プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第2章

79話 母の迷い

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「先程はお邪魔しました」

「遅くにごめんなさいね」

「いいえ。どうされました?」

「明日仕事終わってからでいいから家に来てくれない?」

「あ…はい。ではスミと」

「あなた1人で来て」

「え?わ…わかりました」


電話を切るとスミに携帯を返した。


「お母さん何だって?」

「明日、家に来てって」

「明日?何でシュンに言うんだろ」

「1人で行って来るから」

「え?シュンだけ?」

「うん。仕事終わったら行って来るね」

「何か嫌なこと言われても気にしないでね」

「大丈夫だよ」



翌日、仕事が終わったシュンはスミの実家に行った。


「ごめんなさいね。また来てもらって」

「いいえ。呼んでもらえて嬉しいです」


すると母親は遺言書をシュンに渡した。


「え?これは?」

「夫が亡くなる前に書いた遺言書よ。読んでみて」

「はい…」


シュンは読み始めた。


「夫は仕事命の人だったの。それも私とスミに苦労させたくない為に必死だったのはわかってた…」

「家族思いのいいご主人だったんですね」

「でも…スミは知らないけど、1度だけ30歳の時にあの人は私たちを裏切ったの」

「え?」

「不倫してたのよ。3年も」

「どうしてわかったんですか?」

「ホテルに入って行くのを友人が見て私に知らせてくれたの。私は急いでホテルに乗り込んだわ。そしたら相手の女にマンションまで買ってやってた…」

「え…」

「でも結局主人はその女より私とスミを選んだ…それから主人は私とスミに尽くしてくれた。ただ…その女は何度か家に乗り込んで来たのを覚えてる。スミはまだ小さかったから覚えてないだろうけど…あの時は大変だったわ」

「酷いですね」

「今でもあの女の顔覚えてる」

「お義母様はご主人のこと嫌にはならなかったんですか?」

「ならなかったわ。誰でも過ちはあるでしょ。あの人は家族を捨てなかったし過ちも1度きりだった。そうじゃなければ別れてた…同じ過ちを繰り返す人は病気なのよ。一生治らない…」

「そうですね」

「あ…ごめんなさいね。こっちの話ばかりして。結局何が言いたいかって言うと…裕二さんは浮気2回目なんでしょ?」

「は…はい。僕の知る限りでは」

「裕二さんは病気よ。まだ本人に確かめてないからあれだけど…でもあなたが嘘つくような人には見えないから」

「自分は嘘が1番嫌いです」

「そんな感じよね。遺言書は読んだ?」

「はい、読ませてもらいました」

「どう思った?会社を裕二さんに任せるって書いてあるのを見て…」

「…お義父様は裕二さんを余程信頼されてあったんですね」

「そうね。私もこれ読んでびっくりしたわ。あの人が裕二さんに会社を任せたいくらい信頼してたなんて…」

「そんなに仲良かったんですか?」

「そうなんでしょうね。スミが裕二さんと結婚してすぐに主人は病院に入ったから、裕二さん…頻繁に病室に行っていたんでしょうね…」

「…そうなんですか…」

「裕二さんの浮気も許せないけど主人の願いを考えると正直、今どうしたらいいのかわからなくて…今言える事はあなた度スミのこと反対ではないの。だからって賛成でもない…わかってくれる?」

「はい。遺言書の事もあるし…お義母様の気持ちもわかります。時間が必要って事ですね」

「ええ。理解してくれてありがとう」


話が終わりシュンが帰った後、スミの母親は裕二を呼び出した。


「お邪魔しますっ」

「座って」

「はいっ」


裕二は母親がスミを捕まえて家に戻す為に呼ばれたと思いウキウキしていた。


「あなた…」

「はいっ!」

「浮気してるの?」

「え…」

「スミが一緒に居る人の元奥さんと…」

「えっ…」


元奥さん…?あいつら別れたのか⁈
スミがチクったんだな!!


「それに以前も秘書と浮気してたそうね」

「ち、違いますっ‼︎何言ってるんですか⁈またスミが言ったんですか⁈俺と別れたい為にまたそんな嘘を‼︎」


人は嘘をつくと言葉が多くなり声が大きくなってムキになる…


「あなたこそ嘘言ってるんじゃないの?」

「嘘なんかついてませんっ。スミが誤解してるんです。僕も言い寄られて辛かったんです。最後にはストーカーされるし…」

「どっちの女?」

「ひ…秘書です」

「何もないの?」

「1度だけ…キスを無理矢理されました。ちょうどその時スミに見られたみたいで…」

「じゃあ、元奥さんの方は?」

「そ…それは…相談されてたんです。その人のご主人とスミが不倫してるのを知って…僕はスミの夫だからスミのことも色々聞かれて…ただそれだけです」

「じゃあ…あの人が嘘ついてるって言うの⁈地曽田さんはそんな人には見えなかったけど」

「えっ⁈あっ…あいつに会ったんですか⁈」

「…ええ。さっきも来てたわ」


クッソー!あいつー!
出しゃばりやがって!!!


「お義母さんっ、あいつのことは信用しない方がいいですよ‼︎うちの会社を潰しかけたんですから‼︎」

「え?会社を?」

「そうですよ‼︎とんでもない奴です‼︎」

「どうして潰そうとしたの⁈」

「それは…僕のことが嫌だったんでしょう」

「それだけで?」

「はっ、はい!僕が浮気したとか嘘つくし離婚させたいだけなんですよ!」

「何かよくわからなくなってきたわ…もう帰ってちょうだい…1人にさせて」

「お義母さん…わかりました。僕のこと信じて下さいよ。僕はお義父様に信頼されてたんですから、それだけは忘れないで下さいね」


そう言い残して裕二は帰って行った。







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