44 / 102
第1章
44話 脱出
しおりを挟む翌日18時40分、裕二は地曽田家の前に車を停めチャイムを鳴らした。
出て来た由希が裕二を連れ、隣の玄関のチャイムを鳴らすと義母が出て来た。
「あら由希さん玄関から…どうしたの?」
義母は由希の隣にいる裕二をチラチラ見ている。
「それが…この方が会長に会いたいそうです。間違って家に来られたのでこちらにお連れしました」
「主人に?」
「はい。急にすみません。どうしてもお話ししたい事がありまして」
「お名前は?」
「柳本グループの柳本裕二と言います」
「今、食事中だから少し待ってて」
「わかりました」
義母は一旦ドアを閉め部屋の中に入って行った。
「じゃ私、シュンが帰って来る前に帰るから」
「わかりました」
「じゃあ。上手くやってね」
由希は自分の家に入って行った。
しばらくして義母が玄関を開け裕二を中に入れた。
その直後、帰宅したシュンは家の前に停めてある車が邪魔になっていた。
シュンは車を降りて停めてある車の中を覗き込む。
誰だ…こんなとこに停めて…
え…
車の中の裕二の名刺に気付いたシュンは急いで家の中に入って行った。
裕二は会長の部屋に案内された。
中へ入ると会長はソファーに座っていた。
うわっ…貫禄あるな~
「失礼します」
「どうぞ座りなさい」
「は、はい…」
「君は柳本グループの取締役と聞いたが私に何の用かね」
「突然押しかけてすみません。地曽田社長のことでお話が…」
「息子のことで?」
「はい…」
「息子がどうした?」
裕二はバックから写真を取り出した。
シュンはリビングに入ると周りを見渡す。
「お、おかえりなさい…どうしたの?」
「家の前に車が停めてあるけど誰も来てない?」
「う、うん…」
じゃあ…父さんのとこに⁈
「ちょっと隣に行って来る」
「えっ、どっ、どうして⁈」
「車が邪魔だから」
「い、いいじゃない。後で停め直したら」
「え…」
必死で止める由希にも怪しく思ったシュンは自分の部屋に行くフリをして、隣と繋がっている2階の通路を通り会長の部屋の前に行った。
すると会長の大きな声が聞こえた。
えっ…
シュンはドアを少し開けて見てみると裕二と会長が何か話していた。
証拠の写真を見た会長は怒鳴った。
「何だこれは‼︎シュンじゃないか‼︎何でホテルに‼︎」
「はっ…はい」
「いつの写真だ⁈」
「最近です」
「なっ、何だと⁈」
「息子さんと一緒に写っているのは僕の妻です」
「えっ⁈きっ、君の…?」
「…はい」
「なっ、何かの間違いだろ⁈ま、まさか柳本グループの社長の奥さんとシュンが…」
「2人は不倫しています」
「そ…そんな」
「2人はホテルで何度も会っていたようだし、つい最近だって一泊で箱根に…」
会長は怒りのあまりテーブルを叩いた。
シュンは思わず中に入ろうとしたが立ち止まった。
「あいつ…なんて事を‼︎君の奥さんには?ちゃんと話したのか⁈」
「はい。家で反省させてます」
「反省?」
「はい。しばらく外にも出られないようにしていますので、息子さんと会う事も出来ないと思います」
反省させてる?
外に出られないようにしてるって…
まさかまた…
シュンはスミがまた裕二に何かされてると思い、急いでスミの家に向かった。
車を降りスミの家のチャイムを何度も鳴らすが反応がない。
部屋の中は真っ暗で完全におかしいと思ったシュンは裏にまわり窓ガラスを割って中に入った。
リビングは散らかりガラスの破片が散らばっていた。
「スミッ!!どこだ⁈」
ひとつひとつ部屋を確認するがどこにも居ない。
すると小さなドアの中から物音がした。
「えっ」
ドアの前に行くと外から鍵がかけられている。
ま、まさか…
「スミッ⁈」
「シュ…ン?」
中からスミの声が聞こえた。
シュンは近くにあったゴルフクラブで何度も叩いて鍵を壊し体当たりしてドアを開けた。
「スミ…」
シュンは中へ入ると言葉を失った。
え…ス…スミ…
な、何で…こんな…
そこには体中アザだらけのスミが横たわっていたのだ。
シュンは優しくスミを抱き上げた。
「…もう大丈夫だよ」
「…シュン」
シュンはスミを抱きかかえて外へ出ると車の後部座席に寝かせて車を走らせた。
2日間、閉じ込めらていたスミは衰弱しきっていた。
シュンはそんなスミの姿を見て裕二に対する怒りが限界に達していた。
絶対に許さない!!
柳本裕二…
シュンはどこかに電話した。
「これから1名診て欲しいんですが…」
「おう、シュンか?患者の状況は?」
「呼吸はしてますがグッタリしてて。それと…」
「どうかしたか?」
「この事は内密にして欲しいんです」
シュンは病院に向かった。
7
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる