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第2章
80話 父の姿
しおりを挟む裕二は車に乗ると何度もハンドルを殴った。
地曽田の奴‼︎
どこまで俺を怒らせるんだ‼︎
義母に任せてたらいつになるかわからないし、俺が動くしかないな‼︎
スミの居場所を突き止めて力ずくでも連れ戻してやる‼︎
次は絶対に逃がさないからな‼︎
裕二は自分が動く事を決めた。
その頃、家に着いたシュンに母親と何を話したのかスミがしつこく聞いていた。
「もおっ、何で教えてくれないの?」
「俺たちのことだよ…どうやって出逢ったかとか…」
「じゃあ何でシュンだけ呼んだの⁈」
「知らないよ…」
スミの父親の不倫の話などとても言えなかった。
「そう言えば、遺言書見せてくれた」
「え…どうして?もしかしてお父さんの願いを見せてシュンに諦めさせようとしてたの⁈」
「そうじゃないけど…お義母さんの気持ちもわかるような気がする…」
「え…」
「お義母さんには少し時間が必要だと思う。考えたら俺たち自分たちのことばかり考えてた…だから焦らずにいよう」
「シュン…」
「俺たちの気持ちは変わらないでしょ?」
「うん。絶対変わらない‼︎」
「じゃ、きっと上手くいくよ!」
そう言うとシュンはスミを優しく抱きしめた。
翌日、シュンが仕事をしていると秘書から電話が入った。
「もしもし、どうした?」
「社長っ‼︎会長が倒れて…病院に運ばれました」
「えっ、会長が⁈どこの病院⁈」
「中央病院です」
「わかった。ありがとう」
シュンは急いで病院へ向かった。
40分後、病院に着いたシュンは受付で病室を確認して走った。
病室に着くと中から継母が出て来た。
「シュン…」
「お父さんは⁈」
「心臓発作で倒れたのよ」
「心臓発作⁈」
「あなたには言うなと言われてたから知らなかったと思うけど、お父さん心臓が弱いのよ。今回は発見が早かったからよかったけど…もう少し発見が遅れてたら危なかったらしいわ」
「…そんな」
「今、落ち着いてるから入ってあげて。私は今後の事で先生に話を聞きに行って来るから」
シュンが病室に入ると父親が起き上がろうとした。
シュンに弱った姿を見せたくなかったのだ。
「父さんっ、寝てないと‼︎」
「…お前…来たのか」
「当たり前でしょ‼︎」
「仕事は?」
「そんな事より、どうして黙ってたんだよ‼︎心臓が悪かったなんて…」
「…お前には知られたくなかった」
「もう強がらないでいいから」
「、、、、、」
「父さん…」
「何だ」
「今回倒れたのって…俺のせいでもあるよね」
「、、、、、」
「…ごめん」
「正直、お前に会社任せてから自分の体の事も含めホッとした。会社に行かなくて済むようになって体の調子も良かったんだ。発作もなくなり薬も減ったし…」
「じゃあ、俺が辞めたから父さんは…」
「昔は会社まとめるのも楽勝だったんだけどな。歳を感じるよ」
シュンは罪悪感でいっぱいだった。
「お前…彼女とは上手くいってるのか?」
「…うん」
「まぁ、お前は離婚したからな。彼女も柳本と離婚したのか?」
「…まだ」
「そうか…そう簡単には出来ないんだろうな。でもお前が会社捨ててまで好きになった人だからな。絶対離すんじゃないぞ。父さんの負けだ…」
「俺、会社に戻るよ」
「そ、そうか…すまんな。仕事中だったんだろ。行きなさい…もう私は大丈夫だから」
「そうじゃなくて地曽田グループに戻る。父さんはもう会社に来なくていいから」
「シュ…シュン、本当か⁈」
「だからって彼女とは別れないから」
「も…もちろん。家にも戻って来てくれるよな?」
「え?家に?」
「彼女が離婚するまででいいから…戻って来てくれ。シュン…頼む」
「…わかったよ、父さん」
弱々しい父の姿を初めて見たシュンは断ることが出来なかった。
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