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第2章
86話 嵌められたスミ
しおりを挟む「じゃ又連絡しますね」
「これ…俺が持ってていいの?」
「はい。紙に書いてある番号は覚えましたので。その番号の書類入れがあればきっとその鍵ですから」
「わかったけど専務…あんまり無理しないで。あいつにバレたら何されるかわからないよ」
「わかってます。ですが柳本が許せないんです。このまま柳本が社長だったら会社は潰れます。柳本の会社だったら潰れようが関係ないんですが、スミさんの会社ですよね?」
「専務…ありがとう」
「鍵の事がバレるのも時間の問題ですので私も急いで探します」
話が終わると専務はスミに挨拶して帰って行った。
「スミ、気遣わせてごめんね」
「ううん」
「何を話したか聞かないの?」
「うん。シュンのこと信じてるから。それと今日、母から連絡あったんだけど裕二と話したんだって」
「それで?」
「離婚はしないって。跪いて号泣してたらしい…」
「え…」
「さすがに母もそれ以上は何も言えなかったみたい…」
「スミ、俺明日知り合いの弁護士に会って相談してくるよ」
「…うん」
「俺とスミのこともあるから弁護士立てても長引くと思う。それにその間は俺たち会うのは無理だと思うけど…」
「だよね…今日ネットで調べたら2~3年長引いてた人もいた…私と裕二はそれ以上かも」
「とりあえず明日詳しく聞いて来るから、その後どうするか考えよう」
「うん、わかった」
「じゃ、俺もそろそろ帰るよ」
「えっ…」
「何?帰って欲しくない?」
「べ…別に…」
するとシュンはスミの後ろに回りネックレスを付けた。
「えっ…これ…」
「似合ってる」
「私に?」
「うん。今日取引先に行った帰りにスミに似合いそうなネックレス見つけたから」
「ありがとう‼︎すごく可愛い」
「よかった。じゃ明日は来れないから明後日来るよ」
「うん」
「明後日は一緒に夕食を食べよう」
「うんっ‼︎」
そして2人はキスをしてシュンは帰って行った。
翌日昼過ぎに裕二はスミのマンションの近くに車を停め見張っていた。
そして3時間が経った。
クソーッ!スミ…家に居るのかよ?
時間帯か…?明日から夕方からにするか?
でも夜はあいつが来るかも知れないしな…
明日はもうちょっと早い時間から見張るか…
裕二が諦めて会社に戻ろうとするとマンションの入り口からスミが出て来た。
ス…スミ!!
裕二は慌てて車から降りるとスミの方へ駆け寄りスミの腕を掴んだ。
「えっっ⁈」
「スミ!」
「ゆ、裕二⁈どうしてここに⁈」
「取引先がここの近くでさ。そしたらスミの姿が見えたから。ここに住んでるの?」
「、、、、、」
「今からどこか行くの?」
「…ちょっとコンビニに」
「そ、そっか…ちょっと話さない?この近くのカフェでもいいし」
「何を話すの?離婚してくれないんでしょ?」
「あの時は地曽田が居たから。ちゃんと話聞くから」
「信じられない」
「あの後お義母さんとも話してわかったんだ。俺は離婚しないの一点張りで自分本位だった。これ以上スミに嫌われたくないからちゃんとスミの話を受け入れるよ」
「裕二…本当に?」
「うん。離婚届も持って来てるからカフェに行って書くよ。スミの家に行くのは嫌だろ?」
「…じゃ近くにカフェがあるから」
2人へカフェに入った。
「何か飲む?あっ…スミはカフェオレか」
「…うん」
「相変わらずカフェオレ好きだなぁ」
「…うん」
「出逢った頃…覚えてる?カフェで俺がコーヒー溢したの。スミは慌てて拭いてくれたよね」
「…そうだったね」
「俺が熱出した時は一晩中俺のこと看病してくれたし。そんな優しいスミに惚れたんだよな…」
裕二…どうしちゃったの…?
「あの、裕二…あんなに離婚に応じてくれなかったのにどうして急に…」
「だから言っただろ?スミに嫌われたくないしスミには幸せになって欲しいから。俺が間違ってたよ。お義父さんには申し訳ないけど…」
「裕二…ありがとう…」
「ごめんね。今まで傷つけて…」
裕二…
「私の方こそごめんね」
「スミ…」
「ちょっ、ちょっとお手洗い行って来る」
「うん」
スミが席を外すと裕二はポケットから睡眠薬を取り出し、スミのカフェオレに入れた。
化粧室に行ったスミは涙が出てきた。
これで裕二と離婚出来る…
戻って来たスミがイスに座ると裕二は笑顔でスミのことをじっと見つめていた。
「どうしたの?」
「あっ…いや…色々あったけどスミとの結婚生活は幸せだったなぁと思って…」
「…そうだね」
「スミ…全然飲んでないじゃん。氷が溶けるよ」
「あっ…うん」
裕二はカフェオレを勢いよく飲むスミを見て心の中で笑っていた。
「裕二…あの、離婚届持って来てるんだよね?」
「…うん」
「…まだ書かないの?」
「もうちょっと話してから…」
離婚届など持って来てなかったのだ。
「スミ…俺スミに酷い事たくさんして来たし、ちゃんと慰謝料払うからね」
「そんな…いいよ。いらない」
「いいって‼︎」
「裕二…」
「スミ、1つだけお願いしていい?」
「何?」
「俺のこと愛してるって言って」
「え…?ど、どうして?」
「考えてみたらスミに愛してるって言われた事ないし…最後くらい言って。そしたら諦めつくから」
「え…でも…」
スミの意識が朦朧としてきた事に気づいた裕二は携帯を取り出して録音の準備をした。
「言ってくれたら離婚届すぐ書くから」
「え…ほ…本当…?」
「うん、ほらっ、裕二のこと愛してる‼︎はい言って」
「…裕二のこと…愛…して…る…」
裕二はその言葉だけバッチリ録音した。
「スミ?」
「…ん」
「どうした?」
「何だか…急に…眠たくなっ…て…」
するととうとうスミは眠ってしまった。
裕二はスミを抱え車に乗せると家に向かった。
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