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第1章
45話 口封じ
しおりを挟むその頃、会長と裕二の間には沈黙が続いていた。
「この事が世間に知られるとこっちの方が不利になるのはわかるよな?」
「…はい」
「…何が望みだ?」
「取引先です」
「え?取引先?」
「そちらの取引先を譲って下さい」
「なっ、何言ってるんだ‼︎」
「元々うちの取引先だった会社もそちらに取られたんです。だから…」
「じゃあその取引先だったとこを返せばいいか?」
「いえ、あとAP社とQIグループを譲って下さい」
「おいおい冗談だろ。その2社はうちにとって大事な取引先なんだよ!」
「…そうですか。仕方ないですね。マスコミに流されて会社の信用失くされるよりも、うちにその2社を譲って少し株が下がる位で済んだ方がまだいいと思うんですが」
「お、お前‼︎」
「地曽田グループの社長が同業社の社長の妻と不倫してるなんてマスコミに流されたら世間は大騒ぎするでしょうね。株価も暴落して会社は落ちて行くだけだと思いますけど…」
「わかった…わかったよ‼︎取引先を譲るよ。それといくら欲しいんだ?」
「さすが会長、わかってらっしゃいますね」
「だからいくら欲しいんだ⁈」
「それは…会長にお任せします」
すると会長は金庫を開け100万円の束を20束、裕二の前に置いた。
うわっ、こんなに⁈
裕二は心の中で笑いが止まらなかった。
「絶対マスコミにはバラすなよ!それと奥さんを監禁するなりして絶対シュンに会わせるなよ!これが君との取り引きだ!」
「わかってます。会長も息子さんをちゃんと監視して下さいね」
「ああ。息子の妻にも内緒だからな‼︎」
「は、はい…」
「それからさっきの写真を今ここで削除してくれ」
「え…」
「別に君を疑ってる訳じゃないんだが証拠に残る物は消してくれ」
「…わかりました」
裕二は会長の目の前で写真を全部消した。
「ところで息子さんには話されるんですか?」
「…いや、話さない」
「そうですね。会長にバレたってなると息子さん離婚するって言いそうですもんね」
「離婚なんて絶対させない‼︎」
「それと…」
「何だ⁈」
「AP社とQIグループ…宜しくお願いしますね」
「ああ。明日にでも上手いこと切ってそっちと取引きしてもらうようにする」
「わかりました。では私はこれで失礼します」
裕二はようやく会長宅を出た。
会長はあいつを社長から降ろすつもりはないんだな…
まぁでも、あの大手のAP社とQIグループがうちの取引先になれば地曽田グループを越せる可能性が出てきたな…
見てろよ!地曽田!!
お前の会社なんか追い抜いてやる!!
裕二はまさかシュンがスミを連れて行ったとも知らずに、大金を握りしめ散らかった家には帰らず高級ホテルに泊まる事にしてそのままホテルへ行った。
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