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第2章
90話 信じたくない
しおりを挟む夕方、地曽田グループに着いた裕二はすぐに社長室に向かった。
よーし!
ムカつくけどここは演技やったるか!!
ノックをして中へ入るとシュンは険しい顔をしていた。
「失礼します」
「スミと一緒にいるのか?」
「は…はい」
「本当にスミとやり直すのか⁈」
「はい」
「どうして⁈お前スミに何をした?」
「ひどいですね~何もしてませんよ」
「じゃあ何で急に⁈スミに会わせろ!本人から話を聞かないと納得できない‼︎」
「スミは地曽田さんには会いたくないみたいです。散々振り回した挙げ句こんな形になって合わす顔がないんでしょう」
「そんな…嘘だ」
「スミは本当に僕とやり直すって言ったんです。泣いて謝ってきましたよ」
「…嘘だろ」
「本当ですよ。初めは僕、離婚届持って会いました。正直もう離婚に応じようと思って…でも出会った時の話や結婚した後の話をしていたらスミから謝ってきました。私が間違っていたと…その場でスミは離婚届を破ったんです」
「そ…そんな…」
「僕のこと愛してるとまで言ってましたよ」
「…信じられない…」
「僕、嬉しくて録音しましたけど聞かせましょうか」
すると裕二は携帯を取り出し再生した。
“裕二のこと…愛…し…て…る…”
「えっ…スミ…」
「本当に言ってるでしょ~嬉しくて録音する為に2回言ってもらいましたので少し照れてる感じですよね」
シュンは頭が混乱していた。
「もし僕たちが離婚したらお義父さんを裏切ることになってたし良かったです。お義母さんも安心されてましたしね」
「…スミと話しさせて欲しい」
「地曽田社長にも色々お世話になったみたいだし、僕は直接スミから話しさせたいんですが本人が断固拒否してまして…本当にすみません」
「家に行ってもいいですか?」
「…スミのこと本当に思うなら、もうそっとしといて下さい。お願いします。僕がスミを幸せにしますので。今まで以上に尽くすつもりです」
そう言って裕二は帰って行った。
スミ…本当なのかよ…
本当にあいつとやり直すのか…?
信じたくない…
納得できないシュンはどうしたらいいかわからなくなった。
シュンは21時過ぎに会社を出るとスミの実家に行った。
「地曽田さん!」
「夜分遅くにすみません」
「どうしたの?スミから連絡きた?」
「スミではなくご主人と会って話しました」
「裕二さんと⁈」
「はい…」
「で?何て?」
「本当にやり直すみたいです」
「それ聞いて…地曽田さんは?」
「正直信じたくありません」
「…そうよね。でもスミが決めた事でしょ」
「ですが…」
「私はスミが幸せならそれでいいの。今まで私はスミを否定ばかりしてきたけど、これからはスミの決めた事は受け入れるつもりよ。だから…」
「え…」
「だからスミのことは忘れてちょうだい」
「、、、、」
「実は私、さっき帰って来たんだけど…スミと裕二さんの様子を見に行ってたの。夕食一緒に食べたけどスミも幸せそうだったわ。後片付けも裕二さん手伝ってたし…2人を見て安心したわ」
「えっ…スミが幸せそうだった…?」
「あなたならもっといい人たくさん居るはずよ」
「あ…あの…失礼します…」
ショックを受けたシュンはしばらく車の中で動けなかった。
スミに電話をかけるが相変わらず繋がらない。
もうあいつと一緒に居るスミを心配しなくていいのか…?
あいつを信用していいのか…?
スミ…俺だってスミが幸せならそれでいい…
だけど…急にスミのこと忘れろって言われても…
忘れられない…
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