プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第2章

57話 人間性

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そして日に日に地曽田グループの株は暴落していき1週間が経った。
シュンが社長室で株価を見ていると秘書が入って来た。


「社長!柳本社長ですが、女がいるかも知れません」

「秘書の田中アキとまだ繋がってるのか⁈」

「一応田中アキのことは調べましたが、とっくに辞めて結婚されてるので違うと思います」

「じゃあ新たに別の人と…?」

「一応そっちの弱み握れないかと思い、柳本社長の写真をあらゆるホテルの受付に配って来たんです。そしたら今朝BLホテルから連絡がありました」

「岸田秘書、そこまでしたのか?」

「はい…まさかとは思いましたが。それが昨夜、柳本社長に似た人が女性と来たらしいです。ただ受付の名前が柳本とは書かれてなかったみたいですが本当の名前は記入しないと思いますし…次来た時また連絡してもらいますので、その時は必ず証拠掴みます」

「もし本人だったらとんでもないクズだ…」

「ですね…それより株価がここまで下がるなんて」

「…今日午後から7社に行って来る」

「社長、大丈夫ですか…ここんとこ毎日行ってますよね」

「信用を取り戻さないと…」

「人材はどうします?パートだけでも減らした方が…」

「それはしない。みんな生活があるんだ。こっちの都合で切り捨てはしない」

「…そうですね」


この頃、痺れを効かせた会長は会社に向かっていた。


秘書が出て行くとシュンは再び株価を見て頭を抱えた。


柳本…許さない‼︎
あんな奴のせいで会社が潰れてたまるもんか‼︎
絶対に立ち直ってみせる‼︎
そして…柳本グループを潰す‼︎


シュンは裕二が今までに企んできた事を思い出せば思い出す程、怒りが増してきていた。



しばらくすると会長がすごい剣幕で社長室に入って来た。


「会長!」

「何だこのザマは‼︎会社を潰す気か!!」

「…すみません」

「会社に顔出す気はなかったがここまで来ると限界だ‼︎どうしてこんな事になった⁈株がここまで下がるなんて有り得ない‼︎」

「1番の理由は取引先が急に取引きを止めた事です」

「AP社とQIグループだけだろ!いくらその2社が有力だったとしてもここまで下がるか」

「全部で7社です。後の5社も有力な会社ばかりですので」

「なっ、何⁈7社だと⁈どうして7社も‼︎」

「奪われたんです。柳本グループに」

「柳本グループに⁈」

「はい。専務も、営業部の社員も…」

「なっ…何だと⁈」

「会長…柳本と1度会ってますよね」

「え…」

「会長の部屋で2人で話してたこと知っています」

「お前、もしかして盗み聞きしてたのか⁈」

「…すみません」

「あいつがお前のことで脅してきたんだよ。取引先も渋々2社譲った挙げ句、金まで渡したのに‼︎」

「えっ!会長がAP社とQIグループを⁈それに金まで渡したんですか⁈」

「お前、聞いてたんじゃないのか⁈」

「話は途中までしか聞いてません。それよりどうしてそんな事したんですか⁈」

「あいつマスコミに流しそうだったし会社の為だ。それなのにあいつ‼︎柳本グループ潰してやる‼︎」

「どうやってですか?」

「そっ…それは奪われた物を取り返してからだ」

「今の状態では無理です。うちより柳本グループに信用持たれてますから」

「じゃ、どうするんだ‼︎このままだとこっちが倒産するぞ‼︎」

「そうは絶対にさせません。奪われた物全部取り戻して、柳本グループの取引先も土地も全て奪ってみせます」

「どうやって…」

「今その為に自分は動いてますので見てて下さい」

「…本当だな?」

「はい。もし会長に助けを求めるような事になる時は…その時は責任持って自分が辞めます」

「お前…そこまで…家には戻らないのか⁈」

「…すみません」

「まだあいつの奥さんと一緒に居るのか⁈」

「…はい」

「よくこんな状況であいつの嫁なんかと一緒に居られるな‼︎」

「彼女は何も知らないし悪くありません」

「由希さんも昨日夜中に帰って来てたみたいだし。何してるんだか」

「、、、、」

「まぁいい。こういう状態も長くは続かないだろう。次に私がここに来る時はシュン…わかってるよな?」

「はい…」

「本当は今すぐ柳本グループに怒鳴りこみに行きたい位だが…任せたからな」


そう言って会長は出て行った。


時計を見たシュンは急いで元の取引先だった会社へ行った。
シュンは信用を取り戻す為に奪われた取引先へ毎日頭を下げに行っていたのだ。
この日も7社とも話を聞いてもらえなかったが、AP社の社長だけはシュンの行動に心を打たれて柳本グループに出向いていた。


「社長…すみません。今あいにく柳本は不在でして…」

「君は確か…地曽田グループの専務じゃないか。どうしてここに?」

「お久しぶりです。実は今こちらで働かせてもらっています」

「そ…そうなのか」

「お急ぎでしたら柳本に連絡しましょうか」

「いやいい。伝えといてくれ。取引きは止めると」

「えっ、どうしてですか⁈」
 
「地曽田グループと再度取引きしようと思ってる。あっち行ったりこっち行ったりしたくないんだが、地曽田社長には負けたよ」

「地曽田社長に…ですか?」

「こっちが冷たい態度取っても嫌な顔せず毎日頭下げに来るんだよ」

「毎日…ですか」

「元々、地曽田グループと取引きしてた時も社長自らよく顔出しに来てたけど、柳本社長は初めの取引きの時だけで後は放置だし…正直柳本社長の人間性がよくわからない」

「そ…そうですね」

「地曽田社長の変な噂は聞いたけど、結局は人間性が1番だと思ったから」

「はい」

「じゃ、そういう事だから」


AP社の社長は帰って行った。



専務は内心、胸を撫で下ろしていた。
ただ、1番有力なAP社が取引きを止めて地曽田グループと再度取引きする事を知ったら裕二はまた何かするかも知れないと思い、この件は裕二に伝えなかった。







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