プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
63 / 102
第2章

63話 知りたくなかった真実

しおりを挟む

翌朝、会長は地曽田グループに向かった。

社長室ではシュンと秘書が打ち合わせをしている。


「柳本グループの現在の資産からするとあの会社は1週間も持たないと思う」

「そうなんですか⁈どこからの情報なんですか?」

「専務だよ。黒川専務に教えてもらってる」

「黒川専務に⁈そうですか‼︎」

「そろそろ買収の手続きをするから準備を始めていてくれ」

「わかりました」


すると会長が入って来た。


「会長っ」

「お疲れ様です」

「悪いが君は外してくれ」

「わかりました」


秘書が出て行くと会長はソファーに腰を下ろした。


「どうされたんですか?」

「私との約束の事だけど…わかるな?」

「約束って…柳本グループの件ですか?」

「ああ。もし買収出来なかったら離婚しないって事だ」

「はい」

「絶対だな‼︎」

「はい。その代わり買収したら離婚して僕の好きなようにします。何も口出ししないで下さい」

「もちろん」

「来週には買収しますから」

「来週⁈そんな早くか⁈」

「早くケジメつけたいんです」

「そうか…買収した後、後悔しなければいいが」

「どうしてですか?」

「ちょっと妙な噂を聞いてな…」

「噂?どんな事ですか?」

「柳本グループは柳本の奥さんの親の会社らしい」

「え?何言ってるんですか?柳本の会社でしょ?」

「柳本は婿養子みたいだぞ」

「ま…まさかぁ…そんなはずないでしょ…誰がそんな事を…」

「ただの噂ならいいがちょっと気になってな。シュンが私との約束をわかってるならいいんだ」

「ちょっと待って。もしかして柳本から聞いたんじゃ?買収されないようにわざと嘘を」

「…そうだ。柳本から聞いた」

「じゃあ信じない方がいいですよ」

「私はどっちでもいいが、もし本当ならお前はどうするんだ?」

「え…」

「柳本の奥さんと一緒に居るんだろ?本人に聞いてみればいいじゃないか」

「、、、、」


「それだけ伝えたかったんだ。じゃ私は帰るぞ」


そう言うと会長は出て行った。


シュンはスミの実家が西麻布って言っていた事を思い出していた。



仕事が終わるとシュンは急いで別荘に帰った。


「おかえり」

「スミ、ただいま」

「今日は肉じゃが作ったよ。お腹空いた~」

「うん。食べようか」

「いただきまーす」

「、、、、」

「シュン?食べないの?」

「あっ…ううん。食べる。いただきます」


シュンはスミに聞くのが怖かった。


食事を終えるとスミは、シュンの様子がいつもと違う事に気づいた。


「シュン?何かあった?」

「…スミ…ちょっと散歩しない?」

「え?今から?いいけど…」


そして2人は手を繋いで歩く。


「スミ…」

「ん?」

「スミの旧姓って何?」

「え…どうしたの急に」

「知りたくて…」


シュンは違って欲しいと心から願った。


「…柳本…だよ」


シュンは思わず目を閉じた。


「ごめんね。シュンに言ってなかった」

「じ…じゃあご主人は?」

「婿養子…」


柳本が父さんに言った事は本当の事だったんだ…


「シュン?」

「あっ…ごめん」

「そんな驚いた?」

「…うん」

「会社を任せる代わりに婿養子になるように父の遺言書に書いてあったの。だから…」

「じゃ…実際はスミの親族の会社って事なんだね」

「…うん」
 
「創業者は?」

「私の祖父だよ」

「祖父?…好きだった?」

「うん。私おじいちゃんっ子だったから。小さい頃からおじいちゃんに会いに会社に行ってた」

「、、、、」

「シュン?どうしたの?」

「…全然知らなかったから」

「ごめん。別に隠すつもりじゃなかったんだけど…うちの実家に連れて行ってもらう時に話そうとは思ってた」

「、、、、」

「シュン、もしかして今まで話さなかったから怒ってる?裕二が会社任せられてても私はもうあの人とは無理だから…母を何とか説得する。最終手段はもう私が裕二の代わりしていいと思ってる」


スミ…そういう事じゃないんだ…


「別荘に戻ろう…」

「え?もう?」

「うん…」


ダメだ…
柳本グループを買収する事は出来ない…



部屋に戻るとシュンは、柳本グループをここまで暴落させてしまった事の後悔と裕二に対しての悔しさでいっぱいだった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...