プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
67 / 102
第2章

67話 自分の人生は自分で決める

しおりを挟む

シュンが別荘に着いたのは24時を回っていた。
部屋を覗いたらスミは既に眠っていた。


スミ…ずっと傍にいるよ…
ずっと…


スミの頭を撫でながら疲れていたシュンはそのままベッドにもたれ寝てしまった。


午前6時過ぎ、スミが目を覚ますと隣にシュンが眠っていた。


「えっ、シュン⁈」

「ん…」

「どうしてここに⁈」

「…あ…そのまま寝ちゃったのか…」

「びっくりした。スーツのままだけど…昨夜は遅かったんだね…」

「…うん。今何時?」

「6時10分だよ」

「そろそろ準備しないと…」

「そうだね」

「あっ、今日夕方には帰るからデートしよう」

「本当?やった~!」

「じゃ、また後でね」


シュンはシャワーを浴び会社へ行った。


会社に着き社長室に向かっているとドアの前に秘書が立っていた。


「岸田秘書…」

「あっ、社長!おはようございます」

「おはよう。どうした?」

「それが…中に会長と奥さんが…」

「え…」


シュンが中に入ると会長と由希が座っていた。


「シュンッ‼︎会社辞めるってどういう事よ‼︎」

「、、、、」

「座りなさい」

「…今日私がここに来たのは整理する為です。後は会長…お願いします」

「お前っ!女の為に会社を捨てるのか‼︎」

「自分の為でもあります。今まで逆らう事なく言う通りにしてきたつもりです。結婚だってそうです」

「それは…会社の為に」

「そうよ‼︎うちの会社があるから地曽田グループもここまで大きくなったのよ‼︎シュンには私が必要なのよっ‼︎」

「自分の人生は自分で決めたい。それを彼女が教えてくれたんだ」

「シュン!誰のおかげでここまで来れたと思ってるんだ‼︎」

「結局父さんは俺より会社なんだよ。だから好きでもない人と結婚させるし。言う通りにしてきた俺がバカだったよ」

「シュンッ‼︎」

「…もういい。辞めたいなら辞めろ」

「お義父さん、ダメですよ!」

「会社は私が見る」

「わかりました」

「シュンッ…ダメよっ…」

「会社の事は全て把握してる。お前は整理する必要ないから今すぐ出て行け‼︎」

「…はい」

「それと…全部置いて行け」

「え?何をですか?」

「わからないのか?」

「…そうですね」


シュンは車の鍵とクレジットカードを全部テーブルの上に置いて出て行った。


「シュンッ!待ってっ‼︎」

「由希さん!」

「でも、いいんですか⁈」

「そう長くは持たないだろう」

「えっ?」

「もう車も金ないんだ。あいつは…」

「シュンなら別で働くんじゃ…」

「地曽田グループの社長だったんだぞ。どこも雇う所はないだろ。念の為どこにも働けないようにはするつもりだがな」

「じゃあ…戻って来るって事ですか?」

「必ず戻って来る」

「戻って来るまでどのくらいかかりますか?」

「金もない、働き口もないなら1ヶ月…いやそれより早いだろう。あいつの事だから女には世話にならないだろうし」

「…そうですね」

「だから安心しなさい」

「…はい」


そうよね…シュンは必ず戻って来る…
あの女と居るだけでもムカつくけど…
お金がなかったら上手くいくはずない…
私はただシュンが戻って来てくれればいい…


由希は少しホッとした。


シュンが会社を出て行こうとすると秘書が慌てて走って来た。


「社長っ…」

「…岸田秘書、ごめん…」

「本当に辞められるんですか⁈」

「…うん」


その時、秘書の携帯が鳴った。


「あ…会長からです」

「出ていいよ」

「はい、お疲れ様です会長」

「今どこだ?」

「えっ…と…外です」

「シュンと会ったか?」

「いっ、いいえ…」

「そうか。あいつはもう会社には来ないからスケジュール等の報告は私にしなさい」

「は…はい」

「それと、あいつはもう金もカードもないから手助けするなよ。わかったか?」

「え…」

「おい、聞いてるのか⁈」

「あっ、はい…わかりました」


電話を切った後、秘書はシュンを悲しげな表情で見た。


「な…何だよ」


すると秘書は財布を取り出し1万円札をシュンに渡そうとした。


「何⁈」

「本当はもっと渡したいんですが今これしかなくて…」

「ちょっ…ちょっと‼︎いらないよ」

「だって社長はお金もカードもないって会長が…」

「あ~、だから手助けするなって言われた?」

「…はい」

「こんな事したら会長を裏切る事になるよ」

「でも…」

「岸田秘書、ありがとう」


シュンは財布からキャッシュカードを取り出した。


「それは?」

「俺個人のお金。会長は知らないけどちゃんと俺だって持ってるよ」

「社長っ…安心しました」

「だから俺の心配しないでこれからは会長を頼む」

「…社長が居ないのに僕…やって行けるか…」

「大丈夫だよ。岸田秘書なら」

「…ところで車は返してないですよね?」

「あ…そうか、車がないんだった」

「えっ⁈返したんですか⁈」

「うん。岸田秘書…?」

「…わかりました。送りますよ!」

「本当⁈ありがとう。軽井沢までだよ」

「…わかってますよ‼︎」

「あっ、その前に中村不動産に寄って欲しいんだけど…」

「中村不動産ですか⁈またどうして⁈」

「別荘にもずっと居るわけにいかないから都内に住むとこ借りようと思って」

「本当ですか⁈その方がいいと思います!」


そして物件を決め17時前に別荘に着いた。

車の音を聞いてスミが外に出ると、シュンと秘書が車から降りて来た。


「あっ、岸田さん…こんにちは」

「スミさん、どうも」

「驚いた?送ってもらったんだ」

「そ…そうなの?」

「じゃ、僕はそろそろ戻らないと。行きますね!」

「ああ。ありがとう」

「はい。スミさん、また…」


そう言うと秘書は帰って行った。


「えっ、シュン?車は?」

「なくなっちゃった」

「え?どういう事?明日から会社までどうやって行くの?」

「後で話すから。とりあえず出掛けよう」

「うん…でもどうやって?」

「タクシーで街まで出よう」


シュンはタクシーを呼び街へ出掛けた。

2人は街を歩きながら暗くなるまで楽しんだ。


そして小さなレストランに入り食事した。


「こうやって外で一緒に食事するの久しぶりだね」

「そうだね。なかなか近くにお店ないしね」

「…スミ、明日別荘を出よう」

「えっ?」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...