プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
78 / 102
第2章

78話 初対面

しおりを挟む
 後日、百家神社の宮司とお兄さんのお父さんが今後の話をするという話を聞いた。

 宮司さんは百家くんのお祖父ちゃんだ。宮司ってお宮の代表者の事らしい。

 彗煉寺ではお兄さんとしばらく話をして、時間になったので帰ることを伝えると、

「あの、君は携帯電話持ってるの?」

「うん、持ってるよ。アドレス交換する?」

「出来たら、そうしてもらえないかと思って」

「いいよ、家族以外でアドレス交換するのはこれで二人目」

 私の言葉にクッと笑うと、お兄さんはいぶし銀のような渋い銀色の薄い二つ折りの携帯を取り出した。どっかの携帯会社が限定販売で出していたやつに似てる。

 アドレスを交換して携帯をポケットに入れると、その上を大切そうに手で押さえて私を正面から見た。

「ありがとう。今日は会えてよかった」

「私も会えて嬉しかった。じゃあね」

 手を振って別れる。

 待ち合わせの場所に歩いて行く途中、お母さんとお祖父ちゃんも丁度用事が終わって本堂から出た所だったので声をかける。

「おお、麻美、暑いのにどこにおったんかの。いや~今日は暑いのお」

 お祖父ちゃんは首に下げたタオルで顔を拭いている。

「えっと、知り合いに会ったから木陰で話をしてたの」

「知り合い?珍しいのお、アルバイトの道の駅の人か?」

「うん」

「本堂の中は涼しかったし、和菓子とお茶も頂いたよ、麻美も一緒にくれば良かったねって話てたの」

 お母さんは帽子を被りながらそう言った。

「え~いいなあ。喉乾いたから自販でジュース買って車に乗るね」

「そうしなさい。ほら、そこの休憩所の右に置いてあるわよ」

 緑茶のペットボトルを購入して飲みながら家に帰った。

 
 

 家に帰ってから、お兄さんから『今日は話を聞いてくれてありがとう』というめメールがきたので。私は『会えて良かった。色々教えてくれてありがとう』と返事を返した。

 それから百家くんにもお兄さんに彗煉寺で会った事をメールで知らせると直ぐに電話がかかってきた。

 「白狐に東神家の事を注意するように言われたから、祖父ちゃんに東神家の事を相談したんだ。それで祖父ちゃんが動いてくれた。祖父ちゃんも前に向こうにはお祓いを拒否されたけど、ずっと気になってたらしい。この間、東神家に祖父ちゃんが行った時、俺も付いて行ったんだ」 

「えっそうなの、どんな感じだった?」

「悪いモノが引き寄せられて来ていた。井戸の障りは家自体に憑いてる感じだな。取り敢えず、外からの邪気は跳ね返し、中の悪いモノは出せない様に護符を貼りつけて、結界石を置いて帰ったけど」

 百家くんが先に動いてくれたらしい。頼りになる人だ。お寺でも白狐が私の周りで跳ね回っていたけど、どうやら私がお兄さんに会った事も私が連絡するよりも先に白狐から聞いていたらしい。

 白狐はお兄さんが悪いモノに憑かれないように守ってくれているようだ。

「東神家には塙宝も一緒に行った方がいいと白狐が言ってる。来てくれるか?」

「うん、行ってもいいなら行かせてもらうよ。でも、関係者じゃないのに行っても大丈夫かな?」

「白狐はお前は関係者だって言ってるけど、確かに東神家にとっては神社の者じゃないのに来てるのは変に感じるかもしれないから、巫女としてついて来てもらうよ。装束をそれなりにして行けば見た目問題ないだろ。そのつもりだったし」

「え、う、うん?」

 正直、そんな事を言われるとも思っていなかったので、ものすごく驚いた。

「今年の年末は巫女さんのアルバイトするんだろ、先に練習出来ていいじゃないか?」

「そんな簡単にいうけど、着付けとか教えてもらえるの?」

「伯母さんに頼んでおくよ。いつもアルバイトの子達にも教えてるから大丈夫。行く前に少し練習すればいいよ。ああ、それに祖父ちゃんが来てくれるならアルバイト代を出すって言ってた」

「えっ、アルバイト代まで貰えるの?」

「そりゃ巫女さんとしてついて来てもらうし、塙宝は俺の神力を上げてくれる相手だから、そのあたりも家で話をしてる」

 百家という家がどんな歴史を辿ってきた家なのかよく知らないけど、不思議な力を代々持ち続けてきた一族なのだろうと何となく推測した。でなければ常識から外れたこういう話は普通に受け入れられはしない。

「なんか至れり尽くせりで申し訳ないかんじ」

「お前はちゃんと分かってないけど、俺の貴重な相棒だからな」

「相棒かあ・・・」

「何だよ、そのあんまり嬉しそうじゃない返事は」

「そんなことないよ、聞きなれない響きだから噛み締めてただけ。東神家の事で動いてくれて正直すごく嬉しいし感謝してるよ。ありがとう」

「え、そ、そうか。何だよ、突然。ほんとお前って面白いやつだな」

 私がお礼を言うと、百家くんは突然あわあわした。百家くんこそ面白いと思う。

 次の日に冷房の効いた部屋で衣装合わせをしようと百家くんが言ってきたので、お母さんには少し早いけど巫女さんのアルバイトの為に着付けを習いに行くと言ったら、コンタクトレンズにしていきなさいと言われた。

 ついでに私の適当に切ってある髪の毛をカット用のハサミで揃えてくれた。

「麻美も今度から美容室で髪をちゃんとしてもらおうね。三つ編みもそろそろ卒業かな」

「えっ何で?」

「だってお母さん高校生で三つ編みしてる女の子見たこと無いし、逆にその眼鏡と三つ編み目立ってるよ」

 うっと痛い所を突かれた。逆に目立っているとは、それも困る。

「眼鏡はもっと薄いレンズで作れるそうだから今度作りに行こうか、今は可愛い眼鏡もたくさんあるし」

「そんなに私の為に散財しなくていいのに」

「まあっ、娘の為に使わなくていつ使うの?それにその程度は何でもないよ。お母さんにもっと頼ってね」

「・・・ありがとう、お母さん」

 そうして、新しい眼鏡は直ぐに作ってもらった。お母さんの行動力は凄いと思う。

 眼鏡のレンズは薄く、ちょっとモード系というのか、おしゃれな眼鏡を買ってもらった。眼鏡一つで印象が変わるのでとても驚いた。

 前後して百家神社に巫女装束の着付け等を習いに何回か行くことになった。百家くんの伯母さんはとても面白くて優しい人だ。そして、おやつは美味しかった。

 


 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

処理中です...