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第2章
99話 全てを知った裕二の母
しおりを挟むホテルに身を隠していた裕二は危険を感じ、行く所もなく実家へ行った。
母親は裕二を見た瞬間、慌てて部屋の中へ入れた。
「裕二っ‼︎あなた一体何してるのよ‼︎」
母親は泣きながら裕二の胸を叩いた。
「母さん…」
「今までどこに居たの⁈どうしてあんな事を‼︎」
「しばらくここに居させてもらえないかな?」
「裕二っ‼︎警察が来たのよ!逃げ回るつもりなの⁈」
「少しの間かくまってよ。母さんお願い…」
「…とりあえずシャワー浴びて来なさい。体中汚れているわ」
「う、うん」
裕二がシャワーを浴びている間、母親はどうしたらいいかわからず頭を抱えていた。
30分後、シャワーを浴び終えた裕二は母親の前に行くとひざまずいた。
「裕二っ、何してるの」
「母さんお願いします。捕まりたくないんだ」
「裕二、どうして放火なんかしたの⁈」
「それは…スミが…」
「スミちゃんがどうしたの⁈」
「スミが男作って俺と離婚するって言うから」
「え…スミちゃんが?嘘でしょ?」
「本当だよ。スミは不倫して俺を捨てるつもりなんだ。だからつい…」
「それ本当なの⁈で…でもだからって家に火をつけるなんて…」
「俺は精一杯スミに尽くして来た…俺にはスミしか居ないのに…だから…」
裕二は得意の嘘泣きをした。
「裕二…でもあなた逃げ回っていたら罪が重くなるだけよ」
「今まで母さんと離れて暮らしてた分、一緒に居たいんだ。捕まったらいつ出て来られるかわからないから…」
「、、、、、」
「母さんには俺しか居ないし俺には母さんしか居ないんだよ!」
「わかったわ…ここに居なさい。母さんがかくまってあげる」
「母さん…ありがとう」
裕二は自分の部屋に行くと計画を練り始めた。
このまま捕まる訳にはいかない…
あいつらは絶対に幸せになんかさせない‼︎
こうなったら地曽田を消すしかない…
スミに地獄を味合わせてやる‼︎
翌日、裕二の母親は出かける準備をしていた。
「どこか行くの?」
「ちょっと…買い物に行って来るわ」
「ビールも買ってきて~」
「わかったから外に出るんじゃないわよ」
「は~い」
母親はスミに男がいると聞いて、直接話を聞く為にスミと会う約束をしていたのだ。
13時、待ち合わせ先のカフェに行くとスミは先に来て待っていた。
「お義母さん…」
「スミちゃん…大変だったわね…」
「…はい」
「本当にうちのバカ息子がごめんなさい」
「裕二さんから何も連絡はないですか?」
「え…ええ。ないわ」
「そうですか…」
「警察は何度か来たけど…それにしても裕二は何故あんな事をしたの?あなたたち上手くいってなかったの?」
「お義母さん…包み隠さず全て話します」
「えっ…ええ…話して…」
「私…裕二さんと離婚したくて。でも受け入れてくれなくて。お義母さんに何の相談もなしにすみません」
「離婚って…どうしてなの?」
「それは…」
「スミちゃんにいい人でも出来たとか?」
「それもあります…」
「あなた…裕二を裏切ったのね⁈それで裕二は離婚したくないばかりに放火なんか…」
「その人は私を裕二さんから2回も助けてくれたんです」
「え?どういう事?」
「私…裕二さんに監禁されてたんです。暴力も受けてました」
「え?裕二が…⁈暴力って」
「1回目は私…体中アザだらけでした。そして2回目は火事の時…その時も監禁されてたんですけどその人が助けてくれました。もう少し遅かったら炎に巻き込まれて今頃どうなっていたか…」
「う…嘘でしょ…」
スミはブラウスのボタンを外し火傷の跡を見せた。
「そっ…それは⁈」
「裕二さんから熱湯をかけられたんです」
「そっ…そんな…」
母親の顔はショックで青ざめていた。
「それに裕二さんは今まで2人の女性と浮気しました」
母親は裕二がスミに暴力を振るっていた事のショックが大きくてその後の言葉は耳に入って来なかった。
「お義母さん?」
「スミちゃん…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」
母親は泣いて何度も頭を下げて謝った。
「顔上げて下さい。お義母さんは何も悪くありません」
「いいえ、あんな子でも一応私の息子だから…」
「お義母さん…」
「あの子が捕まったら離婚を成立させるから」
「そのつもりです。捕まり次第離婚届を書いてもらいます」
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