57 / 102
第2章
57話 人間性
しおりを挟むそして日に日に地曽田グループの株は暴落していき1週間が経った。
シュンが社長室で株価を見ていると秘書が入って来た。
「社長!柳本社長ですが、女がいるかも知れません」
「秘書の田中アキとまだ繋がってるのか⁈」
「一応田中アキのことは調べましたが、とっくに辞めて結婚されてるので違うと思います」
「じゃあ新たに別の人と…?」
「一応そっちの弱み握れないかと思い、柳本社長の写真をあらゆるホテルの受付に配って来たんです。そしたら今朝BLホテルから連絡がありました」
「岸田秘書、そこまでしたのか?」
「はい…まさかとは思いましたが。それが昨夜、柳本社長に似た人が女性と来たらしいです。ただ受付の名前が柳本とは書かれてなかったみたいですが本当の名前は記入しないと思いますし…次来た時また連絡してもらいますので、その時は必ず証拠掴みます」
「もし本人だったらとんでもないクズだ…」
「ですね…それより株価がここまで下がるなんて」
「…今日午後から7社に行って来る」
「社長、大丈夫ですか…ここんとこ毎日行ってますよね」
「信用を取り戻さないと…」
「人材はどうします?パートだけでも減らした方が…」
「それはしない。みんな生活があるんだ。こっちの都合で切り捨てはしない」
「…そうですね」
この頃、痺れを効かせた会長は会社に向かっていた。
秘書が出て行くとシュンは再び株価を見て頭を抱えた。
柳本…許さない‼︎
あんな奴のせいで会社が潰れてたまるもんか‼︎
絶対に立ち直ってみせる‼︎
そして…柳本グループを潰す‼︎
シュンは裕二が今までに企んできた事を思い出せば思い出す程、怒りが増してきていた。
しばらくすると会長がすごい剣幕で社長室に入って来た。
「会長!」
「何だこのザマは‼︎会社を潰す気か!!」
「…すみません」
「会社に顔出す気はなかったがここまで来ると限界だ‼︎どうしてこんな事になった⁈株がここまで下がるなんて有り得ない‼︎」
「1番の理由は取引先が急に取引きを止めた事です」
「AP社とQIグループだけだろ!いくらその2社が有力だったとしてもここまで下がるか」
「全部で7社です。後の5社も有力な会社ばかりですので」
「なっ、何⁈7社だと⁈どうして7社も‼︎」
「奪われたんです。柳本グループに」
「柳本グループに⁈」
「はい。専務も、営業部の社員も…」
「なっ…何だと⁈」
「会長…柳本と1度会ってますよね」
「え…」
「会長の部屋で2人で話してたこと知っています」
「お前、もしかして盗み聞きしてたのか⁈」
「…すみません」
「あいつがお前のことで脅してきたんだよ。取引先も渋々2社譲った挙げ句、金まで渡したのに‼︎」
「えっ!会長がAP社とQIグループを⁈それに金まで渡したんですか⁈」
「お前、聞いてたんじゃないのか⁈」
「話は途中までしか聞いてません。それよりどうしてそんな事したんですか⁈」
「あいつマスコミに流しそうだったし会社の為だ。それなのにあいつ‼︎柳本グループ潰してやる‼︎」
「どうやってですか?」
「そっ…それは奪われた物を取り返してからだ」
「今の状態では無理です。うちより柳本グループに信用持たれてますから」
「じゃ、どうするんだ‼︎このままだとこっちが倒産するぞ‼︎」
「そうは絶対にさせません。奪われた物全部取り戻して、柳本グループの取引先も土地も全て奪ってみせます」
「どうやって…」
「今その為に自分は動いてますので見てて下さい」
「…本当だな?」
「はい。もし会長に助けを求めるような事になる時は…その時は責任持って自分が辞めます」
「お前…そこまで…家には戻らないのか⁈」
「…すみません」
「まだあいつの奥さんと一緒に居るのか⁈」
「…はい」
「よくこんな状況であいつの嫁なんかと一緒に居られるな‼︎」
「彼女は何も知らないし悪くありません」
「由希さんも昨日夜中に帰って来てたみたいだし。何してるんだか」
「、、、、」
「まぁいい。こういう状態も長くは続かないだろう。次に私がここに来る時はシュン…わかってるよな?」
「はい…」
「本当は今すぐ柳本グループに怒鳴りこみに行きたい位だが…任せたからな」
そう言って会長は出て行った。
時計を見たシュンは急いで元の取引先だった会社へ行った。
シュンは信用を取り戻す為に奪われた取引先へ毎日頭を下げに行っていたのだ。
この日も7社とも話を聞いてもらえなかったが、AP社の社長だけはシュンの行動に心を打たれて柳本グループに出向いていた。
「社長…すみません。今あいにく柳本は不在でして…」
「君は確か…地曽田グループの専務じゃないか。どうしてここに?」
「お久しぶりです。実は今こちらで働かせてもらっています」
「そ…そうなのか」
「お急ぎでしたら柳本に連絡しましょうか」
「いやいい。伝えといてくれ。取引きは止めると」
「えっ、どうしてですか⁈」
「地曽田グループと再度取引きしようと思ってる。あっち行ったりこっち行ったりしたくないんだが、地曽田社長には負けたよ」
「地曽田社長に…ですか?」
「こっちが冷たい態度取っても嫌な顔せず毎日頭下げに来るんだよ」
「毎日…ですか」
「元々、地曽田グループと取引きしてた時も社長自らよく顔出しに来てたけど、柳本社長は初めの取引きの時だけで後は放置だし…正直柳本社長の人間性がよくわからない」
「そ…そうですね」
「地曽田社長の変な噂は聞いたけど、結局は人間性が1番だと思ったから」
「はい」
「じゃ、そういう事だから」
AP社の社長は帰って行った。
専務は内心、胸を撫で下ろしていた。
ただ、1番有力なAP社が取引きを止めて地曽田グループと再度取引きする事を知ったら裕二はまた何かするかも知れないと思い、この件は裕二に伝えなかった。
6
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる