プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
97 / 102
第2章

97話 安心感

しおりを挟む

お昼過ぎに起きたシュンは顔を洗っていた。
同じ頃スミも目を覚まし洗面所に行った。


「シュンおはよう」

「おはよ」

「シュン…後で病院に行こう。傷深いし」

「大丈夫だよ」


そう言いながらも腕を上げようとするとシュンは痛そうな顔をした。


「痛いんでしょ」

「明日行くよ。今日は警察署に行かないと」

「でも…」

「それと…すぐに帰って来るからちょっと待ってて。家に帰って父さんに話して来るから」

「うん…わかった」

「あいつ、行方くらましてるから家から一歩も出ちゃダメだよ」


そう言ってシュンは家に戻った。


「ただいま…父さん」

「シュン仕事じゃないのか⁈昨日は帰って来なかったようだが」

「それが…」


シュンは昨日の出来事を全て父親に話した。


「そっ…それは本当か⁈柳本が火をつけただとっ⁈しかも彼女を監禁してたなんて」

「はい…」

「とんでもない奴だ‼︎で、もちろん柳本は捕まったんだよな⁈」

「…いいえ。行方不明です」

「あいつは逃げたのか⁈どうして捕まえなかったんだ?お前なら捕まえるくらい出来ただろ」

「…彼女を助ける事で精一杯でした」

「あぁ…そうだったな。もう少し遅ければお前も逃げ出せずに火に巻き込まれていたんだからな」

「…はい」

「あいつを早く捕まえないとな。警察には?」

「今日行きます」

「もう警察に任せておけよ。ヤケになってるはずだから、危険だぞ」

「父さん…今彼女を1人に出来ないからしばらく一緒に居ようと思ってます」

「…そうだな。離婚するまでとは言ったけど状況が状況だから仕方ないな。その代わり仕事はちゃんとしろよ」

「もちろんです。ありがとうございます」

「全て落ち着いたら彼女を家に連れて来なさい」

「父さん…」

「彼女の親御さんとも顔合わせしないとな」

「ありがとう」


シュンは急いでスミを迎えに行き一緒に警察署に行った。
2時間ほど事情を説明し、その後はスミの実家に報告し行った。


「じゃあ後は警察が動いてくれるのね?」

「そうです」

「よかったわ」

「お母さん…心配かけてごめんなさい」

「何言ってるのよ‼︎謝るのは私の方よ…気付いてあげられなくて本当にごめんなさい」

「ううん…」

「辛かったわよね…ごめんね…」


母親はスミを抱きしめた。


「それに地曽田さん…スミを助けてくれて本当にありがとう」

「…いいえ」

「あなたはスミの命の恩人よ。命懸けで守ってくれたんだもの」

「お母さん…スミさんのことは僕が守りますので安心して下さい」

「シュン…」

「地曽田さん…ありがとう」

「お母さん、寝てないんじゃない?目が腫れてる」

「…寝ようとしても裕二さんの顔が浮かんで眠れなかった。火をつける前の顔が頭から離れなくて…すごく恐ろしい顔してたわ」

「あいつと外で話したんですか?」

「しばらく話したわ」

「じゃあ…間一髪スミと脱出できたのも、あいつを足止めしてくれたお母さんのおかげですね」

「でも…結局は火をつけさせてしまったわ…」

「…あいつは今どこに居るのかわかりませんが捕まるまでは念の為お気をつけ下さい」

「わかってるわ。会社のお金も持ち逃げしたみたいだし…遠くに逃げたんじゃないかしら?」

「会社のお金を⁈」

「じゃあ…あの後…あいつ‼︎」

「それで…会社は大丈夫なの?」

「何とかするわ」

「何かあればいつでも言って下さい。手助けします」

「ありがとう…」

「それから、あいつが捕まるまではスミさんと一緒に暮らしますので」

「えっ本当?」

「うん」

「そうしてくれると安心だわ」

「じゃ、そろそろ行くね」

「ええ」

「警察から連絡があればすぐにお知らせします」

「わかったわ」

「シュン…まだ16時だから病院に行こう」

「えっ…いいよ、明日行くから」

「病院って?どうしたの?」

「シュン、私を助ける時にケガしたの」

「えっ…どこを⁈」

「大した事ありませんので」

「大した事あるでしょ」

「そうなの⁈地曽田さん病院に行きなさい」

「ほら…シュン行こ!」

「…う…うん」


シュンを病院に連れて行き手当てをしてもらって2人はマンションに帰った。

夜になると心配していた秘書と専務が駆けつけてくれた。
無事を見届けると安心して帰って行った。



シュンとスミはベッドに横になった。


「シュンと一緒にベッドに入るの久しぶりだね」

「そうだね」

「落ち着くなぁ…」

「…俺さ、あいつからスミの言葉の録音を聞かされたんだけど…無理矢理だったんだよね?」

「あ…うん。言ったら離婚届を書くって言われたから。それに私の飲み物に睡眠薬を入れられてて…起きたら家だった…」

「そうだったのか…どこにもアザはないようだけど暴力振るわれなかった?」

「…う…うん」

「それならよかったけど…あいつは許せない‼︎」

「うん。早く捕まって欲しい…」

「もしかしたら俺とスミが逃げ出せずに焼け死んでると思ってるかも知れない」

「そうよね。あの状況だったらそう思うよね…じゃあさすがにもう現れないかな」

「一応気をつけといて。明日から俺仕事に行くけど絶対に1人では外に出ないで」

「うん、わかった」


スミはシュンの腕枕で安心して眠った。



その頃…深くキャップを被りマスクをした裕二は都内の古いホテルに居た。


クソーッ!!
あいつら死んでなかったんだな!!!


放火して実家の近くに潜んでいた裕二はシュンがスミを助け出すところを見ていたのだ。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

処理中です...