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第2章
67話 自分の人生は自分で決める
しおりを挟むシュンが別荘に着いたのは24時を回っていた。
部屋を覗いたらスミは既に眠っていた。
スミ…ずっと傍にいるよ…
ずっと…
スミの頭を撫でながら疲れていたシュンはそのままベッドにもたれ寝てしまった。
午前6時過ぎ、スミが目を覚ますと隣にシュンが眠っていた。
「えっ、シュン⁈」
「ん…」
「どうしてここに⁈」
「…あ…そのまま寝ちゃったのか…」
「びっくりした。スーツのままだけど…昨夜は遅かったんだね…」
「…うん。今何時?」
「6時10分だよ」
「そろそろ準備しないと…」
「そうだね」
「あっ、今日夕方には帰るからデートしよう」
「本当?やった~!」
「じゃ、また後でね」
シュンはシャワーを浴び会社へ行った。
会社に着き社長室に向かっているとドアの前に秘書が立っていた。
「岸田秘書…」
「あっ、社長!おはようございます」
「おはよう。どうした?」
「それが…中に会長と奥さんが…」
「え…」
シュンが中に入ると会長と由希が座っていた。
「シュンッ‼︎会社辞めるってどういう事よ‼︎」
「、、、、」
「座りなさい」
「…今日私がここに来たのは整理する為です。後は会長…お願いします」
「お前っ!女の為に会社を捨てるのか‼︎」
「自分の為でもあります。今まで逆らう事なく言う通りにしてきたつもりです。結婚だってそうです」
「それは…会社の為に」
「そうよ‼︎うちの会社があるから地曽田グループもここまで大きくなったのよ‼︎シュンには私が必要なのよっ‼︎」
「自分の人生は自分で決めたい。それを彼女が教えてくれたんだ」
「シュン!誰のおかげでここまで来れたと思ってるんだ‼︎」
「結局父さんは俺より会社なんだよ。だから好きでもない人と結婚させるし。言う通りにしてきた俺がバカだったよ」
「シュンッ‼︎」
「…もういい。辞めたいなら辞めろ」
「お義父さん、ダメですよ!」
「会社は私が見る」
「わかりました」
「シュンッ…ダメよっ…」
「会社の事は全て把握してる。お前は整理する必要ないから今すぐ出て行け‼︎」
「…はい」
「それと…全部置いて行け」
「え?何をですか?」
「わからないのか?」
「…そうですね」
シュンは車の鍵とクレジットカードを全部テーブルの上に置いて出て行った。
「シュンッ!待ってっ‼︎」
「由希さん!」
「でも、いいんですか⁈」
「そう長くは持たないだろう」
「えっ?」
「もう車も金ないんだ。あいつは…」
「シュンなら別で働くんじゃ…」
「地曽田グループの社長だったんだぞ。どこも雇う所はないだろ。念の為どこにも働けないようにはするつもりだがな」
「じゃあ…戻って来るって事ですか?」
「必ず戻って来る」
「戻って来るまでどのくらいかかりますか?」
「金もない、働き口もないなら1ヶ月…いやそれより早いだろう。あいつの事だから女には世話にならないだろうし」
「…そうですね」
「だから安心しなさい」
「…はい」
そうよね…シュンは必ず戻って来る…
あの女と居るだけでもムカつくけど…
お金がなかったら上手くいくはずない…
私はただシュンが戻って来てくれればいい…
由希は少しホッとした。
シュンが会社を出て行こうとすると秘書が慌てて走って来た。
「社長っ…」
「…岸田秘書、ごめん…」
「本当に辞められるんですか⁈」
「…うん」
その時、秘書の携帯が鳴った。
「あ…会長からです」
「出ていいよ」
「はい、お疲れ様です会長」
「今どこだ?」
「えっ…と…外です」
「シュンと会ったか?」
「いっ、いいえ…」
「そうか。あいつはもう会社には来ないからスケジュール等の報告は私にしなさい」
「は…はい」
「それと、あいつはもう金もカードもないから手助けするなよ。わかったか?」
「え…」
「おい、聞いてるのか⁈」
「あっ、はい…わかりました」
電話を切った後、秘書はシュンを悲しげな表情で見た。
「な…何だよ」
すると秘書は財布を取り出し1万円札をシュンに渡そうとした。
「何⁈」
「本当はもっと渡したいんですが今これしかなくて…」
「ちょっ…ちょっと‼︎いらないよ」
「だって社長はお金もカードもないって会長が…」
「あ~、だから手助けするなって言われた?」
「…はい」
「こんな事したら会長を裏切る事になるよ」
「でも…」
「岸田秘書、ありがとう」
シュンは財布からキャッシュカードを取り出した。
「それは?」
「俺個人のお金。会長は知らないけどちゃんと俺だって持ってるよ」
「社長っ…安心しました」
「だから俺の心配しないでこれからは会長を頼む」
「…社長が居ないのに僕…やって行けるか…」
「大丈夫だよ。岸田秘書なら」
「…ところで車は返してないですよね?」
「あ…そうか、車がないんだった」
「えっ⁈返したんですか⁈」
「うん。岸田秘書…?」
「…わかりました。送りますよ!」
「本当⁈ありがとう。軽井沢までだよ」
「…わかってますよ‼︎」
「あっ、その前に中村不動産に寄って欲しいんだけど…」
「中村不動産ですか⁈またどうして⁈」
「別荘にもずっと居るわけにいかないから都内に住むとこ借りようと思って」
「本当ですか⁈その方がいいと思います!」
そして物件を決め17時前に別荘に着いた。
車の音を聞いてスミが外に出ると、シュンと秘書が車から降りて来た。
「あっ、岸田さん…こんにちは」
「スミさん、どうも」
「驚いた?送ってもらったんだ」
「そ…そうなの?」
「じゃ、僕はそろそろ戻らないと。行きますね!」
「ああ。ありがとう」
「はい。スミさん、また…」
そう言うと秘書は帰って行った。
「えっ、シュン?車は?」
「なくなっちゃった」
「え?どういう事?明日から会社までどうやって行くの?」
「後で話すから。とりあえず出掛けよう」
「うん…でもどうやって?」
「タクシーで街まで出よう」
シュンはタクシーを呼び街へ出掛けた。
2人は街を歩きながら暗くなるまで楽しんだ。
そして小さなレストランに入り食事した。
「こうやって外で一緒に食事するの久しぶりだね」
「そうだね。なかなか近くにお店ないしね」
「…スミ、明日別荘を出よう」
「えっ?」
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