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第2章
51話 2人だけの場所
しおりを挟む家を出たシュンはこの日会社で夜を明かした。
翌朝、携帯ショップに立ち寄って別荘へ向かった。
2時間ほど高速を走り別荘に着いた。
先生から預かった鍵を使って中に入るとスミが掃除機をかけていた。
シュンに気づいたスミは掃除機を止めた。
「シュン!」
「何してるの?」
「何って…掃除だよ」
「それはわかってるけど…安静にしてないと!」
「あ…ごめん」
「後で俺がやるから座って」
「…うん」
2人はソファーに座って話を続けた。
「ねぇ…そのスーツケースは?」
「えっ…」
「今日泊まるの?」
「うっ、うん…しばらく」
「しばらく?え?どうして⁈」
「家出て来たから」
「え…」
「スミの為だけじゃないからね」
「でも…大丈夫なの?」
「家のこと整理するのに時間かかるって話したの覚えてる?」
「うん」
「ずっと家に居ても変わらないから出て来た。本当に大丈夫だから」
「でもここから仕事行くの遠いし大変じゃ?」
「いつもより少し早く出ればいいし、そのうち慣れるよ」
「、、、、」
「それにしても先生はこんないい所に別荘持ってたとはなー。部屋もお洒落だし。俺どの部屋使おっかなー」
元気に振る舞うシュンを見て、スミはシュンの家や会社の事が心配だった。
「スミ、何も食べてないんじゃない?」
「食べたよ。先生が今日の朝食にってパンを置いて行ってくれたから」
「そっか。昨日は?」
「昨日は作って食べたよ。ここに来る途中に先生がスーパーに寄って食材買ってくれたから」
シュンが冷蔵庫を開けると食材がたくさん入っていた。
「うわ…本当だ。しばらく買い物しなくて良さそうだね。先生にお礼しないとな」
「そうだね」
その時シュンの携帯が鳴り、シュンは携帯を見てすぐポケットに入れた。
裕二からだった。
「出なくていいの?」
「う…うん。ちょっとかけ直して来るね」
シュンは2階の部屋に荷物を持って上がり、折り返し裕二に電話をかけた。
「おい!お前ちゃんとスミに携帯渡したのか⁈」
「まだですが…」
「早く渡せよ‼︎」
「居場所を知る為に早く渡せって?」
「…え」
「GPS…削除しましたから」
「お…お前、何でそれを…」
「じゃ、切ります」
「ちょっ…ちょっと待て‼︎お前、家出たらしいな‼︎スミと一緒にホテル暮らしかよ‼︎」
「ど…どうして家出たこと知ってる⁈」
「え…あ…それは…」
「会長か?」
裕二は何も答えず電話を切った。
由希さんから聞いたとは言えない…
俺とした事が…
しかしあいつ!GPS消しやがって!!
何でバレたんだよ‼︎
クッソー!!あいつらどこに居るんだ!!
一方シュンは裕二がなぜ家を出た事を知っているのか不審に思っていた。
父さんはあいつと連絡取り合っているのか…?
「シュンも座って。朝から運転して疲れたでしょ」
「…うん」
スミはシュンが持っている携帯を見た。
「それ。私の携帯…」
「あ、そう‼︎渡しとくよ」
「どうしてシュンが持ってるの⁈主人と会ったの⁈」
「…うん」
「えっ⁈大丈夫だった⁈何もされなかった⁈」
「…何もされてないけど俺の方が…」
「え?」
「殴ってしまい…ました」
「シュンが⁈え⁈シュンが主人を殴ったの⁈」
「…はい」
「シュンが殴るなんて…よっぽどシュンを怒らせたのね」
裕二がスミを物扱いしていたなんてとても言えなかった。
「主人は何て言ってたの?」
「しばらくは放っておくみたいだけど…どっちにしろ会ってちゃんと話さないとね。スミ1人だと心配だからその時は俺も一緒に付き添うよ」
「…うん。ありがとう」
「それとこれも渡しとく」
シュンはスミにもう1台携帯を渡した。
「え?」
「今日こっちに来る前に契約して来た。一応この携帯も持ってて」
「…わかった。ありがとう」
また携帯を取り上げられたり何かあった時の為に持っていて欲しかったのだ。
「ここに居る間は何も考えず楽しく過ごそう」
「うん」
「寝る時はちゃんと別々の部屋で寝よう」
「…そうだね」
「さてと。今夜の夕食は俺が作ろうかな~」
「えーっ、シュン料理出来るのぉ?」
「た・ぶ・ん」
「何よそれぇ~」
2人は久しぶりに笑い合った。
この生活がいつまで続くかわからないが、2人にとって一緒に過ごせる時間が夢のようだった。
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