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第1章
37話 屈辱
しおりを挟む翌日、スミにずっと電話していたシュンは繋がらないので心配になり、仕事が終わるとホテルに行った。
部屋のチャイムを鳴らすが反応がない。
中で倒れていないか心配になりフロントに向かった。
「すみません。3535室ですが」
「あっ、お知り合いの方ですか⁈」
「は…はい」
「柳本様に連絡が取れなくて困っていました。3日前からいらっしゃらなくて…」
「え?3日前から⁈」
「はい。代金もまだ頂いてなくて…」
「じゃあ、支払います」
シュンはホテル代を支払い急いでスミの家に向かった。
何かあったと思ったシュンは、スミの家に着くと何も考えずチャイムを押した。
洗い物をしていたスミがインターホンのモニターを見ると、シュンの姿が写っていて驚いた。
え⁈どうして⁈
この時ちょうど裕二はシャワーを浴びていた。
スミはインターホン越しに小さな声で話した。
「シュン…」
「スミなの⁈」
「どうして来たの⁈」
「心配で。大丈夫なの?何かあったんでしょ?」
「…大丈夫だから。主人に気付かれる前に早く帰って」
「本当に大丈夫なんだね?」
「うん」
「わかった。急にごめんね。帰るよ」
そう言ってシュンは帰って行った。
スミはカーテンを開け、車で帰って行くシュンを見ていた。
家まで来るなんて…
シュン…ごめん…
裕二がシャワーを終えて出て来た。
「さっきチャイム鳴らなかったか?」
「えっ、鳴ってないけど」
「ふ~ん、気のせいかな~」
「あのっ、裕二…」
「何だ?」
「明日プリセスホテルに行きたいんだけど」
「何で?」
「ホテル代払わずにそのまま出て来たから」
「あ…そうか。明日俺が帰って来たら連れて行ってやる」
「…うん」
「お前も早くシャワー浴びて来い。ベッドで待ってるからな」
「え…」
「何だよ?何か言いたそうだな」
「…いいえ」
スミは黙って浴室に行った。
…もうシュンに会えない
翌日、裕二が仕事から帰って来て約束通りプリセスホテルに行った。
スミにとっては久しぶりの外出だった。
2人はホテルのフロントに向かった。
「あの…3535室に宿泊していた柳本ですが」
「あ!はい」
「すみませんでした。宿泊代払いもせず連絡もしないで。多めに払いますので精算して下さい」
「えっ?昨日お知り合いの方から全額頂きましたよ」
「え?知り合い?」
「…男ですか?」
「はい…」
シュンだ…
「地曽田だな‼︎あいつ‼︎」
「あの…おいくらでした?」
「えっと…全部で185000円です」
「185000円⁈」
「は…はい」
「スミ、もう行くぞ」
「すっ、すみません。お世話になりました」
2人は車に戻ったが裕二は苛立っていた。
「お前、185000円俺に渡せ。明日あいつに返して来る」
「えっ…」
「返しに行くだけだ」
「でも…」
「何だよ。お前の代わりに俺が返しに行くんだよ‼︎」
「…暴れたりしないでね」
「わかってるよ!」
翌日、出勤する裕二にお金を預けた。
スミは裕二がまた暴れるんじゃないかと心配だった。
裕二は地曽田グループに行った。
「社長に会いたいんだけど」
「お約束はされていらっしゃいますか?」
「いや…」
受付の女性は社長室に内線を繋ぎシュンに裕二のことを伝えた。
「どうぞ」
裕二はノックもせずに社長室に入った。
「柳本社長…ノックぐらいされたらどうですか?」
裕二は黙ってシュンを睨みつける。
「今日はどうされましたか?」
裕二はお金が入った封筒をシュンに渡した。
「これは?」
「ホテル代ですよ。わざわざご親切に支払ってくれたみたいで」
「あ…」
「こういう事してくれなくて結構ですので」
「自分はただ…」
すると裕二はホテルで撮ったスミとの写真をシュンに見せた。
「え…」
「あんなきれいな奥さんがいるのに、実はスミとコソコソ会ってたんですね~まさか2人が不倫してたなんて。W不倫ですよ‼︎ダ・ブ・ル・不・倫‼︎」
「柳本社長が想像しているような事はありませんので」
「信じる訳ないだろ‼︎もう二度とスミと会うなよ!会ったらすぐわかるんだからな!」
「スミに…いや…スミさんに手荒な事してませんよね⁈」
「する訳ないだろ。ただ、また会ったりしたら俺…スミに何するかわからないからな!」
「、、、、」
「おい、聞いてるのか⁈」
「…わかりました。絶対にスミさんを苦しめるような事はしないで下さい‼︎」
「お前がスミを苦しめてんだろ!証拠の写真もあるし、わかってるだろうな」
「そうですね。スミさんは何も悪くありませんので。私の一方的な行動が度を過ぎました。ただあなたと違って私とスミさんは一線を越えるような事はしてませんので」
「は?俺と違ってって何だよ‼︎」
「パーティーの日、トイレで柳本社長が電話で話しているの聞こえてました」
「え?」
「秘書と話してたんでしょ?その後歩けないスミさんを置いて行かれましたよね?」
「お…お前盗み聞きしてたのかよ‼︎」
「隣に入ってたので聞こえたんですよ。それに何の為なのかわかりませんが、秘書に偽の名刺まで作らせて私の所に来させましたよね?」
え…バレてたのか⁈
「あっ、あれは…あいつが勝手に…」
「偽の名刺もあるし訴えてもいいんですよ」
「お…お前‼︎」
シュンは偽の名刺を取り出して裕二に見せた。
「約束して下さい。スミさんに手を出さないと」
「わ…わかったよ‼︎」
するとシュンは裕二の目の前で名刺をビリビリに破った。
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