社長が止めに入ったんですか?』
『たまたまだよ。じゃ忙しいから』
電話を終えた専務の元へ秘書がやって来た。
「中田秘書、どうした?」
「今…地曽田社長って聞こえましたが…電話の相手の方ですか?」
「うん、そうだけど。知ってるの?」
「いえ。ただ大手の会社って事だけは知ってます」
「そうだな」
「社長が絡まれたって何ですか?地曽田社長が止めたって聞こえましたが」
「お前は知らなくていい。仕事しろ」
「僕も昨日のパーティーに社長と行きましたので」
「それで何も知らないのか?」
「もしかしたら、僕が料理を取りに行ってる間に何かあったんだと思います」
「ちゃんと社長の傍にいないとダメだろ。秘書なんだから」
確かにあの後の社長は変だった…
急に帰るって言うし…
地曽田社長って人と何かあるのかな…
「専務は地曽田社長と親しいんですか?」
「まぁな」
「大手の社長と会ってみたいです。会わせて下さいっ。専務は今度いつその方と会うんですか?」
「一応、今週末飲みに行く予定だけど…」
「じゃあ僕も連れて行って下さいっ」
「え…それは聞いてみないと…」
「聞いてみて下さいっ」
「わかったよ…」
秘書が社長室のドアを開けようとすると専務に止められた。
「今お客様が来てるから。ちょっと私の仕事を手伝ってくれ」
「あっ…わかりました」
「私、岡山産業の岡山と申します」
「お世話になります。それにしてもどうして私の会社がわかったんですか?」
「地曽田社長から聞きました」
「…そうですか」
「私は飲み過ぎると周りが引くくらい酒癖が悪くて…地曽田社長からも何度も注意受けてたのに今回は酷く怒られました…柳本社長にお詫びに行くように言われまして…」
「あの…失礼ですが地曽田社長とはどういうご関係なんですか?」
「2年前…私は地曽田グループの社員だったんです。私が定年退職しようとしたら地曽田社長は私に事業をさせてくれたんです」
「え…どうして」
「私の妻は体が弱いので入退院の繰り返しでお金もかかるし…」
シュンらしいな…
「今回のパーティーにも私の会社の為に地曽田社長は来てくれたんです」
「…そうでしたか」
「本当に柳本社長には失礼な事をして申し訳ございませんでした」
「もういいですから。今度ともよろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
お詫びに来た岡本社長は帰って行った。
スミはシュンの心遣いに胸を締め付けられていた。
コンコン…
「どうぞ」
「社長っ」
「どうしたの?」
「今、専務の仕事をちょっと手伝ってますので何かあれば連絡下さい」
「わかった」
「それでは」
「あっ…中田秘書」
「はい?」
「今日は送らなくていいから、飲みに付き合ってくれる?」
「えっ、いいんですか⁈」
「ちょっと飲みたい気分なの」
「はいっ!行きましょう」
秘書は喜んで社長室を出て行った。
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