93 / 102
第2章
93話 鑑定依頼
しおりを挟む専務はシュンの手から取り読み始めた。
「どういう事だ…」
「スミさんの父親の遺言書ですね…えっ?」
専務は何度も読み返した。
「これ…柳本のこと一切書いてませんが…それどころか…」
「…うん」
「えっ…でもスミさんの父親の遺言書には柳本に会社を任せるって書いてあったんですよね?だから今社長の座にいるんじゃ…」
「専務、あいつが書いた書類を今からコピー出来る?」
「は…はい」
専務は裕二が書いた書類を探しに行った。
シュンはロッカーを閉め鍵をかけた後、遺言書を見返していた。
遺言書
遺言者 柳本慎一は本遺言書により以下の通り遺言する
第一条 妻 柳本道子に次の財産を取得させる
①土地
所在 東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番地 地積◯◯㎡
②建物
所在 東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番地
家屋番号◯番◯種類居宅
床面積1階◯◯㎡
2階◯◯㎡
第二条 長女 柳本スミに以下の遺言者名義の預貯金を取得させる
・◯◯銀行◯◯支店 定期預金 口座番号◯◯◯◯
・A株式会社の株式 数量◯◯株
・B株式会社の株式 数量◯◯株
(株)柳本グループは長女柳本スミ もしくは柳本スミの心から信頼出来る夫(岡田裕二以外)に託す
遺言者 柳本慎一 ㊞
専務から裕二の筆跡がある書類のコピーを何枚かもらうとシュンはスミの実家に行った。
「地曽田さん…」
「度々すみません」
「どうしたの?」
「今日はお願いがあって来たんですが」
「何?」
「あの…何でもいいんですが、お父様が書いた物…ありますか?」
「え?主人が書いた物?遺言書じゃなくて?」
「はい」
「会社の書類とかならあるけど」
「それでいいです。それと…この前見せてもらった遺言書を貸して頂けないでしょうか?」
「え?どうして⁈」
「調べたい事があるんです‼︎今はまだはっきりしていませんので詳しい事は言えませんが…」
「どういう事?」
「はっきりわかり次第すぐにお伝えしますのでお願いします‼︎」
頭を下げるシュンを見て母親は書類と遺言書を取りに行きシュンに渡した。
「なぜだかわからないけど…そこまで頭下げられたら貸すしかないわね。あなたは悪用する人じゃないからいいわよ。その代わり何で必要だったかはちゃんと教えてよ」
「わかりました。ありがとうございます‼︎」
シュンは急いで家に帰った。
家に着くとテーブルの上に裕二が書いた書類とスミの母親から借りた遺言書、そしてスミの父親が書いた書類とロッカーに入っていた遺言書を並べた。
しばらく見比べていたシュンはある事に気付いた。
スミの父親が書いた(柳)の文字が個性ある書き方でロッカーに入っていた遺言書の(柳)の文字と一緒だったのだ。
間違いない…
スミのお父さんが書いた本物の遺言書はこれだ…
この遺言書はあいつが書いたやつだ…
確信したシュンだが裕二は絶対ごまかすに違いないと思い、翌日筆跡鑑定の依頼に行った。
夕方、鑑定の結果が出たと連絡がありシュンは急いで依頼所へ行った。
「まずこちらが鑑定結果です」
すると鑑定師がシュンに1枚の紙を渡した。
確認するとシュンの思った通りだった。
「内容からいくとこちらが偽造ですよね?」
「…はい」
「遺言書の偽造は刑罰に問われますよ」
「そうですね」
それ以上鑑定師は何も言わなかった。
「ありがとうございました」
その足でシュンは急いでスミの実家に向かった。
こんなやり方…絶対に許さない!!
絶対に!!
9
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる