94 / 102
第2章
94話 真実
しおりを挟むスミの実家に着き、部屋へ通してもらうとスミの母親に裕二が隠していた遺言書を見せた。
「遺言書?誰の?」
「読んでみて下さい」
「ええ…」
母親が読み始めると顔色が変わってきた。
「こっ、これ…主人の…?え?何これ⁈」
「それがご主人が書いた本物の遺言書です」
「え⁈じっ…じゃあ今まで持っていた遺言書は⁈」
「偽物です」
「偽物って…」
「昨日お借りしたご主人の書いた書類と遺言書2通、それから柳本裕二が書いた書類を持って筆跡鑑定してもらってわかりました。それがこの結果です」
シュンは鑑定結果を見せた。
「え?裕二さんが書いた書類も持って行ったってどういう事?」
「柳本裕二が偽造してたんです。今までの遺言書の文字と柳本直筆の文字が一致したんです」
「え…そっ…そんな…」
母親はショックのあまり倒れそうになり慌ててシュンが支えた。
「大丈夫ですかっ⁈」
「え…ええ…それで…この本物の遺言書はどこにあったの?」
「柳本グループの会社内のロッカーの中です。隠されてあったんです」
「何ですって…⁈」
母親は本物の遺言書を読み返し涙を流していた。
“柳本グループは長女柳本スミ もしくは柳本スミの心から信頼できる夫(岡田裕二以外)に託す”
「あなた…ごめんなさい…これがあなたの望みだったのね…」
「勝手に自分の名前に書き換えるなんて許される事じゃありません」
「完全に騙されていたわ。主人は裕二さんを信頼してたんだと思ってたけど、その逆だったのね。許せない‼︎」
「お母さんスミは本当に幸せそうでした?」
「えっ…ええ…」
「本当ですか?もしかしたら柳本に操られていたかも知れません。あいつはそういう奴です」
「スミを…連れ戻さなくちゃ‼︎」
「僕が行ってきます」
「待って。私も行く‼︎」
そして2人へ裕二の家に向かった。
その頃、スミにキスを拒まれた裕二は頭に血が上りグラスやお皿を投げつけていた。
「俺の言う通りにしろって言ったよな~‼︎クソスミが!拒みやがって‼︎手錠だけじゃダメだな」
裕二はスミの両足を縛り始めた。
「やめてっ」
「うるさい!」
裕二はスミの頬を思い切り平手で殴った。
「俺に逆らうとどうなるかわかってないのかね~」
「裕二…どうして…こんなふうになっちゃったの…?」
「え?元々こんなんですけど?俺を怒らせなかったらいたって普通ですよ」
…確かに昔はケンカもしなかった…
…怒ったら急変する人だったなんて…
スミの両足を縛り終えると裕二はズボンを脱ぎ始めた。
「え…なっ…何してるの⁈」
裕二はニヤニヤしながら床にスミを押し倒した。
「お前の場合は脱ぐの下だけでいいからな」
「えっ…⁈ちょっ…ちょっと‼︎」
「子作りしましょう」
「嫌っ‼︎やめてよっ‼︎」
スミは必死に抵抗した。
「大人しくしてろ‼︎ぶん殴るぞ‼︎」
すると抵抗するスミにかけられている手錠が裕二の顔面に思い切り当たった。
「イッテーッ!!!」
「あっ…」
「こっ…こいつ」
裕二は立ち上がりスミを蹴ろうとした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
「クソッ…誰だこんな時間に」
インターホンのモニターを見るとスミの母親の姿があった。
「げっ…マジかっ…」
「お母さん…」
裕二はインターホン越しに少し待ってもらうように言った。
スミの顔を見るとさっき殴った頬が赤く腫れていた。
「お前は出かけてるって事にするから静かにしてろよ」
するとスミの口にガムテープを巻きいつもの部屋に閉じ込めた。
「物音でも立てたらどうなるかわかってるだろうな⁈静かにしてろよ!いいな?」
スミは軽く頷いた。
裕二は急いでズボンを履き玄関に行った。
母親を通してドアを閉めようとすると、ドアの隙間にシュンが足を挟んで踏み込んだ。
「おっ…お前…何で⁈」
「地曽田さん入りましょう」
