33 / 102
第1章
33話 嫉妬
しおりを挟むスミは部屋で夕食を済ませボーっとテレビを見ていた。
シュンのトレーナー買ったけどいつ渡そう…
今21時過ぎか…もう家だろうな…
会いたいな…
友達になろうって言ってしまったけど会う度に好きになってしまう…
ダメ…セーブしなきゃ…
それにそう思ってる場合じゃない…
裕二とどうすれば離婚出来るか考えなきゃ…
スミは携帯で色々と検索するが、離婚について参考になるものがなかった。
するとシュンから着信が入った。
シュン…
「もしもし」
「もしもし、何してた?」
「今?テレビ見てた」
「そっか」
「シュンは?家だよね?」
「今飲んでる。あのコンビニの前で」
「えっ、あのコンビニの前で?」
「うん。久しぶりに来たくなって」
「いいなー」
「ここで1人で飲んでると落ち着くね」
「でしょ」
「声が聞きたくてスミに電話したけど、あまり会ったり電話したりしない方がいいのかな…」
「え…」
「って思ったけど友達でもしょっちゅう会ったりするかっ」
「…うん」
「明日雨かな…空が曇ってる…」
「シュン、渡したい物あるから明日帰りにちょっと寄れないかなぁ?」
「渡したい物?いいけど21時頃になるかも」
「うん、いいよ」
「じゃ着いたら連絡するね」
電話を切った後、2人は会う約束が出来たことに安心感を覚えた。
翌日20時半になり、スミはシュンに渡すトレーナーを入れた紙袋を持って部屋から出ようとするとチャイムが鳴った。
え…シュン?
ドアを開けるとシュンではなく裕二だった。
「え!ゆ、裕二‼︎どうして⁈」
「フロントで部屋番号聞いた。夫だと言ったら教えてくれたよ」
「っていうか何でこのホテルだってわかったの⁈」
「そ、それは…そう!今日帰りにこのホテルの前を通ってたらスミがここに入って行くのが見えたんだよ」
「え…?」
「それより中に入らせろよ」
「ダメっ入らないで」
「いいだろ~」
「下まで送るから帰って」
「何だよ。せっかく来たのに」
スミは裕二をエレベーターに乗せ1階に行った。
「早く家に帰って来ないと毎日ここに来るからな」
「もうやめてよ」
その時、裕二にはホテルの入り口からシュンが入って来るのが見えた。
地曽田じゃないか‼︎
またここで接待かよ…
裕二はスミの手を握って歩いた。
「ちょっと何するの⁈話してよ!」
「いいだろ。夫婦なんだから」
するとシュンがスミと裕二に気づいて立ち止まった。
「あれ?地曽田社長じゃないか?」
「えっ」
裕二はスミの手を握ったままシュンに向かって歩き出した。
「地曽田社長じゃないですか。これはこれは…こんな所で会うなんて。接待ですか?」
「えっ?あっ…は、はい」
スミは握られた手を離そうとするが裕二は離そうとしない。
「スミも挨拶しろよ。この前送ってもらった上に食事まで一緒にしたんだろ」
「あのっ、急いでますので」
シュンはエレベーターに向かって立ち去った。
「ちょっと裕二!手を離してよ」
「はいはい。あー、それにしても気に食わねえな。あいつもこのホテル利用してるなんて。他のとこで接待すればいいのに」
「じゃ私、部屋戻るから」
「わかったよ。じゃあな」
裕二が車に乗り込んだ事を確認するとスミはシュンに電話した。
「もしもし今どこ?」
「25階のバーにいるよ」
「すぐ行く!」
スミは急いでバーへ向かった。
窓側に座って飲んでるシュンを見つけるとスミは走って行きシュンの隣に座った。
「シュン、ごめんね」
「今日は飲まないつもりだったのに」
「え?」
シュンは珍しくウイスキーをロックで飲んでいた。
「まさかご主人が来てるなんて思わなかった」
「突然来たのよ。場所知られなかったのに」
「ご主人も心配してるんだね。何だか…自分に腹が立つ…」
「えっどうして?」
「手…」
「手?」
「手を繋いでるのを見て嫉妬してしまった…」
え?嫉妬って…いつも冷静なシュンが…
それでウイスキーロックなんか飲んでるのね。
可愛いんだけど♡
ギャップ萌えしたスミはシュンを見てニヤけた。
「えっ?な、何?」
「あ…何でもない。あれは主人が握ってきて。今考えるとシュンがいたからわざとだと思う…」
「いいんだけど…ごめん、何か俺くだらないや。何か飲む?飲まないならもう出よう」
「飲む」
スミもウイスキーを頼んだ。
「ウイスキー飲めるの?」
「ハイボールならね」
「それ…ロックだけど」
「大丈夫。飲みたい気分だから」
その頃、家に帰った裕二は欲求不満で寝つけずイライラしていた。
あーっ!アキも居ないし、クッソー!!
こうなったら…
裕二は再びスミの居るホテルに行こうと着替え始めた。
スミは2杯目を頼んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫よ」
「今日は早めに代行呼んでおかないと」
シュンが携帯を取り電話をしている間、スミは2杯目も飲み干した。
裕二に対して腹が立っていたのだ。
「今日は後15分もすれば代行来れるって」
「そうなの」
「えっ、もう2杯目飲んだの⁈」
「うん」
「もう出よう」
スミは立ち上がると足元がフラついた。
「大丈夫?部屋まで送るからしっかり捕まって」
「うん…」
エレベーターに乗り、部屋まで歩いてドアの前で止まった。
「じゃ帰るね」
「あ、ちょっと待って。渡す物あるから」
スミは部屋に入り紙袋を持ってドアの前で待っているシュンに渡した。
ホテルに着いた裕二はエレベーターを降りてスミの部屋に近づく。
そこでシュンとスミに気づき立ち止まった。
ど…どういう事だよ‼︎地曽田じゃないか‼︎
どうしてスミの部屋に居るんだ‼︎
2
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。

あなたが居なくなった後
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの専業主婦。
まだ生後1か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。
朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。
乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。
会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願う宏樹。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。


アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる