プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

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第1章

41話 涙の別れ

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シュンとスミはバーベキューをして楽しんでいた。
シュンは焼いたお肉をスミのお皿にどんどん乗せている。


「シュンも食べてよ」

「食べてるよ」

「こうして外で食べると美味しいね」

「そうだね」

「目の前は海だし最高!」


喜んでいるスミを見てシュンも嬉しい気持ちになっていた。


「ご飯もあるからね」

「うん。ケチャップもあるけど何に使うの?」

「わかんない。とりあえず買って来た」

「卵はある?」

「あるよ」

「あるの⁈」

「何か使う?」

「オムライス作ってあげようか」

「マジで⁈うん!作って‼︎」


スミはシュンの為にオムライスを作った。


「はい、どうぞ」

「美味しそ~!いただきます」


シュンはひと口食べると一瞬止まり次々食べ出した。


「どう?」

「すごく美味しい」

「本当⁈シュンの奥さんには負けるかも知れないけど」

「うちの家事は家政婦がしてるから…」

「そ、そうなんだ…」


シュンはあっという間に全部食べた。


「ごちそうさま。最後にスミの手料理食べられて嬉しいよ」


私も…
最後にシュンに手料理食べてもらえて嬉しいよ…


2人は焚き火を囲みワインを飲み始めた。

時間は刻々と過ぎていく。


「スミ…今まで自分のこと話してなかったけど、妻とは親が決めた政略結婚なんだ…」

「えっ、そうなの?」

「実の母親は亡くなって父は愛人と再婚した。未だにその人のこと母さんと呼べずに20年経った…父は隣に住んでいるけどその人が居るからほとんど会わない…」

「え…」

「妻のことも愛さなきゃって思って努力したけどどうしてもダメなんだ…家に居ると息苦しくて帰っても外に散歩ばかり行ってた。そんな時スミと出会ったんだ…」

「シュン…知らなかった」

「言わなかったからね」

「…ごめんね」

「何でスミが謝るの?」

「シュンも色々あるのに…今まで私ばかり話を聞いてもらって…」

「そんなのはいいんだよ。ただ、スミから見たら俺って何も問題がない人だと思われてそうだったから」

「…うん。そう思ってた」

「でしょ。だから話してみた」

「シュン…」


2人は自然に距離が近くなり、しばらく見つめ合って気付くとキスをしていた。


「そろそろ中入ろうか」

「…うん」


並んだベッドにそれぞれ入った。


明日が来ればもう会わない…
これが最後なんだ…

そう思うと2人とも眠れなかった。


「シュン…起きてる?」

「うん…」

「そっち…行っていい?」

「え…」

「1人じゃ寒くて…」

「…いいよ」


スミはシュンのベッドに入った。
お互い背を向けて話を続けた。


「シュン…」

「ん?」

「今日はありがとう」

「…こちらこそ」

「最後にいい思い出が作れた…」

「…うん」

「シュンと出会えてよかった…」

「、、、、」

「せっかく友達としてこれからも会っていけると思ってたのに…」


シュンは黙って聞いていた。


「本当にごめんね。私のせいで…」


突然シュンが起き上がった。


「どうしたの?」

「スミ…朝まで抱きしめて寝ていい?」


シュン…


「ダメならいいけど…」


するとスミはシュンの方を向きシュンの体に両手を回した。


スミ…


「温かい…」

「…うん」

「すごく落ち着く…」


シュンはスミを抱きしめ、一線を越えることなく2人はそのまま朝まで眠った。


早朝、先に目が覚めたシュンはしばらくスミの寝顔を見ていた。


スミ…
こんなにスミのこと好きになるとは思わなかったよ…
もっと早く出逢いたかった…

シュンはそう思いながらスミの頬にキスをした。


1時間後に目覚めたスミは隣にいるはずのシュンを探す。
シュンは外に出て海を眺めていた。


「シュン…おはよう」

「おはよ」

「何してたの?」

「ん?別に…コーヒー飲む?」

「…うん。私着替えてくるね」

「うん」


別れが近づいている2人は笑顔がなくなっていた。

コーヒーを飲みながら海を眺めている。
波の音だけが聞こえ2人の会話も減っていった。


「スミ…」

「ん?」

「ありがとう」

「、、、、」

「スミは心の支えだった」

「…私もだよ」


シュンは必死で涙を堪えた。


「…これからどうする?」

「…タクシー呼んだ」

「え…」

「もうすぐ来るよ…」

「…え」

「このままここで別れよう…」


シュンは俯いたままスミを見ようとしない。
見たら辛くなるからだ。


「…わかった」


スミは泣きながらその場を離れ荷物を持って出て行った。


シュンはその場から動く事が出来ず、抑えていた涙が溢れてきた。


さようなら…スミ…



タクシーに乗ったスミも家に着くまで涙が止まらなかった。


シュン…さよなら…


これでよかったんだ…







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