母親とシュンはリビングに行った。
「ちょっ…ちょっとお義母さん!どうしてこいつも一緒なんですか⁈」
「スミはどこなの?」
「えっ…今ちょっと出かけてます」
「どこに行ってるんだ⁈」
「知らねーよ‼︎」
えっ…シュン⁈
シュンの声に気付いたスミはドアに耳を当てた。
「スミはすぐに帰って来るの⁈」
「えっ…どうしてですか?」
「話があるから、スミが帰って来て話すわ」
「あっ…そういや遅くなるって言ってました」
嘘だな…
そう思ったシュンは周りを見渡した。
「じゃあ…もうここで話すわ。地曽田さんあれ出して」
「はい」
母親は本物と偽物の遺言書をシュンから受け取ると裕二に渡した。
「え…こっ…これ…」
なっ…何でこの遺言書がここに…
裕二は隠していた本物の遺言書を見て目を疑った。
「今まで私が持っていた遺言書はあなたが書いた物ね⁈」
「え…」
「会社を自分の物にしたいからそんな偽造して…立派な犯罪よ‼︎」
「僕は…知りません…」
「え?」
「またシラを切るのか⁈」
「お前が何か仕組んだんだろ⁈スミと俺がやり直したからって‼︎」
「何だと⁈」
すると母親が裕二を思い切り引っ叩いた。
「なっ、何するんですか‼︎」
「これ見なさい」
鑑定結果を裕二に見せた。
「スミの父親とお前の筆跡を見てもらって鑑定した結果だ」
「…そ…そんな」
「今までよくも騙してくれたわね‼︎」
「、、、、、、」
裕二は必死に言い訳を考えるが何も思いつかず黙っていた。
「もうここまで証拠があるんだ。認めろ‼︎」
すると何が吹っ切れたかのように裕二は笑い出した。
「…何笑ってる…」
「あなた!ふざけてるの⁈」
裕二は床に座り込み笑い転げた。
「だったら何だよ‼︎別に支障ないだろ‼︎会社だって上手く行ってる方だし」
「そういう問題じゃない」
「大体あの親父がいけないんだ…俺以外に託すなんて書くから‼︎」
「親父?ちょっと‼︎何て言い草なの‼︎」
「スミの夫である俺に普通託すだろ‼︎」
「よっぽど信用されてなかったのね‼︎あなた主人に何か嫌われるような事したんでしょ‼︎」
「別に。ただスミが貸して欲しいって言ってるって嘘ついて何度も金借りたぐらい?それくらいかな~」
「なっ…何ですって⁈」
シュンは怒りを抑えきれず裕二に殴りかかった。
「クソッ!何するんだよ‼︎」
「お前みたいなクズを少しでも信じた俺がバカだった」
「私もよ。あなたみたいな人を養子なんかにして…」
「騙される方がバカなんだよ‼︎」
「スミはどこだ?」
「出かけてるんじゃ…?」
「いいえ、家のどこかに居るはずです」
「居ないって言ってんだろ‼︎それにスミとは別れないからな!スミも俺と別れないって言ってんだ‼︎」
「絶対に許しません‼︎それにスミだってこの事知ったら別れるって言うに決まってるでしょ‼︎」
『ガタンッ』
リビングの奥の部屋から物音が聞こえた。
チッ…あいつ!!
「何?今の音?」
シュンは物音が聞こえた部屋に行こうとすると裕二から腕を掴まれた。
「離せ!」
「どこ行くんだよ‼︎俺ん家だろ‼︎」
「スミの家だろ‼︎」
シュンは裕二を殴り倒しリビングの奥の部屋に走って行った。
12
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
苺のクリームケーキを食べるあなた
メカ喜楽直人
恋愛
その人は、高い所にある本を取りたくて本棚と格闘しているサリを助けてくれた人。
背が高くて、英雄と称えられる王族医師団の一員で、医療技術を認められて、爵位を得た素晴らしい人。
けれども、サリにだけは冷たい。
苺のクリームケーキが好きな教授と真面目すぎる女学生の恋のお話。
ムカつく偏屈ヒーローにぎりぎりしながら、初恋にゆれるヒロインを見守ってみませんか。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる