プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第2章

63話 知りたくなかった真実

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翌朝、会長は地曽田グループに向かった。

社長室ではシュンと秘書が打ち合わせをしている。


「柳本グループの現在の資産からするとあの会社は1週間も持たないと思う」

「そうなんですか⁈どこからの情報なんですか?」

「専務だよ。黒川専務に教えてもらってる」

「黒川専務に⁈そうですか‼︎」

「そろそろ買収の手続きをするから準備を始めていてくれ」

「わかりました」


すると会長が入って来た。


「会長っ」

「お疲れ様です」

「悪いが君は外してくれ」

「わかりました」


秘書が出て行くと会長はソファーに腰を下ろした。


「どうされたんですか?」

「私との約束の事だけど…わかるな?」

「約束って…柳本グループの件ですか?」

「ああ。もし買収出来なかったら離婚しないって事だ」

「はい」

「絶対だな‼︎」

「はい。その代わり買収したら離婚して僕の好きなようにします。何も口出ししないで下さい」

「もちろん」

「来週には買収しますから」

「来週⁈そんな早くか⁈」

「早くケジメつけたいんです」

「そうか…買収した後、後悔しなければいいが」

「どうしてですか?」

「ちょっと妙な噂を聞いてな…」

「噂?どんな事ですか?」

「柳本グループは柳本の奥さんの親の会社らしい」

「え?何言ってるんですか?柳本の会社でしょ?」

「柳本は婿養子みたいだぞ」

「ま…まさかぁ…そんなはずないでしょ…誰がそんな事を…」

「ただの噂ならいいがちょっと気になってな。シュンが私との約束をわかってるならいいんだ」

「ちょっと待って。もしかして柳本から聞いたんじゃ?買収されないようにわざと嘘を」

「…そうだ。柳本から聞いた」

「じゃあ信じない方がいいですよ」

「私はどっちでもいいが、もし本当ならお前はどうするんだ?」

「え…」

「柳本の奥さんと一緒に居るんだろ?本人に聞いてみればいいじゃないか」

「、、、、」


「それだけ伝えたかったんだ。じゃ私は帰るぞ」


そう言うと会長は出て行った。


シュンはスミの実家が西麻布って言っていた事を思い出していた。



仕事が終わるとシュンは急いで別荘に帰った。


「おかえり」

「スミ、ただいま」

「今日は肉じゃが作ったよ。お腹空いた~」

「うん。食べようか」

「いただきまーす」

「、、、、」

「シュン?食べないの?」

「あっ…ううん。食べる。いただきます」


シュンはスミに聞くのが怖かった。


食事を終えるとスミは、シュンの様子がいつもと違う事に気づいた。


「シュン?何かあった?」

「…スミ…ちょっと散歩しない?」

「え?今から?いいけど…」


そして2人は手を繋いで歩く。


「スミ…」

「ん?」

「スミの旧姓って何?」

「え…どうしたの急に」

「知りたくて…」


シュンは違って欲しいと心から願った。


「…柳本…だよ」


シュンは思わず目を閉じた。


「ごめんね。シュンに言ってなかった」

「じ…じゃあご主人は?」

「婿養子…」


柳本が父さんに言った事は本当の事だったんだ…


「シュン?」

「あっ…ごめん」

「そんな驚いた?」

「…うん」

「会社を任せる代わりに婿養子になるように父の遺言書に書いてあったの。だから…」

「じゃ…実際はスミの親族の会社って事なんだね」

「…うん」
 
「創業者は?」

「私の祖父だよ」

「祖父?…好きだった?」

「うん。私おじいちゃんっ子だったから。小さい頃からおじいちゃんに会いに会社に行ってた」

「、、、、」

「シュン?どうしたの?」

「…全然知らなかったから」

「ごめん。別に隠すつもりじゃなかったんだけど…うちの実家に連れて行ってもらう時に話そうとは思ってた」

「、、、、」

「シュン、もしかして今まで話さなかったから怒ってる?裕二が会社任せられてても私はもうあの人とは無理だから…母を何とか説得する。最終手段はもう私が裕二の代わりしていいと思ってる」


スミ…そういう事じゃないんだ…


「別荘に戻ろう…」

「え?もう?」

「うん…」


ダメだ…
柳本グループを買収する事は出来ない…



部屋に戻るとシュンは、柳本グループをここまで暴落させてしまった事の後悔と裕二に対しての悔しさでいっぱいだった。









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