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6話 悪縁
しおりを挟む地曽田家に着いたスミの母親が玄関のチャイムを鳴らすと父親が出て来た。
「これは…スミさんのお母様じゃないですか⁈」
「突然すみません。息子さんに住所を聞きました」
「そうですか。どうしました?」
「あの…昨日はあんな失礼な帰り方をしてすみませんでした」
「いいんですよ。それを言いにわざわざ?」
「あっ…奥様は…?」
「居ますよ。夕食の準備をしていますが上がって下さい」
「いいえ。奥様を呼んでもらってもいいですか?」
「あ…はい。ちょっとお待ち下さい」
父親が呼びに行くとすぐにシュンの母親が玄関に来た。
「あ…」
「少し話しできるかしら」
「中へ…どうぞ」
「ご主人に聞かれてもいいの?」
シュンの母親は少し出て来ると言いに行き2人は近くのカフェに入った。
2人はしばらく黙り込み重たい空気が流れていた。
「…久しぶりね」
「はい…」
「まさかあなたが地曽田家の奥さんだったなんて」
「私も驚きました」
「あなたのせいで私たちがどれだけ苦しんだと思ってるの⁈」
「でも…結局ご主人は戻って来たでしょ」
「あなたね‼︎主人から散々お金をもらっときながら」
「足りないくらいですよ」
「何ですって⁈今回もどうせお金目当てでしょ。20歳以上も年が離れてるんですって?」
「…違います。愛してます。柳本さんのことだって愛してましたし、柳本さんも私を愛してくれていました」
「やめて‼︎」
「あの時、離婚して私と一緒になっていたら柳本さんは病気にならなくて死なずに済んだかも知れない…」
するとスミの母親はシュンの母親の頬を思い切り引っ叩いた。
「何するんですかっ」
「主人は私たちを選んだのよ‼︎勘違いしないでちょうだい‼︎」
「、、、、」
「あなたさえ居なければスミたちは幸せになれたのに‼︎あなたをスミの姑になんかさせるもんですか‼︎」
「こうやって反対したら…私とシュンの間には更に壁が出来るわ…」
シュンの母親は深くため息をついた。
「幸せになって欲しいならあなたが地曽田家と縁を切ることね」
「そんなの…あり得ない。私は死ぬまで地曽田家の一員だしシュンより主人が大事だから」
「そうね…実の子じゃないものね。それに財産目当てでしょうし」
「もう勝手に言ってて下さい」
「とにかく、子供たちの結婚は許さないから」
「それでスミさんが納得すると思うんですか?シュンもだけど…」
「する訳ないでしょ!あんなに2人は愛し合ってるんだから。でも仕方ないでしょ」
「私のこと…話してないんですよね?」
「最悪、あなたのこと話すしかないわ」
「そうですか…ショック受けるでしょうね」
「もう2度とあなたと会う事はないから」
そう言うとスミの母親はその場を後にした。
19時過ぎ、スミが夕食の準備をして待っているとシュンが仕事から帰って来た。
「ただいま」
「おかえり」
「今日、実家に行って来たの?」
「…うん」
「そっか。そういえば今日スミのお母さんから電話があって俺の実家の住所聞かれたよ」
「えっ、どうして⁈」
「わかんない」
「そ…そう…」
「どうかした?元気ないけど」
「うん…それが…」
「何?」
「今日お母さんと話してたんだけど」
「うん…」
「、、、、」
「何?言いづらい事?」
「…うん」
「言ってみて」
「…急にお母さんが結婚に反対だって…」
「え?どうして?」
「わからない…だからもしかしたらお母さん、シュンの実家にその事を話しに行ったんじゃ…?」
「そんな…」
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