プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第2章

94話 真実

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スミの実家に着き、部屋へ通してもらうとスミの母親に裕二が隠していた遺言書を見せた。


「遺言書?誰の?」

「読んでみて下さい」

「ええ…」


母親が読み始めると顔色が変わってきた。


「こっ、これ…主人の…?え?何これ⁈」

「それがご主人が書いた本物の遺言書です」

「え⁈じっ…じゃあ今まで持っていた遺言書は⁈」

「偽物です」

「偽物って…」

「昨日お借りしたご主人の書いた書類と遺言書2通、それから柳本裕二が書いた書類を持って筆跡鑑定してもらってわかりました。それがこの結果です」


シュンは鑑定結果を見せた。


「え?裕二さんが書いた書類も持って行ったってどういう事?」

「柳本裕二が偽造してたんです。今までの遺言書の文字と柳本直筆の文字が一致したんです」

「え…そっ…そんな…」


母親はショックのあまり倒れそうになり慌ててシュンが支えた。


「大丈夫ですかっ⁈」

「え…ええ…それで…この本物の遺言書はどこにあったの?」

「柳本グループの会社内のロッカーの中です。隠されてあったんです」

「何ですって…⁈」


母親は本物の遺言書を読み返し涙を流していた。


“柳本グループは長女柳本スミ もしくは柳本スミの心から信頼できる夫(岡田裕二以外)に託す”


