1 / 110
1話 シュンの実家
しおりを挟む5月になり、シュンとスミが結婚の約束をして1ヶ月が経った。
スミの元夫の裕二が刑務所に入って2人は平穏な生活を送っていた。
「スミ、来週の日曜だけど実家に行かない?」
「え?いいけど。じゃお母さんに言っとくね」
「あっ…ごめん。俺の実家」
「シュンの?」
「うん…」
「そうだね」
「父さんにはある程度は話してあるから」
「…わかった。ご挨拶もしたいし会っておかないとね」
「じゃ父さんに言っておくよ」
「反対されないかな…」
「それはないから安心して」
「そうかな…」
そして日曜日。シュンの実家に到着し玄関の前に行くとスミの足が止まった。
「どうした?」
「緊張するっ…」
「大丈夫だよ」
シュンはスミと手を繋ぎ中へ入って行った。
リビングに入ると父親と継母がソファーに座っていた。
「父さん」
「来たか」
「あの…初めまして。柳本スミと申します」
「ああ…」
「どうぞ座って下さい」
「はい」
「お茶…入れてくるわね」
「ああ」
父親はスミをじっと見ていた。
「父さん、見過ぎだよっ」
「すまん。あまりにも想像の人と違ったから」
想像を裏切ったと思ったスミはショックだった。
「どんな人を想像してたんだよ」
「それは…」
継母がお茶を運んで来た。
「派手で気が強そうな人を想像してたのよね?」
「令嬢イコールそんな感じがしてな…」
「…すみません」
「なぜ謝る?」
「想像通りの人じゃなくて…すみません」
「スミ?それは違うよ」
「そうよ」
「でも…」
「想像と違ってよかったよ」
「え…」
「謙虚で素直さが伝わってくるよ。私は人を見る目があるからわかるんだ」
それを聞いてスミはホッとした。
「元ご主人のことは見抜けなかったけどな。そこまで悪い奴だとは思わなかった。偽造に放火、DVまで…とんでもない奴だ‼︎」
「父さん、もうその話は…」
「そ、そうだな…スミさん大変だったね」
「私はいいんですがシュンさんにも迷惑かけてしまいました。私のせいですみません」
「スミ何言ってるんだよ。もういいから」
「シュンが居なかったら私…」
「守るって約束しただろ」
2人の会話を聞きながら父親はこの日初めて微笑んだ。
「2人はいつ籍入れるんだ?」
「えっ」
「結婚するんだろ?再婚となると男はすぐ出来るけど女性の場合すぐに再婚は出来ないだろ?」
「…2ヶ月後にしようと思ってる…」
「そうか」
「あの…認めて頂けるんですか?」
「認めるも何も、もう決めてるんだろ?」
「は…はい」
「結婚しなさい。スミさんみたいな人だったら大歓迎だよ」
「父さん…」
「ありがとうございます!」
「よかったわね」
「ああ。式は盛大にしなさい」
「式は…2人とも離婚してそこまで日が経ってないし急いでする必要ないかなって2人で話したんだ。写真だけでも撮ろうかって…」
「まぁ確かにそうだな。じゃあスミさんの親御さんと顔合わせしないとな」
「はい。母もそう言っていました」
「うちはいつでもいいから日程を決めておきなさい」
「わかりました」
「父さんたち夕食の時間でしょ?俺たちもそろそろ帰ろっか」
「うん」
「一緒に食事して行きなさい」
「え…」
「いいじゃないか。ねっスミさん」
「あっ…はい。じゃあ」
「じゃ、準備しますね」
継母は台所へ行った。
「…私も手伝います」
家族で夕食を済ませシュンとスミは帰った。
会長に快く受け入れてもらったスミは嬉しくて喜びを隠せなかった。
22
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
わかりあえない、わかれたい・2
茜琉ぴーたん
恋愛
好きあって付き合ったのに、縁あって巡り逢ったのに。
人格・趣味・思考…分かり合えないならサヨナラするしかない。
振ったり振られたり、恋人と別れて前に進む女性の話。
2・塩対応を責められて、放り投げてしまった女性の話。
(5話+後日談4話)
*シリーズ全話、独立した話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる