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第2章
100話 息子の為
しおりを挟むスミと別れた後、裕二の母親は買い物をして家に帰った。
「おかえり。ビールは?」
母親がビールを渡すと裕二はすぐに飲み始めた。
「うっめ~!夕食は何?」
「あなたの好きな肉じゃがとハンバーグよ」
「マジ?やった~!母さんが作る肉じゃがとハンバーグ絶品だもんな~ってか俺の好きなのばっかりじゃん!さすが母さん」
神様…お許し下さい…
今日だけはスミちゃんから聞いた事どうか忘れさせて下さい…
そして裕二と過ごさせて下さい…
今日だけは…
母親は心の中でそう思い夕食の準備をした。
夕食を食べ終わると母親はアルバムを持って来た。
「うわっ、懐かしー!この時って俺小3くらいだよね?」
「そうね。裕二は本当に可愛かったわ」
「そう?」
「私に甘えてばっかりだった…覚えてる?」
「うーん、何となく…」
「お父さんが借金残して亡くなって私は働きづくめだったから裕二には寂しい思いさせてきたわね…」
「別に寂しかったなんて…」
「ごめんなさいね…」
「母さん…どうしたんだよ」
涙が出そうになった母親は立ち上がった。
「裕二…ワインでも飲む?」
「え?ワインあるの?」
「今日買って来たから」
「うん!飲む飲む!」
それから2時間近く経った。
「俺そろそろ寝ようかな」
「…裕二」
「何?」
「久しぶりに母さんと一緒に寝ない?」
「えっ…別にいいけど…」
母親の部屋に布団を2組並べて2人は横になった。
「肉じゃがとハンバーグ美味しかったな~」
「よかった」
「また作ってよ」
「、、、、」
「母さん…俺、親孝行してないよね?」
「え…」
「考えたら母さんに何もしてやってない」
「してるわよ。今こうして元気でいてくれてるじゃない。健康でいる事が何よりの親孝行よ」
母さん…
しばらく沈黙が続いた。
「母さん…寝た?」
母親は起きていたが返事をしなかった。
「俺…捕まらないからね。まだやる事残してるから…今捕まる訳にはいかない…」
母親は黙って聞いていた。
「母さん…寝ちゃったか…母さんだけだよ。信じられるのは…」
そう言うと裕二は眠りについた。
母親は涙が止まらず朝まで眠らなかった。
翌日、朝食を食べ終えると母親は覚悟を決め隣の部屋に電話をかけに行った。
電話を終えた母親は裕二と話をする事にした。
「裕二…ちょっと話があるんだけど」
「え?何?」
「あなたいつから暴力振るう子になったの?」
「え…どういう事?」
「スミちゃんによ。火傷の跡だって見せてもらったけど…やる事が異常よ‼︎」
「…スミの奴、チクリやがって‼︎」
「裕二っ!!」
「ただのお仕置きだよ、大袈裟な!」
それを聞いた母親は裕二の頬を思い切り叩いた。
「痛っー‼︎何すんだよ!」
「あなた…スミちゃんにしてきた事が間違ってないとでも思ってるの⁈」
「、、、、」
「お母さんは悲しいわよ。今まで何も知らずに、てっきり幸せに暮らしてると思ってた…」
「スミが全部悪いんだよ」
「いつまで人のせいにばっかりするの⁈」
「母さん…」
その時チャイムが鳴った。
「しっかり償いなさい…」
「え?」
母親が玄関を開けると警察官が立っていた。
「かっ…母さん?まさか…」
「そうよ。お母さんが通報したのよ…」
「嘘だろ!まだあいつを消してないんだっ!捕まってたまるか」
裕二は暴れ出し逃げ出そうとするが警察官に取り押さえられた。
「クソーッ‼︎母さん何してくれてんだよ‼︎」
「裕二…あなたの為よ…」
母親はその場に泣き崩れ、裕二は連行されて行った。
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