プラグマ 〜永続的な愛〜【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
37 / 102
第1章

37話 屈辱

しおりを挟む

翌日、スミにずっと電話していたシュンは繋がらないので心配になり、仕事が終わるとホテルに行った。

部屋のチャイムを鳴らすが反応がない。
中で倒れていないか心配になりフロントに向かった。


「すみません。3535室ですが」

「あっ、お知り合いの方ですか⁈」

「は…はい」

「柳本様に連絡が取れなくて困っていました。3日前からいらっしゃらなくて…」

「え?3日前から⁈」

「はい。代金もまだ頂いてなくて…」

「じゃあ、支払います」


シュンはホテル代を支払い急いでスミの家に向かった。

何かあったと思ったシュンは、スミの家に着くと何も考えずチャイムを押した。

洗い物をしていたスミがインターホンのモニターを見ると、シュンの姿が写っていて驚いた。


え⁈どうして⁈


この時ちょうど裕二はシャワーを浴びていた。
スミはインターホン越しに小さな声で話した。


「シュン…」

「スミなの⁈」

「どうして来たの⁈」

「心配で。大丈夫なの?何かあったんでしょ?」

「…大丈夫だから。主人に気付かれる前に早く帰って」

「本当に大丈夫なんだね?」

「うん」

「わかった。急にごめんね。帰るよ」


そう言ってシュンは帰って行った。
スミはカーテンを開け、車で帰って行くシュンを見ていた。


家まで来るなんて…
シュン…ごめん…


裕二がシャワーを終えて出て来た。


「さっきチャイム鳴らなかったか?」

「えっ、鳴ってないけど」

「ふ~ん、気のせいかな~」

「あのっ、裕二…」

「何だ?」

「明日プリセスホテルに行きたいんだけど」

「何で?」

「ホテル代払わずにそのまま出て来たから」

「あ…そうか。明日俺が帰って来たら連れて行ってやる」

「…うん」

「お前も早くシャワー浴びて来い。ベッドで待ってるからな」

「え…」

「何だよ?何か言いたそうだな」

「…いいえ」


スミは黙って浴室に行った。

…もうシュンに会えない



翌日、裕二が仕事から帰って来て約束通りプリセスホテルに行った。
スミにとっては久しぶりの外出だった。

2人はホテルのフロントに向かった。


「あの…3535室に宿泊していた柳本ですが」

「あ!はい」

「すみませんでした。宿泊代払いもせず連絡もしないで。多めに払いますので精算して下さい」

「えっ?昨日お知り合いの方から全額頂きましたよ」

「え?知り合い?」

「…男ですか?」

「はい…」


シュンだ…


「地曽田だな‼︎あいつ‼︎」

「あの…おいくらでした?」

「えっと…全部で185000円です」

「185000円⁈」

「は…はい」

「スミ、もう行くぞ」

「すっ、すみません。お世話になりました」


2人は車に戻ったが裕二は苛立っていた。


「お前、185000円俺に渡せ。明日あいつに返して来る」

「えっ…」

「返しに行くだけだ」

「でも…」

「何だよ。お前の代わりに俺が返しに行くんだよ‼︎」

「…暴れたりしないでね」

「わかってるよ!」



翌日、出勤する裕二にお金を預けた。
スミは裕二がまた暴れるんじゃないかと心配だった。


裕二は地曽田グループに行った。


「社長に会いたいんだけど」

「お約束はされていらっしゃいますか?」

「いや…」


受付の女性は社長室に内線を繋ぎシュンに裕二のことを伝えた。


「どうぞ」


裕二はノックもせずに社長室に入った。


「柳本社長…ノックぐらいされたらどうですか?」


裕二は黙ってシュンを睨みつける。


「今日はどうされましたか?」


裕二はお金が入った封筒をシュンに渡した。


「これは?」

「ホテル代ですよ。わざわざご親切に支払ってくれたみたいで」

「あ…」

「こういう事してくれなくて結構ですので」

「自分はただ…」


すると裕二はホテルで撮ったスミとの写真をシュンに見せた。


「え…」

「あんなきれいな奥さんがいるのに、実はスミとコソコソ会ってたんですね~まさか2人が不倫してたなんて。W不倫ですよ‼︎ダ・ブ・ル・不・倫‼︎」

「柳本社長が想像しているような事はありませんので」

「信じる訳ないだろ‼︎もう二度とスミと会うなよ!会ったらすぐわかるんだからな!」

「スミに…いや…スミさんに手荒な事してませんよね⁈」

「する訳ないだろ。ただ、また会ったりしたら俺…スミに何するかわからないからな!」

「、、、、」

「おい、聞いてるのか⁈」

「…わかりました。絶対にスミさんを苦しめるような事はしないで下さい‼︎」

「お前がスミを苦しめてんだろ!証拠の写真もあるし、わかってるだろうな」

「そうですね。スミさんは何も悪くありませんので。私の一方的な行動が度を過ぎました。ただあなたと違って私とスミさんは一線を越えるような事はしてませんので」

「は?俺と違ってって何だよ‼︎」

「パーティーの日、トイレで柳本社長が電話で話しているの聞こえてました」

「え?」

「秘書と話してたんでしょ?その後歩けないスミさんを置いて行かれましたよね?」

「お…お前盗み聞きしてたのかよ‼︎」

「隣に入ってたので聞こえたんですよ。それに何の為なのかわかりませんが、秘書に偽の名刺まで作らせて私の所に来させましたよね?」


え…バレてたのか⁈


「あっ、あれは…あいつが勝手に…」

「偽の名刺もあるし訴えてもいいんですよ」

「お…お前‼︎」


シュンは偽の名刺を取り出して裕二に見せた。


「約束して下さい。スミさんに手を出さないと」

「わ…わかったよ‼︎」


するとシュンは裕二の目の前で名刺をビリビリに破った。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

あなたが居なくなった後

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。 まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。 朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。 乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。 会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...