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12話 卑下

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2時間後、スミは1人でワインを2本空けた。


「スミ、ちょっと飲み過ぎじゃない?」

「全然大丈夫よ。もう1本開けて」

「まだ飲むの?」

「いいから」


呆れた表情でシュンはスミのグラスにワインを注いだ。


そうよ…私のことなんか嫌いになって…


そう思いながらスミはワインを何杯も飲み続けた。


「今日の飲み方はヤケ酒だな。こんなスミは初めて見たよ」

「これが本性よ。今まで猫かぶってただけ」

「…そうですか」


スミは更にワインを注ごうとした。
酔って手元が狂ったせいでボトルがグラスに当たりワインを溢してしまった。
シュンは慌ててタオルを手に取り、スミにかかったワインを拭き始めた。


「ちょっとスミ!大丈夫⁈」


するとスミはシュンの手を払い除けた。


「スミ…?」

「優しくしないでよ、私なんかに…」


突然スミは泣き出した。


「え?スミ…どうしちゃったんだよ」

「シュンは…どうしてそんなに優しいのよ‼︎」

「何だよ、急に」

「ねぇってば‼︎」

「スミのことを愛してるからに決まってるだろ‼︎」

「え…」

「スミ、今日は飲み過ぎだよ。この水飲んで寝な」

「イヤ…話がしたい」

「話って…」

「私ね、さっき言った通り今までシュンの前で猫かぶってたの。本当は超ワガママで酒癖だって悪いし性格も悪いのよ。お金使いだって荒いし…」

「…で?」

「家事するのも大嫌いなの」

「じゃあ、しなくていいよ」

「それに…私よく考えたらワイルド系が好みだった。シュンはワイルド系じゃないよね…」

「ふーん。じゃ髭生やして日サロ行ってワイルド系になるよう努力するよ」


シュンには何を言っても敵わないと思ったスミは頭を抱えた。
するとシュンはスミの頭を優しく撫でた。


「自分のこと悪く言うなよ。スミのことはちゃんとわかってるから」

「シュン…」

「本当に悪酔いしたみたいだな」


シュンはスミを抱えてベッドに寝かせた。


「ゆっくり寝なさい。俺はもうちょっと飲むから」


そう言ってシュンは部屋を出た。


シュン…
せっかく私の為にここまで連れて来てくれて…
私の為に料理まで作ってくれたのに…
ぶち壊してごめんなさい…


もうこれ以上演技なんて出来ないと思ったスミは明日、別れを告げようと決めた。


一方で内心傷付いていたシュンはウイスキーを飲んでいた。


俺…何かスミに気に触るような事したかな…
それともマリッジブルーとか…?
いや…でも結婚は延期したし…
結婚もしてないのに家のこと任せてたから不満が募ったのかな…


スミの態度に対して、シュンは自分を責めていた。




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