20 / 110
20話 謝罪
しおりを挟む翌日、スミが社長室で仕事をしていると内線が鳴り来客を通された。
岡山さん?誰だろ…
コンコン…
「どうぞ」
ドアが開き入って来た人は昨日のパーティーで酔って絡んで来た男性だった。
「え…」
すると岡山社長は深く頭を下げてきた。
「ちょっと…何ですか?」
「昨日はすみませんでした」
「あっ…いえ」
「地曽田社長が止めてくれなかったら招待客の前で赤っ恥をかくところでした」
「…まぁ、座って下さい」
「あ…はい」
その頃、秘書は社長室に向かおうとしていた。
社長室の前で専務が誰かと電話で話していたので、見えない所で秘書は立ち止まっていた。
『今、岡山さんが来てますよ』
『うん』
『知ってたんですか?どうして…』
『昨日スミに岡山さんが絡んでたから謝りに行かせた…』
『昨日のパーティー、地曽田社長も行かれたんですか?』
『うん、ちょっと呼ばれたから』
『そ…そうですか…それで社長と会ったんですか?』
『話してはないけど…』
『…もしかして社長が絡まれてる時に地曽田社長が止めに入ったんですか?』
『たまたまだよ。じゃ忙しいから』
電話を終えた専務の元へ秘書がやって来た。
「中田秘書、どうした?」
「今…地曽田社長って聞こえましたが…電話の相手の方ですか?」
「うん、そうだけど。知ってるの?」
「いえ。ただ大手の会社って事だけは知ってます」
「そうだな」
「社長が絡まれたって何ですか?地曽田社長が止めたって聞こえましたが」
「お前は知らなくていい。仕事しろ」
「僕も昨日のパーティーに社長と行きましたので」
「それで何も知らないのか?」
「もしかしたら、僕が料理を取りに行ってる間に何かあったんだと思います」
「ちゃんと社長の傍にいないとダメだろ。秘書なんだから」
確かにあの後の社長は変だった…
急に帰るって言うし…
地曽田社長って人と何かあるのかな…
「専務は地曽田社長と親しいんですか?」
「まぁな」
「大手の社長と会ってみたいです。会わせて下さいっ。専務は今度いつその方と会うんですか?」
「一応、今週末飲みに行く予定だけど…」
「じゃあ僕も連れて行って下さいっ」
「え…それは聞いてみないと…」
「聞いてみて下さいっ」
「わかったよ…」
秘書が社長室のドアを開けようとすると専務に止められた。
「今お客様が来てるから。ちょっと私の仕事を手伝ってくれ」
「あっ…わかりました」
「私、岡山産業の岡山と申します」
「お世話になります。それにしてもどうして私の会社がわかったんですか?」
「地曽田社長から聞きました」
「…そうですか」
「私は飲み過ぎると周りが引くくらい酒癖が悪くて…地曽田社長からも何度も注意受けてたのに今回は酷く怒られました…柳本社長にお詫びに行くように言われまして…」
「あの…失礼ですが地曽田社長とはどういうご関係なんですか?」
「2年前…私は地曽田グループの社員だったんです。私が定年退職しようとしたら地曽田社長は私に事業をさせてくれたんです」
「え…どうして」
「私の妻は体が弱いので入退院の繰り返しでお金もかかるし…」
シュンらしいな…
「今回のパーティーにも私の会社の為に地曽田社長は来てくれたんです」
「…そうでしたか」
「本当に柳本社長には失礼な事をして申し訳ございませんでした」
「もういいですから。今度ともよろしくお願いします」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
お詫びに来た岡本社長は帰って行った。
スミはシュンの心遣いに胸を締め付けられていた。
コンコン…
「どうぞ」
「社長っ」
「どうしたの?」
「今、専務の仕事をちょっと手伝ってますので何かあれば連絡下さい」
「わかった」
「それでは」
「あっ…中田秘書」
「はい?」
「今日は送らなくていいから、飲みに付き合ってくれる?」
「えっ、いいんですか⁈」
「ちょっと飲みたい気分なの」
「はいっ!行きましょう」
秘書は喜んで社長室を出て行った。
8
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。


婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
わかりあえない、わかれたい・2
茜琉ぴーたん
恋愛
好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。
人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。
振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。
2・塩対応を責められて、放り投げてしまった女性の話。
(5話+後日談4話)
*シリーズ全話、独立した話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる