プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第1章

44話 脱出

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翌日18時40分、裕二は地曽田家の前に車を停めチャイムを鳴らした。
出て来た由希が裕二を連れ、隣の玄関のチャイムを鳴らすと義母が出て来た。


「あら由希さん玄関から…どうしたの?」


義母は由希の隣にいる裕二をチラチラ見ている。


「それが…この方が会長に会いたいそうです。間違って家に来られたのでこちらにお連れしました」

「主人に?」

「はい。急にすみません。どうしてもお話ししたい事がありまして」

「お名前は?」

「柳本グループの柳本裕二と言います」

「今、食事中だから少し待ってて」

「わかりました」


義母は一旦ドアを閉め部屋の中に入って行った。


「じゃ私、シュンが帰って来る前に帰るから」

「わかりました」

「じゃあ。上手くやってね」


由希は自分の家に入って行った。


しばらくして義母が玄関を開け裕二を中に入れた。


その直後、帰宅したシュンは家の前に停めてある車が邪魔になっていた。
シュンは車を降りて停めてある車の中を覗き込む。


誰だ…こんなとこに停めて…
え…


車の中の裕二の名刺に気付いたシュンは急いで家の中に入って行った。



裕二は会長の部屋に案内された。
中へ入ると会長はソファーに座っていた。


うわっ…貫禄あるな~


「失礼します」

「どうぞ座りなさい」

「は、はい…」

「君は柳本グループの取締役と聞いたが私に何の用かね」

「突然押しかけてすみません。地曽田社長のことでお話が…」

「息子のことで?」

「はい…」

「息子がどうした?」


裕二はバックから写真を取り出した。



シュンはリビングに入ると周りを見渡す。


「お、おかえりなさい…どうしたの?」

「家の前に車が停めてあるけど誰も来てない?」

「う、うん…」


じゃあ…父さんのとこに⁈


「ちょっと隣に行って来る」

「えっ、どっ、どうして⁈」

「車が邪魔だから」

「い、いいじゃない。後で停め直したら」

「え…」


必死で止める由希にも怪しく思ったシュンは自分の部屋に行くフリをして、隣と繋がっている2階の通路を通り会長の部屋の前に行った。


すると会長の大きな声が聞こえた。


えっ…

シュンはドアを少し開けて見てみると裕二と会長が何か話していた。


証拠の写真を見た会長は怒鳴った。


「何だこれは‼︎シュンじゃないか‼︎何でホテルに‼︎」

「はっ…はい」

「いつの写真だ⁈」

「最近です」

「なっ、何だと⁈」

「息子さんと一緒に写っているのは僕の妻です」

「えっ⁈きっ、君の…?」

「…はい」

「なっ、何かの間違いだろ⁈ま、まさか柳本グループの社長の奥さんとシュンが…」

「2人は不倫しています」

「そ…そんな」

「2人はホテルで何度も会っていたようだし、つい最近だって一泊で箱根に…」


会長は怒りのあまりテーブルを叩いた。


シュンは思わず中に入ろうとしたが立ち止まった。


「あいつ…なんて事を‼︎君の奥さんには?ちゃんと話したのか⁈」

「はい。家で反省させてます」

「反省?」

「はい。しばらく外にも出られないようにしていますので、息子さんと会う事も出来ないと思います」


反省させてる?
外に出られないようにしてるって…
まさかまた…

シュンはスミがまた裕二に何かされてると思い、急いでスミの家に向かった。


車を降りスミの家のチャイムを何度も鳴らすが反応がない。
部屋の中は真っ暗で完全におかしいと思ったシュンは裏にまわり窓ガラスを割って中に入った。
リビングは散らかりガラスの破片が散らばっていた。


「スミッ!!どこだ⁈」


ひとつひとつ部屋を確認するがどこにも居ない。
すると小さなドアの中から物音がした。


「えっ」


ドアの前に行くと外から鍵がかけられている。


ま、まさか…


「スミッ⁈」

「シュ…ン?」


中からスミの声が聞こえた。


シュンは近くにあったゴルフクラブで何度も叩いて鍵を壊し体当たりしてドアを開けた。


「スミ…」


シュンは中へ入ると言葉を失った。


え…ス…スミ…
な、何で…こんな…

そこには体中アザだらけのスミが横たわっていたのだ。
シュンは優しくスミを抱き上げた。


「…もう大丈夫だよ」

「…シュン」


シュンはスミを抱きかかえて外へ出ると車の後部座席に寝かせて車を走らせた。


2日間、閉じ込めらていたスミは衰弱しきっていた。
シュンはそんなスミの姿を見て裕二に対する怒りが限界に達していた。


絶対に許さない!!
柳本裕二…


シュンはどこかに電話した。


「これから1名診て欲しいんですが…」

「おう、シュンか?患者の状況は?」

「呼吸はしてますがグッタリしてて。それと…」

「どうかしたか?」

「この事は内密にして欲しいんです」
 

シュンは病院に向かった。









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