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第1章
46話 もう抑えない
しおりを挟む病院に着くとシュンはスミを抱えて中に入った。
シュンが唯一信頼出来る先生がいる病院だ。
連絡を受けた先生が入口で待っていた。
「先生っ」
先生はシュンが抱えているスミを見て驚く。
「ど、どうしたんだ⁈」
「かなり衰弱してて」
「そのようだな。それにこのアザ…ひどいな。とりあえずこっちへ運ぼう」
先生はスミを診察室に連れて行き、シュンは待合室で待っていた。
しばらくして先生がシュンの元へ来た。
「先生、どうですか?」
「後1日遅かったら危なかったぞ。水も飲んでないし。とりあえず点滴しているから明日には少し良くなるはずだ」
「すみません、ありがとうございます」
「体中のアザは殴られた跡みたいだな」
「、、、、」
「シュンとはどういう関係なんだ?」
「それは…」
「内密にして欲しい位だから色々と事情があるんだろうけど…大丈夫か?」
「…はい」
「とりあえず、念の為3日間入院だ」
「ありがとうございます」
シュンはスミの病室に案内され、眠っているスミの手を握った。
スミ…もうあいつが居る家なんかに帰さないからね…
もう遠慮はしない‼︎
俺がスミを守るから…
シュンは決意を固め朝までスミの傍に居た。
ようやくスミが目を覚ました。
「スミ!」
「シュン…ここは?」
「病院だよ」
「あ…」
スミはまだ声に覇気がなかった。
「スミ、とりあえず明後日まで入院するから。俺は今から会社に行くね。終わったら戻って来るからその時ゆっくり話そう」
「…うん」
時間ギリギリまで病室に居たシュンは急いで会社に向かった。
携帯には由希から何十回も着信が入っていたのでシュンは由希に電話をかけた。
「もしもし」
「シュン⁈何で帰って来なかったの⁈どこに行ってたの⁈」
「ごめん。明後日帰るからその時に話す」
「明後日⁈どうして⁈今日も帰って来ないの⁈」
「とにかく明後日、由希に話があるから」
「えっ⁈話って⁈」
「ごめん。急いでるから」
電話を切られた由希は正常では居られずに裕二に電話をかけた。
「由希さん、どうしました?」
「あなたの奥さん、家に居るのよね⁈」
「はい…外に出られないようにしてますよ」
「本当ね⁈」
「100%出られないですよ。どうしてですか?」
「じゃいいわ」
由希は電話を切った。
何だよ…
外から鍵をかけているので出られるはずがないと思っている裕二は怪しむ事なくそのままホテルから会社へ行った。
お昼になりスミの病室に先生が昼食を運んで来た。
「どうですか?少しはいい?」
「はっ、はい…」
「昼食とりましょうか」
「…食欲がありません」
「ダメ!少しは食べないと良くならないよ‼︎」
「、、、、」
「食べて下さい」
「…はい」
「聞いていいかな…」
「え?」
「私はシュンが小さい頃から知ってるし、あいつの味方だから安心しなさい。いったい誰に殴られた?」
「…それは…」
「指輪してるけど結婚してるんだよね?もしかして…」
「はい…主人です」
「やっぱり…それにしても酷い‼︎いつからDVを⁈」
「今回が初めてです」
「そうか…でも何でここまで‼︎やり過ぎだ‼︎」
「私が主人を怒らせてしまったので…」
「だけどご主人異常ですよ‼︎こんなになるまで手を上げるなんて…今後も続くんじゃ…」
「、、、、」
「シュンとはどんな関係?」
「それは…」
「好き合ってるんじゃ?」
「えっ」
「見ててわかりますよ。シュンのあんな姿初めて見たし」
「あ…」
「ただ、あいつも結婚してるし会社も背負ってるからそう簡単じゃない…会長もいるし」
「…わかってます」
「いつでも私はシュンの味方だからね」
「先生…」
「じゃ、何かあったらいつでも呼んで下さい」
そう言って先生は部屋を出て行った。
先生とシュンは信頼し合ってるんだろうな…
裕二は私が居ないからどうしてるだろう…
シュンの家にあの写真見せに行ったのかな…
もし行ってたらシュンは…
スミは不安で仕方がなかった。
この日シュンは会社でも特に変わった事はなかった。
夕方になり急いでスミが居る病院に向かった。
ただ…会長の指示で部下がシュンを尾行していたのだ。
病院に着くとシュンはスミの病室に入った。
尾行していた部下は車の中で待機していた。
「スミ!」
「シュン」
「少しはいい?」
「うん」
昨日より声に張りがあるスミを見てシュンは安心した。
「シュン、私が閉じ込められてるの何でわかったの?」
「え…」
「もしかして裕二が家に来たの?」
「…うん」
「えっ、じゃああの写真…奥さんに見せたの⁈」
「会長にね」
「そんな…シュン、大丈夫⁈」
「うん。父の部屋でご主人と父が話してるの聞いて…またスミが何かされたんじゃないかって思ってスミの家に行った。だからその後の2人の会話は知らないし俺が聞いていた事も2人は知らない」
「私…会長に誤解だって言うから!じゃないとシュンが…」
「言う必要ないよ。誤解じゃないし…大体スミと友達でいる事も結局無理だったんだ」
「え?」
「どうしようもないくらい好きなんだ」
「シュン…」
「これからは俺がスミを守るから。好きな気持ちは抑えられない」
「でも…シュンには奥さんが…」
「別れるよ」
「え?」
「妻とは会社も関係してくるから時間かかるかも知れないけど信じてついて来てくれる?」
「…シュン」
「スミを守りたいんだ」
「…ありがとう」
その頃、車で待機している部下に会長から電話が入った。
「はい、会長」
「今どこだ?家にはまだ帰ってないようだが、あいつ何してる?」
「病院です。社長が小田病院に入って行きましたので車で待機しています」
「小田病院に?何であいつ…今すぐ中に入ってシュンが何してるのか確かめて来い!」
「わかりました、会長!」
部下が病院に入りウロウロして探し回っていると、不審に思った先生が声をかけた。
「どうされました?」
「あ…ちょっと人を探してて」
「…誰を探してるんですか?名前は?」
「あ…えっと…地曽田シュンという人ですが…」
…やっぱり
「シュンなら私が用事があって呼び出したんです。知り合いなもんで」
「そ、そうでしたかっ」
「今シュンは私の部屋に居るから呼んで来ましょうか?」
「い、いえ…大丈夫ですっ」
部下は逃げるようにその場を去って行った。
その後、先生はスミの病室に向かった。
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