プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
80 / 102
第2章

80話 父の姿

しおりを挟む

裕二は車に乗ると何度もハンドルを殴った。


地曽田の奴‼︎
どこまで俺を怒らせるんだ‼︎
義母に任せてたらいつになるかわからないし、俺が動くしかないな‼︎
スミの居場所を突き止めて力ずくでも連れ戻してやる‼︎
次は絶対に逃がさないからな‼︎


裕二は自分が動く事を決めた。


その頃、家に着いたシュンに母親と何を話したのかスミがしつこく聞いていた。


「もおっ、何で教えてくれないの?」

「俺たちのことだよ…どうやって出逢ったかとか…」

「じゃあ何でシュンだけ呼んだの⁈」

「知らないよ…」


スミの父親の不倫の話などとても言えなかった。


「そう言えば、遺言書見せてくれた」

「え…どうして?もしかしてお父さんの願いを見せてシュンに諦めさせようとしてたの⁈」

「そうじゃないけど…お義母さんの気持ちもわかるような気がする…」

「え…」

「お義母さんには少し時間が必要だと思う。考えたら俺たち自分たちのことばかり考えてた…だから焦らずにいよう」

「シュン…」

「俺たちの気持ちは変わらないでしょ?」

「うん。絶対変わらない‼︎」

「じゃ、きっと上手くいくよ!」


そう言うとシュンはスミを優しく抱きしめた。



翌日、シュンが仕事をしていると秘書から電話が入った。


「もしもし、どうした?」

「社長っ‼︎会長が倒れて…病院に運ばれました」

「えっ、会長が⁈どこの病院⁈」

「中央病院です」

「わかった。ありがとう」


シュンは急いで病院へ向かった。


40分後、病院に着いたシュンは受付で病室を確認して走った。
病室に着くと中から継母が出て来た。


「シュン…」

「お父さんは⁈」

「心臓発作で倒れたのよ」

「心臓発作⁈」

「あなたには言うなと言われてたから知らなかったと思うけど、お父さん心臓が弱いのよ。今回は発見が早かったからよかったけど…もう少し発見が遅れてたら危なかったらしいわ」

「…そんな」

「今、落ち着いてるから入ってあげて。私は今後の事で先生に話を聞きに行って来るから」


シュンが病室に入ると父親が起き上がろうとした。
シュンに弱った姿を見せたくなかったのだ。


「父さんっ、寝てないと‼︎」

「…お前…来たのか」

「当たり前でしょ‼︎」

「仕事は?」

「そんな事より、どうして黙ってたんだよ‼︎心臓が悪かったなんて…」

「…お前には知られたくなかった」

「もう強がらないでいいから」

「、、、、、」

「父さん…」

「何だ」

「今回倒れたのって…俺のせいでもあるよね」

「、、、、、」

「…ごめん」

「正直、お前に会社任せてから自分の体の事も含めホッとした。会社に行かなくて済むようになって体の調子も良かったんだ。発作もなくなり薬も減ったし…」

「じゃあ、俺が辞めたから父さんは…」

「昔は会社まとめるのも楽勝だったんだけどな。歳を感じるよ」


シュンは罪悪感でいっぱいだった。


「お前…彼女とは上手くいってるのか?」

「…うん」

「まぁ、お前は離婚したからな。彼女も柳本と離婚したのか?」

「…まだ」

「そうか…そう簡単には出来ないんだろうな。でもお前が会社捨ててまで好きになった人だからな。絶対離すんじゃないぞ。父さんの負けだ…」

「俺、会社に戻るよ」

「そ、そうか…すまんな。仕事中だったんだろ。行きなさい…もう私は大丈夫だから」

「そうじゃなくて地曽田グループに戻る。父さんはもう会社に来なくていいから」

「シュ…シュン、本当か⁈」

「だからって彼女とは別れないから」

「も…もちろん。家にも戻って来てくれるよな?」

「え?家に?」

「彼女が離婚するまででいいから…戻って来てくれ。シュン…頼む」

「…わかったよ、父さん」


弱々しい父の姿を初めて見たシュンは断ることが出来なかった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

処理中です...