プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第2章

71話 スミの怒り

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スミが社長室を出ると専務が待っていた。


「…大丈夫でしたか?」

「は、はい…ずっとここに?」

「あのっ…今日は仕事が暇なのでっ…」

「そうですか」

「送りましょうか?」

「えっ…でも」

「気を遣わなくていいですからね」

「はっ…はい。ありがとうございます」


スミは専務に送ってもらう事にした。


「真っ直ぐマンションに向かっていいですか?」

「あっ…ちょっと寄ってもらいたい所があるんですが」

「はい」


専務はスミの言う通りに車を走らせた。


「ここです」

「あっ…はい。ここは?」

「家です。通帳やカード置いたままだったので」

「でも…鍵持ってるんですか?」

「鍵を失くした時のこと考えて庭に隠してたんです」

「じゃあ私はここで待ってますね」


スミは庭に行き花壇から鍵を取ると玄関のドアを開けて中に入った。


リビングにはカップ麺の容器があちこちに散らばっており悪臭がしていた。
床には汚らわしい雑誌が散乱している。

気持ちが悪くなったスミは急いで必要な物を持ち出して専務の車に乗った。


「お待たせしました」

「はい。じゃマンションに行きますね」

「お願いします」

「それにしても驚きました。地曽田家とあまりにも近くて…」

「はい…そうですね」

「ところで今日、社長は?」

「朝から仕事の面接に行っています」

「…そ…そうですか」

「あの…聞いていいですか?」

「はい?」

「主人はどんな手を使って地曽田グループを潰そうとしたんですか?」

「…あり得ないですよ」

「教えて下さい」

「地曽田グループの取引先を奪いました。それと地曽田グループの社員まで…」

「え…でも地曽田グループの取引先がそう簡単に柳本グループに行かないでしょ…一体どうやって…」

「…地曽田社長とスミさんのことを話したみたいです。ホテルでの写真まで見せて」

「…何それ…あり得ない」

「はい…」

「裕二のせいでシュンはどれだけ苦しい思いしたか…」

「スミさん…柳本社長と早く別れた方がいいですよ」

「はい…」

「会社の事もあるから難しいとは思いますが何か方法はあるはずです。私で良ければ協力します」

「ありがとうございます。その前にやる事があるので…やる事やったら黒川専務に協力してもらうかも知れません」

「わかりました」


スミは裕二のことを怖いなど全然思わなかった。
むしろ殺意を抱くほど怒りが湧いてきた。
もう待てないと思ったスミは、明日実家に行って全て話そうと決めた。



夕方17時過ぎ、スミが夕食の準備をしているとシュンが帰って来た。


「おかえり」

「…ただいま」

「どうだった?」

「全滅…」

「え…何で?シュンを採用しないなんて信じられない」

「逆に俺だからだろう…雇いにくいんだと思う…」

「そっか…今までずっと働いて来たんだし、しばらく何もしなくていいんじゃない?」

「それは出来ない…」

「どうして?お金の事なら心配しなくていいから。私、今日通帳とカード持って来たし」

「え…?家に行ったの?」

「うん…専務さんに連れてってもらった」     

「専務に?え?どうやって連絡取ったの?」

「…実は今日、柳本グループに行ったから」

「何しに?」

「ちょっとあの人に話があって」

「あいつのとこに行ったの⁈」

「…うん。もう余計な事して欲しくなくて」

「あいつに会う時は俺も一緒に行くって言ったよね?何で勝手に行くんだよ‼︎」


シュンは初めてスミに怒鳴った。


「え…ご、ごめんなさい」

「また何かされたらどうするんだよ!」

「会社なら何も出来ないと思って…」

「それは…スミが思ってるだけだろ」

「…うん。ごめん」

「もう1人であいつのとこへは行かないで」

「…わかった」


シュンは優しくスミを抱きしめた。


「シュン…私、明日実家に行って全部話して来ようと思う」

「全部って?」


「今まであの人からされて来た事。それとシュンとの事も…」









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