「あなた…ごめんなさい…これがあなたの望みだったのね…」

「勝手に自分の名前に書き換えるなんて許される事じゃありません」

「完全に騙されていたわ。主人は裕二さんを信頼してたんだと思ってたけど、その逆だったのね。許せない‼︎」

「お母さんスミは本当に幸せそうでした?」

「えっ…ええ…」

「本当ですか?もしかしたら柳本に操られていたかも知れません。あいつはそういう奴です」

「スミを…連れ戻さなくちゃ‼︎」

「僕が行ってきます」

「待って。私も行く‼︎」


そして2人へ裕二の家に向かった。



その頃、スミにキスを拒まれた裕二は頭に血が上りグラスやお皿を投げつけていた。


「俺の言う通りにしろって言ったよな~‼︎クソスミが!拒みやがって‼︎手錠だけじゃダメだな」


裕二はスミの両足を縛り始めた。


「やめてっ」

「うるさい!」


裕二はスミの頬を思い切り平手で殴った。


「俺に逆らうとどうなるかわかってないのかね~」

「裕二…どうして…こんなふうになっちゃったの…?」

「え?元々こんなんですけど?俺を怒らせなかったらいたって普通ですよ」


…確かに昔はケンカもしなかった…
…怒ったら急変する人だったなんて…


スミの両足を縛り終えると裕二はズボンを脱ぎ始めた。


「え…なっ…何してるの⁈」


裕二はニヤニヤしながら床にスミを押し倒した。


「お前の場合は脱ぐの下だけでいいからな」

「えっ…⁈ちょっ…ちょっと‼︎」

「子作りしましょう」

「嫌っ‼︎やめてよっ‼︎」


スミは必死に抵抗した。


「大人しくしてろ‼︎ぶん殴るぞ‼︎」


すると抵抗するスミにかけられている手錠が裕二の顔面に思い切り当たった。


「イッテーッ!!!」

「あっ…」

「こっ…こいつ」


裕二は立ち上がりスミを蹴ろうとした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。


「クソッ…誰だこんな時間に」


インターホンのモニターを見るとスミの母親の姿があった。


「げっ…マジかっ…」

「お母さん…」


裕二はインターホン越しに少し待ってもらうように言った。


スミの顔を見るとさっき殴った頬が赤く腫れていた。


「お前は出かけてるって事にするから静かにしてろよ」


するとスミの口にガムテープを巻きいつもの部屋に閉じ込めた。


「物音でも立てたらどうなるかわかってるだろうな⁈静かにしてろよ!いいな?」


スミは軽く頷いた。

裕二は急いでズボンを履き玄関に行った。
母親を通してドアを閉めようとすると、ドアの隙間にシュンが足を挟んで踏み込んだ。


「おっ…お前…何で⁈」

「地曽田さん入りましょう」


母親とシュンはリビングに行った。


「ちょっ…ちょっとお義母さん!どうしてこいつも一緒なんですか⁈」

「スミはどこなの?」

「えっ…今ちょっと出かけてます」

「どこに行ってるんだ⁈」

「知らねーよ‼︎」


えっ…シュン⁈


シュンの声に気付いたスミはドアに耳を当てた。


「スミはすぐに帰って来るの⁈」

「えっ…どうしてですか?」

「話があるから、スミが帰って来て話すわ」

「あっ…そういや遅くなるって言ってました」


嘘だな…

そう思ったシュンは周りを見渡した。


「じゃあ…もうここで話すわ。地曽田さんあれ出して」

「はい」


母親は本物と偽物の遺言書をシュンから受け取ると裕二に渡した。


「え…こっ…これ…」


なっ…何でこの遺言書がここに…


裕二は隠していた本物の遺言書を見て目を疑った。


「今まで私が持っていた遺言書はあなたが書いた物ね⁈」

「え…」

「会社を自分の物にしたいからそんな偽造して…立派な犯罪よ‼︎」

「僕は…知りません…」

「え?」

「またシラを切るのか⁈」

「お前が何か仕組んだんだろ⁈スミと俺がやり直したからって‼︎」

「何だと⁈」


すると母親が裕二を思い切り引っ叩いた。


「なっ、何するんですか‼︎」

「これ見なさい」


鑑定結果を裕二に見せた。


「スミの父親とお前の筆跡を見てもらって鑑定した結果だ」

「…そ…そんな」

「今までよくも騙してくれたわね‼︎」

「、、、、、、」


裕二は必死に言い訳を考えるが何も思いつかず黙っていた。


「もうここまで証拠があるんだ。認めろ‼︎」


すると何が吹っ切れたかのように裕二は笑い出した。


「…何笑ってる…」

「あなた!ふざけてるの⁈」


裕二は床に座り込み笑い転げた。


「だったら何だよ‼︎別に支障ないだろ‼︎会社だって上手く行ってる方だし」

「そういう問題じゃない」

「大体あの親父がいけないんだ…俺以外に託すなんて書くから‼︎」

「親父?ちょっと‼︎何て言い草なの‼︎」

「スミの夫である俺に普通託すだろ‼︎」

「よっぽど信用されてなかったのね‼︎あなた主人に何か嫌われるような事したんでしょ‼︎」

「別に。ただスミが貸して欲しいって言ってるって嘘ついて何度も金借りたぐらい?それくらいかな~」

「なっ…何ですって⁈」


シュンは怒りを抑えきれず裕二に殴りかかった。


「クソッ!何するんだよ‼︎」

「お前みたいなクズを少しでも信じた俺がバカだった」

「私もよ。あなたみたいな人を養子なんかにして…」

「騙される方がバカなんだよ‼︎」

「スミはどこだ?」

「出かけてるんじゃ…?」

「いいえ、家のどこかに居るはずです」

「居ないって言ってんだろ‼︎それにスミとは別れないからな!スミも俺と別れないって言ってんだ‼︎」

「絶対に許しません‼︎それにスミだってこの事知ったら別れるって言うに決まってるでしょ‼︎」


『ガタンッ』


リビングの奥の部屋から物音が聞こえた。


チッ…あいつ!!


「何?今の音?」


シュンは物音が聞こえた部屋に行こうとすると裕二から腕を掴まれた。


「離せ!」

「どこ行くんだよ‼︎俺ん家だろ‼︎」

「スミの家だろ‼︎」


シュンは裕二を殴り倒しリビングの奥の部屋に走って行った。





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