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第2章
98話 感じる愛
しおりを挟むそれから1週間が経った。
裕二は未だに捕まっていない。
この日の夜、シュンたちは秘書と専務をマンションに招いて飲み会をしていた。
「ある程度は社長から聞きましたけど…スミさん無事で本当よかったです‼︎」
「シュンのおかげですよ」
「本当ギリギリに助け出すなんて愛の力ですね!」
「それより黒川専務…会社はどんな感じ?」
「スミさんのお母さんが来られて逆に社員は頑張ってますが…まだ軌道には乗ってません」
「そっか…専務には申し訳ないけど軌道に乗るまで頑張って欲しいし、スミのお母さんを支えて欲しい」
「わかってます。任せて下さい」
「黒川さん…ありがとうございます」
「いっそスミさんが柳本グループの社長になればいいのに…」
「えっ…私には絶対ムリです。社長なんて…」
「スミ…絶対なんてないからね!」
「…それはそうだけど…」
「それにしても柳本は今どこに居るんですかね~」
「会社のお金持って逃げてるなら遠くに行ってるんじゃないですか?早く捕まるといいですが」
「あいつは異常ですよ。放火に監禁、遺言書の偽造に会社のお金を持ち逃げでしょ…罪は大きいでしょうね」
「放火が1番罪は重いはずだけど、懲役6~7年くらいだろうね」
「6~7年…か。あいつにはしっかり反省してもらわないと」
「…離婚はどうやったら…」
「捕まったら面会に行こう」
「その時に離婚届書いてもらうんですね。さすがに応じない訳にはいかないでしょう」
「そうですね。早く捕まって欲しい…」
4人は遅くまで飲み続け、日付けが変わる前に秘書と専務は帰って行った。
シュンとスミは後片付けを終え、ソファーでくつろいでいた。
するとシュンはスミを抱き寄せキスをした。
「スミ」
「ん?」
「ベッドに行こうか」
え…
「行こっ」
「う…うん」
火傷の跡があるスミはシュンに引かれるんじゃないかと複雑な心境だった。
ベッドに腰を下ろすとシュンはスミのブラウスのボタンをゆっくり外し始めた。
その時、火傷の跡を見られるのが怖くなったスミはシュンの手を止めた。
「どうした?」
「私のこと…好き?」
「今さら何言ってるの?」
「何があっても好き?」
「…好きだよ」
スミは覚悟を決めシュンの手を離した。
シュンはブラウスを脱がすと火傷の跡を見て手を止めた。
「こっ…これ…」
「ひ…引くよね…」
「、、、、、、」
黙り込んだシュンを見てスミは引かれたと思った。
「…スミ、ごめん…」
「え…」
裕二に傷付けられたとわかり、どうしようもない怒りが込み上げていたシュンだったが同時に気付いてやれなかった事と守り切れなかった事が悔しくて自分を責めていた。
「シュン…これは…」
「…言わなくていいよ」
そして引かれるどころか火傷の跡にシュンは優しくキスをした。
えっ…
「愛してるよ」
スミはシュンの愛を感じ涙を流していた。
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