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第2章
58話 地道な行動の結果
しおりを挟む翌朝、会社に着いたシュンが取引先に行く準備をしていると、AP社の社長から電話がかかってきた。
「もしもし、社長」
「地曽田社長…今大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「今日から来なくていいから」
「えっ…どういう事ですか?」
「今日も頭下げに来るつもりだろ?」
「は…はい」
「柳本グループとは取引き止めたから。また君の会社と取引きするよ」
「本当ですか⁈」
「またよろしく頼みます」
「こちらこそよろしくお願いします‼︎ありがとうございます‼︎」
電話を切るとシュンは他の取引先に向かった。
QIグループに着くと社長はシュンをソファーに座らせた。
「もう頭下げなくてもいいから」
「社長…」
「ここまでプライド捨ててる地曽田社長を見てられない。今まで冷たくあしらってすまなかった」
「そんな…信用なくさせた自分が悪いんです!」
「元々よく知らない柳本グループと取引きする事に乗り気じゃなかった。また地曽田グループと取引きさせてもらってもいいかな…」
「もちろんです‼︎ありがとうございます‼︎」
こうして有力な2社が柳本グループと取引きを止め、地曽田グループに戻ってきた。
残りの5社にもシュンは毎日頭を下げに行った。
その地道な行動が結果となり5日後には全社取り戻した。
「社長‼︎良かったですね‼︎やっぱり社長はスゴいです!!」
「まだ終わってない…」
「え?」
「あと…社員と専務がいる」
「呼び戻すんですか?社員はともかく裏切った専務もですか⁈」
「うん。専務次第だけど…あと柳本グループの取引先を全部奪って、最終的には柳本グループを買い取る‼︎」
「本当に潰す気なんですね。いいと思います。柳本グループの取引先も好条件出したら喜んでうちと取引きするはずです」
「そこまで何十社もないと思うから調べてアポ取ってくれる?」
「わかりました」
その頃、柳本グループは慌ただしい様子で裕二と専務が話していた。
「7社ともか⁈」
「はい…」
「どうして急に取引き止められたんだ⁈」
「それは…わかりません」
「今すぐAP社とQIグループだけでも引き留めて来い‼︎」
「えっ、私がですか⁈」
「お前の仕事だろ。何とかあの2社だけは引き留めないと」
「…無理だと思います。地曽田グループと再取引きしてますから」
「なっ…何だと⁈もしかして7社ともか⁈」
「そこまではわかりませんがAP社はそうです」
「お前知ってたのか⁈何で報告しないんだ‼︎」
「…すみません」
「もういい!AP社はいいから残り6社全部行って話つけて来い‼︎」
「…わかりました」
専務は一度は出て行くが取引先には向かわなかった。
車の中で深いため息をついているとシュンから電話が入り、地曽田グループに呼ばれた。
「失礼します」
「仕事中に呼び出してごめん」
「いいえ大丈夫です。私に何か用ですか?」
「専務…戻って来て欲しい」
「えっ」
「会社もどうにか元に戻ってきてるから…専務が必要なんだ…」
「社長!私…裏切ったんですよ。何言ってるんですかっ」
「そうさせたのも自分の責任だから。ただ俺のことがもう無理なら仕方ないけど」
「社長…」
「戻って来ない…?」
専務は涙を浮かべ下を向いていた。
「専務?」
「戻りたいです…また社長の下で働きたいです…」
「本当?」
「ただ…もうちょっと待って下さい。柳本社長のことで気になる事があって」
「気になる事?」
「何かを隠してると思います。それが裏金か不正かわかりませんが、掴みたいんです」
「どうして?」
「色々やり方が酷いんです。それに卑怯なやり方で地曽田グループを貶めたので、私も関わった以上責任持って何かを掴みます。それを確認出来たら証拠を持って戻って来ます」
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