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第2章
66話 予想通り
しおりを挟むこの日20時過ぎ、スミが待つ別荘に着いたシュンはシャワーを浴びて夕食を済ませ、その後2人でソファーに座って話し始めた。
「昨日は遅くまで飲んだの?」
「うん」
「そっか…」
「スミ?」
「何?」
「離婚したら会社はスミが任されるの?」
「どうだろ…私は社長なんて無理だし、しばらくは母親が会社に出て来ると思う」
「…そうか」
「だけど…母親は遺言書の事があるから離婚には猛反対すると思う。もちろんわかってもらえるまで説得するけど」
「、、、、」
「なかなかお互い上手くいかないね」
「…スミ」
「ん?」
「スミに謝らないといけない事がある」
「何?」
「柳本グループを買収しようとした…」
「えっ⁈どうして⁈」
「どうしても柳本が許せなくて。まさかスミの会社だったなんて…本当にごめん」
「…それで会社は…今大丈夫なの?」
「うん。心配しなくていい」
「シュン…そこまでさせてごめん」
「スミが謝る事じゃないよ。買収する前にわかって本当によかった…」
「あの人が何かしてきたのね?そうでしょ⁈」
「…スミは何も考えなくていい」
「でもっ…」
「それと明日だけど…遅くなると思う」
「また飲みに行くの?」
「いや。家に戻って話し合って来る」
「話し合うって…奥さんと?」
「会長と…だから先に寝てて」
「…わかった。だけどその後こっちに戻って来るのも大変でしょ。無理して戻って来なくても…」
「大丈夫だよ」
話を終えた2人はそれぞれの部屋に行った。
シュンは考える事が色々あって朝まで眠れなかった。
翌日、仕事が終わりシュンは会長の家に向かった。
「よく来たな。話ってもちろん買収の事だろ?」
「…はい」
「結局どうする事にしたんだ?」
「…買収しません」
「そうか、という事はわかってるな‼︎」
「すみません、父さん…」
「あんな会社、手に入らなくたっていい。これからもっと大きくする為に今まで通り私と由希さんを必要とすればいいんだ。お前も家に戻って本来の形に戻るだけだ」
「違うんです。そういう事じゃなくて…」
「何が違うんだ?」
「父さんと由希には頼りません。今よりもっと会社を大きくしていきます。だから…」
「どういう事だ?」
「離婚したいんです。約束しておきながら自分勝手な事はわかっています。どうかお願いします」
シュンは深く頭を下げた。
「何言ってるんだ‼︎約束守らないなんてお前らしくないぞ‼︎約束は約束だろ!」
「今回だけ、お願いします」
「ダメだ‼︎」
「どうしてもです…か?」
「いくら頼んでも許さん‼︎早く家に戻って来るんだぞ‼︎わかったか⁈」
「、、、、」
「シュンッ!!」
「…どうしても無理なら会社辞めます」
「なっ…何だと⁈お前、何言ってる⁈」
「縛られた人生をこれからも送るくらいなら辞めます」
「シュン!正気かっ⁈」
「…はい。そういう事なので。すみません」
シュンは会長の部屋を出た後、由希の所に行った。
「シュン‼︎戻って来たのね!」
「由希…ごめん」
シュンは由希に離婚届を渡した。
「えっ…これ…」
「俺は記入してるから」
「なっ…何言ってるの⁈えっ…もしかして買収したの⁈」
「…買収はしない」
「じゃあ離婚しない約束でしょ‼︎」
「こういう男なんだ俺は…。本当ごめん」
「嫌よっ!離婚しない!!」
「由希!」
「こんなに愛してるのに‼︎」
「俺は愛してないんだ。今まで1度も…」
「それでもいいから…」
「いつまで仮面夫婦のままでいるつもりだよ。もういいでしょ?」
「…ダメ」
「由希…1度冷静に考えてみて。今度離婚届を取りに来るよ」
そう言ってシュンはその場を離れた。
「イヤーッッ!!!」
由希は頭に血が上り、部屋をめちゃくちゃにした。
絶対に別れないから!!絶対!!
由希は離婚届をビリビリに破った。
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